全権委員会議のための決議案
UNEP 水銀条約に関する全権委員会議のための準備会合
2013年10月7〜8日、熊本、日本

情報源:United Nations Environment Programme
Preparatory meeting for the Conference of Plenipotentiaries
on the Minamata Convention on Mercury
Kumamoto, Japan, 7 and 8 October 2013
Draft resolutions for the Conference of Plenipotentiaries
http://www.unep.org/hazardoussubstances/Portals/9/Mercury/Documents/dipcon/PM_3_res_e.pdf

訳:安間武 (化学物質問題市民研究会)
掲載:2013年9月15日
更新:2013年10月10日 採択

このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/DipCon/Proposed_resolutions_for_the_DipCon.html

事務局によるノート
1. 第5回会合において、水銀に関する法的に拘束力のある文書を準備するための政府間交渉委員会は、この準備会合が全権委員会議による検討及び可能性ある採択のための決議を最終的なものにするという意図をもって、水銀に関する水俣条約に関する全権委員会議の準備会合での検討のための決議案を作成するよう事務局に求めた。

2. 委員会の要求に従い、事務局は、準備会合での検討のための決議案を作成した。事務局は、第5回会合における委員会による検討のために示されたもの((UNEP(DTIE)/Hg/INC.5/6)に基づき、その会合中に行われた討議を考慮しつつ、このノートの付属書に示されている決議案を作成した。

3. 決議案を検討し、全権委員会議による検討及び可能性ある採択のための決議を最終的なものにするために、準備会合が招集される。

4. 事務局は、国連環境計画(UNEP)管理理事会が化学物質及び廃棄物に関する決議 27/12 の中で、国連環境計画事務局長に、自主的寄与で資金調達さた特別プログラムのためのさらなる委託事項を開発し、国家レベルでの制度の強化を支援し、会合の成果を水銀に関する水俣条約に関する全権委員会議に報告するための、政府と地域経済統合組織の国家主導会合を召集するよう要求したことに留意する。政府は、水銀に関する水俣条約に関する大詰めで採択するどのような決議の中にも、そのような成果への言及を含めることを望むかもしれない。しかし事務局は、この文書が準備されたときに国家主導の会合は開催されていなかったので、準備した決議案の中にそのような言及は含めなかった。


附属書(Annex)
水銀に関する水俣条約についての全権委員会議の検討のための決議案

 委員会は、

 水銀に関する水俣条約(以降、”条約”と呼ぶ)の文言を採択し、

 水銀に関する国連環境計画管理理事会の2009年2月20日の決議 25/5 及び2013年2月22日の決議 27/12 を想起しつつ、

1. 暫定期間における取り決めに関する決議

 未決の条約の発効に向けて、人間活動に由来する水銀と水銀化合物の放出から人の健康と環境を守るべく、迅速に国際的な行動を実施するために、また条約が発効したなら、その効果的な実施を準備するために、取り決めが求められることを考慮しつつ、

I
1, 国家及び地域経済統合組織に対し、可能な限り速やかに、批准により生じる義務を満たすことを可能とするために、必要とする国内措置をとり、可及的速やかに条約を発効させるという方針をもって、条約を批准し、受容し、承認し、又は同意するよう求め、
II
2. 国家及び地域経済統合組織に対し、条約の発効前の期間(”暫定期間”)に自主的ベースで条約の規定を全て適用し、他の国家による自主的な適用を促進し、支援するよう懇願し、

III
3. 国連環境計画事務局長に、条約の迅速な発効と発効後の効果的な実施を促進するために必要かもしれない、条約理事会決議25/5 に従い確立された、水銀に関する政府間交渉委員会(以降、”委員会”)を条約署名手続きが開始した日から締約国会議第1回会合の開催日までの期間、召集するよう要請し、

4. また、事務局長に締約国会議の第1回会合を準備し運営するよう要請し、

5. 委員会は、発効次第、条約の効果的な実施を必要とする、特に、水銀又は水銀化合物の輸入のための同意登録;免除のための登録様式;免除登録に基づき提供されるべき情報と事務局により維持されるべき免除の登録;締約国が批准次第、提供するかもしれない条約を実施するために計画しているとるべき措置に関する情報を受け付け配布するための取り決めを含む項目について、決議案を開発し、締約国会議による暫定的な決議案を採択すべきことを決定し、

6. 委員会に対し、特に、水銀の在庫の特定に関するガイダンス;要求される証明の内容を含んで水銀の輸出及び輸入の手続き;放出を管理し、締約国が排出目標値と制限値を決定するのを支援するための、利用可能な最良の技術および利用可能な最良の慣行に関するガイダンス;財務メカニズムの運用のための取り決め;報告の時機と様式;条約の効果を評価するための比較可能な監視データを締約国に提供するための取り決め;及び締約国のための手続き案及び財務規則案を含む、締約国会議第1回会合により決定されるべき、これらのことがらに注力するよう要求し、

7. また委員会に対し、水銀の在庫を特定するために開発されるべきガイダンス;証明の内容を含んで水銀の輸出と輸入のための手続き;及び目標と放出制限値の決定に関するガイダンスの、締約国会議第1回会合における暫定的ベースの公式採択を求め、

8. さらに委員会に対し、もし可能であり、上述の4〜6項に概要が示される作業の完了を妨げることがなければ、迅速な条約の発効と、特に人力小規模金採掘を有する諸国が彼らの国家行動計画を開発するためのガイダンスと支援;放出源の特定と放出目録の開発;環境的に適切な水銀の暫定的な保管に関するガイドライン;発効後の効果的な実施を促進し条約により要求され又は推奨されるこれらの活動を支援するよう求め、水銀廃棄物の特定のための閾値;汚染サイトの管理に関するガイダンス;及び実施遵守委員会のための手続きの規則を含む発効後の効果的な実施に役立つであろう条約により求められ又は推奨されるこれらの活動を支援するよう求め、

IV
9. 得られた経験を通じて、特にUNEP世界水銀パートナーシップを考慮して、締約国会議が第1回会合で、そのような課題について決定るることができるよう、条約第8条で求められるガイダンスを開発し、排出に関連するその他の課題に目を向けるために委員会に報告する技術専門家グループを確立し、事務局長に対し、最も早い時期にその技術専門家グループを召集するよう求める。このグループは、次のように国連5地域にから任命される専門家からなる。アフリカ諸国から3人、アジア太平洋地域から5人、中央東ヨーロッパ諸国から2人、ラテンアメリカ・カリブ海諸国から3人、そして西ヨーロッパ及びその他の諸国から6人。グループは、産業界及び市民社会からの専門家の助言及び参加を招へいしてもよい。

V
10. 国連環境計画の事務局長に対し、暫定期間中、委員会とそ活動を支援するために、事務局のサービスを引き続き提供するよう求め、

VI
11. そのようにすべき立場にある国家、地域経済統合組織及びその他に対し、条約の下に行動を求める分野を特定するための目録と予備的評価の準備、及び、彼らにとって条約が発効したなら、条約を効果的に実施するための法的及び制度的能力の開発の準備を含んで、条約に署名した国家の条約の批准、受容又は承認の準備のために、彼らに財政的及び技術的支援を提供するよう求め、

12. 地球環境ファシリティの評議会に対し、条約への署名国が条約の早期の批准を促進するための活動を実施するのを支援するよう要請し、

13. そのようにする立場にある国家、地域経済統合組織及びその他に対し、締約国会議第1回会合が開催され、財政期間が終了するまでの期間、委員会と暫定期間中の活動、暫定事務局、及び締約国会議の運営を支援するために、国連環境計画の水銀信託基金(mercury trust fund)に貢献するよう懇願し、

14. UNEP世界水銀パートナーシップを通じてとられる行動を歓迎し、全てのパートナーにその努力を継続し、このパートナシップを支援し、参加し、貢献するよう求め、

VII
15. 委員会に対し、適切な場合には、暫定期間中に作業を行うに当たり、既存の取り組み、文書、及び、関連する地域センターを含む地域及び準地域の伝達機能を考慮し、構築するよう求める。

2. 財務的取り決めに関する決議

 委員会は、

 水銀に関する水俣条約は、世界環境ファシリティ信託基金及び、能力構築と技術的援助を支援するための特定の国際的プログラムを含む財務的メカニズムを定義することに留意しつつ、

1. 世界環境ファシリティの総会に対し、財務的メカニズムの中でその役割を満たすことを可能にするのに必要な再編されるGEFの設立のための文書(Instrument for the Establishment of the Restructured Global Environment Facility)に対するどの様な調整をも行うよう要請し、

2. 委員会は、締約国会議第1回会合での検討用に、財務的メカニズムの中における世界環境ファシリティ信託基金の役割に関する地球環境ファシリティ評議会と締約国会議との間の理解に関する覚書を作成すべきであることを決定し、

3. また委員会は、全体的戦略に関する地球環境ファシリティの評議会へのガイダンス、方針、プログラム優先事項、財源への接近と利用の適格性、及び世界環境ファシリティ信託基金からの支援に適格な分類の暗示的リストを開発し、締約国会議第1回会合による暫定的に公式採択すべきことを決定し、

4. 地球環境ファシリティ評議会に対して、締約国会議による交渉中のガイダンスを含んで、委員会により提供されるどのようなガイダンスも暫定的に適用するよう要請し、 5. 世界環境ファシリティ信託基金のドナーに、世界環境ファシリティが条約の迅速な発効と効果的な実施を促進するための活動を支援するために世界環境ファシリティ信託基金の追加的な財源の第6回目及びその後の補充を通じて貢献するよう要請し、

6. 委員会に対し、締約国会議第1回会合での検討用に、特定の国際プログラムとそのプログラムの運用に関するガイダンスを開発するよう求める。

3. 他の国際組織に関係することがらに関する決議

 委員会は

1. 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約、国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約、及び残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の第2回拡大合同締約国会議での水銀に関する水俣条約と協力し調整する用意ができていることを告げる決議を歓迎し、

2. 委員会に対して、バーゼル、ロッテルダム及びストックホルム条約への加盟国と協議の上、4つの条約に対する相互に関心のある領域での可能性ある協力と調整を調べ、適切なら、締約国会議第1回会合での検討用に提案書を提出するよう求め、

3. 環境的に適切な水銀廃棄物の管理のための技術的ガイドラインを準備する作業の取り組みを含んで、水銀を含む廃棄物の管理に関連する問題に対してバーゼル条約の関連組織によりとられる作業を歓迎し、

4. バーゼル条約の関連組織に対し、委員会と、さらに締約国会議と、水銀の暫定的な保管;廃棄物中の水銀含有量の閾値の特定;適切なら環境的に適切な水銀廃棄物の管理;そして水銀に関する水俣条約の下における水銀廃棄物の管理のための要求の開発に関するガイドラインを開発するために密接に協力するよう要請し、

5. バーゼル条約の事務局に対し、環境的に適切な水銀廃棄物の管理のための技術的ガイドラインの開発を含んで、水銀廃棄物の管理に関連する問題に関して委員会に報告するよう要請する。

4. 日本政府への賛辞

 委員会は、

 日本政府の丁重な招きにより、2013年10月9日に水俣を訪問し、2013年10月10日と11日には熊本で会合を持ち、

 水俣地域の人々と地域社会が長期間にわたり水銀により引き起こされた汚染により、深刻な健康と環境問題の被害を受けたことを心にとどめ、その地域の環境を修復し、環境的に適切な地域社会を建設するための彼らの努力を認識し、国際社会は上述の水俣の経験と水俣からの教訓を学ぶべきことを認め、

 施設、建物、及びその他の資源を提供することについての日本政府と熊本県及び水俣市並び熊本市当局の努力は、会議の円滑な運営に著しく貢献したことに納得させられ、

 会議に参加した代表団、オブザーバー及び国連環境計画事務局に対し、日本政府、熊本県、及び水俣市と熊本市により差し伸べられた好意と歓待を深く感謝し、

 日本政府、熊本県及び水俣市並びに熊本市当局、及び彼らを通じて日本の人々、特に水俣と熊本の人々に対して、彼らが会議とその作業に関与した人々を厚遇し、その貢献が会議の成功をもたらしたことについて心底からの歓迎し、真心をこめて謝意を表明する。



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