IPEN 2019年11月
水俣条約 COP3
IPEN クイック・ビュー


情報源:IPEN, November 2019
IPEN Quick Views for the Mercury Treaty COP3
https://ipen.org/sites/default/files/documents/
ipen_quick_views_for_the_mercury_treaty_cop3_en.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年11月28日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/COP3/IPEN/
2019_November_IPEN_Quick_Views_of_Minamata_Convention_COP3.html

訳注(参考):水銀条約日本語訳

 下記は、2019年11月に開催される COP3 において提起されるであろう重要課題に対する IPEN の見解を要約し、締約国会議(COP)の作業スケジュールを追跡するものである。詳細な政策概要が利用可能な場合には、リンクを張った。


第二十二条 有効性の評価
Agenda item 5 (Meeting docs MC/COP.3/14 and MC/COP.3.INF/15)

  • 会期間専門家グル−プは、時間とともに水銀汚染を削減することについての条約の有効性を測定するために広範な環境媒体の世界的な水銀監視のための枠組みを開発している。 IPEN 及び多くの締約国は、どのような監視プログラムにも海水だけでなく淡水系も含める必要があることを強調してきた。いくつかの締約国は以前、淡水監視を監視の枠組みに入れることに反対し、現在はその枠組みから除外されているので、それを枠組み内に留めることを確実にすることは重要である。現在の決議草稿は、有効性評価(EE)のための監視の枠組み提案を採択し、COP4 において専用の EE 委員会と、同委員会のための報告書を作成する監視グループを設立することを求めている。世界水銀汚染の最初の評価は現在の作業スケジュールの下に COP5 に先立ち準備されるべきである。
第四条 付属書A(水銀添加製品)及び第五条 附属書B(水銀又は水銀化合物を使用する製造工程)(Meeting doc MC/COP.3/4)
IPEN Policy Brief no. 3.も参照のこと
  • 締約国会議(COP)は、条約発効後 5年以内に付属書A及び附属書Bを見直すことが求められている。 COP3 における決議草稿は、20か国の代表からなる専門家グループを設立するよう提案するであろう。NGO 及びその他の団体からの 10人のオブザーバーが監視することができる。このグループは、付属書A及び附属書Bをレビューし、それらを変更するための加盟国からのどのような提案も検討する。彼らはまた、水銀製品とプロセスに関して行動する締約国の今日迄の有効性に関する報告書を準備する。専門家グループはその結果を COP 4 で報告するであろう。

  • アフリカ地域は、歯科用アマルガムを付属書Aの Part II から Part I に移動することを提案している。そのことは、歯科用アマルガムを長期的な”段階的縮小(phase-down)”から 2020 年までの短期的”廃絶(phaseout)”にするであろう。IPEN は専門家委員会の設立、プロセスのレビュー、及びアフリカ地域の提案を支持する。
水銀添加製品を追跡するための統計品目番号(HS code)の調和 (Meeting doc MC/COP.3/5 MC/COP.3/INF/12).
  • この項目は、任意の製品を水銀添加されているか又はされていないか区別する世界の統計品目番号が欠如していることによる水銀添加製品の国際貿易の追跡の困難さに関連している。統計品目番号(HS code)を修正するためにとることのできる 4つのアプローチに関し、ひとつの報告書が事務局により準備されている。 IPEN は世界貿易における水銀添加製品を特定するのに役立つ品目番号システムの迅速な修正を支持する。INF 12 における報告書全文は COP3 において検討用途のために示されるであろう。
第11条 水銀廃棄物基準値 (Meeting doc MC/COP.3/7)
IPEN Policy Brief no. 2.も参照のこと
  • 基準値の設定は何が水銀廃棄物で何が水銀廃棄物ではないかを定義するので、これは非常に重要な項目である。 COP3 でそれは合意に至らないかもしれないが、議論はされるであろう。水銀で汚染された廃棄物(土壌、堆積物、産業廃棄物などを含む容積で最大の水銀廃棄物)について、廃棄物専門家グループは全濃度アプローチ(a total concentration approach)を勧告し、溶出試験アプローチ(a leaching test approach)を否定した。溶出試験は一般的に廃棄物は埋め立て場又は鉱滓池のようなその他の土地ベースの処分メカニズムに送られることを予め決めつけるので、IPEN は全濃度アプローチを支持する。

  • IPEN は、水銀汚染廃棄物を定義するために 1 mg/kg の基準値を支持する。Meeting doc MC/COP.3/7 の決議草稿の中で、オプションとして 25 mg/kg の値が提案された。この値は、一人のメンバーにより専門家会合で提起されたが、専門家グループの他のだれ一人として支持又は認める者はいなかった。この値は高すぎるので、決議草稿中で提案されるべきではない。もし、 25 mg/kg が採用されることになれば、大量の水銀廃棄物が処理を免れ、更なる汚染をもたらす農業や建設などの用途で使用されるであろう。代表者らは 25mg/kg など廃棄物専門家グループによって決して支持されたことがないことを知らなくてはならない。

  • 製品市場から回収された又は使用が許可されなかった全ての元素水銀は基準値に関係なく、”水銀廃棄物”とみなされるべきであることが提案された。 IPEN は、不法な輸出などによる、低純度の没収水銀が水銀廃棄物定義を潜りぬけ、その結果合法的な技術に基づく処分要求を免れるのを防止するために、水銀純度が 95%以下(元素水銀の基準)が水銀汚染廃棄物として分類される限り、この提案を支持する。

  • 全ての水銀添加製品は、製品寿命が尽きたら基準値要求なしに、水銀廃棄物とみなされることが提案されている。IPEN は、その見解を支持し、またもしそれらが水銀を含んでいるなら、特定することを目的として製品の義務的なラベル表示を求めることを支持する。
第九条 放出(Meeting doc MC/COP.3/6)
  • IPEN は、水銀放出を特定し、削減するための包括的な手法の開発を支持し続ける。水銀放出源の目録開発プロセスは非常に遅く、この条約の他の条項では対応されていない点発生源からの放出に対応することが求められている。専門家グループは、他の条項の下ではカバーされない点発生源からの放出を特定することを課せられている。残っている主要な問題は、水銀で汚染された廃水にどのように対応するかということである。専門家グループによって特定された他の場所で対応されなかった他の発生源は下記を含む:

    下記からの土地及び水への放出:
    • 条約発効から15年間、一次水銀採鉱
    • 付属書Aにリストされている濃度制限以下の水銀を含有する製品を含んで、付属書Aにリストされていない製品の製造
    • 最良の環境的実施を推進しない歯科治療
    • 付属書Bにリストされていない製造プロセス
    • 排出のために BAT/BEP を求めるが、放出のための BAT/BEP を求めない付属書Dにリストされている点発生源
    • 一次水銀採鉱以外の採鉱からの廃棄岩、表土、及び尾鉱

  • COP3 は、専門家グル-プにより開発された、”第九条以外の条約の条項の中で対応されていない、どのような顕著な人為的点放出源の分類のリストを含んで、目録・・・を準備するための方法論に関するガイダンス草稿の開発のためのロードマップと構造”を承認することを求められている。もしこれが合意されるなら、専門家グループは”そのリストの中で放出源のための目録を準備するために標準化された既知の方法論に基づきガイダンス草稿を開発する”ことになる。このガイダンス草稿はおそらく、2021年後半の COP4 で採択されるであろう。確定された目録方法論を使用するどのような実際の報告書作成も最大 5年先のことである。IPEN は、少なくとも COP4 (2021年)に締約国による使用のための現実のツールとして放出目録に関するガイダンスの確定を支持する。
財政メカニズム: GEF, SIP (meeting doc MC/COP.3/9 and 3/10, MC/COP.3/INF/2 and 3)
  • 今迄に GEF は、水俣初期評価(MIAs)及び 35か国の ASGM 国家行動計画を開発するために 111 か国に資金供与した。2億600万ドルが、活動を可能にし、プロジェクトとプログラムを実施するために GEF-7 の下に水銀条約のために割り当てられた。(ASGM 対応のための) GEF 金プログラム(GEF Gold program)は過去5年に渡り 1億 8,000万ドルを費やしており、8 戦略国における ASGM での水銀の使用を削減することを目指している。COP3 は、 GEF-8 補充へのインプットとして追加のガイダンスを供給する必要があるかどうかを決定するであろう。

  • 特定国際プログラム(SIP)は、10年間の資金供与プログラム(7年の延長可能)であり、後に GEF 資金供給により規模拡大をすることができる第一段階の能力構築プロジェクトに、5万ドルから25万ドルが締約国に授与される。 SIP 授与には協調融資(cofinance)は必要ない。初回には 5 プロジェクトが供与され、プロジェクト応募の二回目が現在実施中である。これらは COP3 で報告される。資金提供者らは、第二回目のために SIP に 2,414,413ドルを提供した。 SIP 運営委委員会は、この段階で水銀条約の資金供与見直しプロセスを提案するのは早すぎると信じている。
財政メカニズム:レビュー、ICC、能力構築(Meeting doc MC/COP.3/11, MC/COP.3/13 and MC/COP.3/INF/9 and MC/COP.3/INF/10)
  • 財政メカニズムのレビュー: COP2 で、事務局は財政メカニズムの妥当性に関する情報を編集するよう求められていた。 GEF と SIP の運営委員会は meeting doc 11 に編集されており、COP3 で検討用に提示されるであろう資料を提出した。決議草稿は、 COP4 で検討されるべき第二回レビューのための委任事項を準備するよう締約国会議(COP)を誘っている。

  • 15人の委員からなる実施順守委員会(ICC)は COP1 以来、一回会合を持った。COP3 は 1期のために 10人の委員を再選し、2期のために 5人の新たな委員を選ぶことを求められている。実施順守委員会(ICC)はその運営のために委任事項、及び締約国が順守問題を報告するためのひな型を開発したが、両方とも COP3 で採択のために提示されるであろう。委員会は再びジュネーブで 2021年の第1四半期に会合を持つであろう。

  • 能力構築:COP2 では、既存の地域的、準地域的、及び国家のセンターが能力向上支援及びプロジェクトを提供することが認められた。締約国会議(COP)は、これらの活動に関する情報の編集を求めた。ラテンアメリカとカリブ海諸国のための化学物質及び廃棄物に関する政府間ネットワークは、日本政府とともに情報を提供した。第二十一条(報告)に関連する締約国による報告からもっと多くの情報が利用可能となるので、事務局は、締約国会議(COP)が報告書、課題、及び経験を検討し、この問題を将来の締約国会議(COPs)でレビューし続けるよう勧告している。
汚染サイト(Meeting doc MC/COP.3/8 and MC/COP.3/INF/12)
IPEN Policy Brief no. 1. も参照のこと
  • IPEN は、会期間を通じてガイダンスへの情報提供をしてきたし、COP3 における採択を支持する。屋内水銀汚染の修復への IPEN の提案はガイダンスに含められなかったが、INF 12 の中で支援情報として含められた。もし採択されるなら、そのガイダンスは将来のレビューの対象となり、 IPEN はさらなる ASGM 特定の修復データ、特にアマルガム処理が住宅用ビル及び商業用ビル(金仲買店など)を水銀で汚染し、除染をしなくてはならない場所のためのガイダンスの将来版に含めることを支援するであろう。
野焼き(Meeting doc MC/COP.3/17 and MC/COP.3/INF/16)
  • 野焼きによる水銀排出の問題は、条約の議題に値するものとして注目されるよう努力されてきた。事務局は締約国に対して、その問題に関するデータを提出するよう要求していたが、非常にわずかな締約国しか対応しなかった。日本はこの分野でいくつかの調査を実施している。IPEN は、野焼きにおける水銀に対応するために改善された廃棄物管理手法とともに、野焼きによる水銀の排出と放出に関する問題を検証し、勧告をするために締約国会議(COP)による特別作業部会の設立を支持する。野焼きが大きな問題であるようなこれらの地域における廃棄物の分別(source separation)と環境的に適切な廃棄物の管理に向けられるべき追加的な資金供給と能力構築を支援する。
COP3 の議題で対応されない項目

条約を弱める3大ギャップ:石油とガス、石炭、及び ASGM
  • 石油とガスは条約の下でほとんどの規制を免れる。排出、放出、及び元素金属供給の大きな源であるにもかかわらず、排出と放出を抑制するための施設に関する BAT/BEP について法的要求は何もない。現在、石油とガスから除去される元素水銀が ASGM での使用のために売られることはあり得る。条約は石油とガス製造を付属書Dに加えること、及び石油とガス製造から回収された水銀の ASGM での使用を禁止することにより、これらの抜け穴に対処するよう修正されるべきである。

  • 既存の石炭火力発電所は、排出削減のために BAT/BEP を実施する法的義務がなく、BAT/BEP 管理を使用する新たな石炭火力発電所の数に制限がない。潜在的に数千の新たな発電所が BAT/BEP 措置により全体の排出汚染をカットするよう建設されている。BAT/BEP 要求は既存の発電所にも適用すべきであり、新設火力発電所の数に上限を設けるべきである。

  • ASGM では水銀使用は許されるべきではなく、ASGM での水銀禁止に早急に移行し、2025年までに完全禁止とすべきである。
第3条 水銀の供給源と貿易
  • これは IPENにとって重要な課題であり、水銀使用の廃絶を求めている締約国にとって優先課題である。IPEN は、個々の締約国が率先し、条約順守を超え、水銀の全ての輸入と輸出を禁止するという要求を保持する。”許容される”用途のための貿易が続く限り、水銀は ASGM に転用され続けることになり、 健康影響と将来の汚染サイトの修復のための莫大なコストを ASGM 諸国にもたらす結果となるであろう。締約国は、その国が有しているかもしれない水銀のわずかな重要な使用のために回収及びリサイクルから補充されるべき小さな国内の水銀供給がを許す措置を実施することを計画べきである。締約国は、国が有するかもしれない水銀のわずかな重要な用途のために小さな国内の水銀供給が回収及びリサイクルから補充されることを許すための措置を実施することを計画すべきである。



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