Ban Toxics 2009年4月 報告書
フィリピンにおける 廃棄水銀の最終保管方法の検討 エグゼクティブ・サマリー 情報源:Ban Toxics!, 30 April 2009 Terminal Storage Options for Mercury Wastes in the Philippines http://www.scribd.com/people/documents/11342375?from_badge_documents_inline=1 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2009年4月23日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/Ban_Toxics/Ban_Toxics_Report_on_Mercury_Storage.html エグゼクティブ・サマリー
Executive Summary
国連環境計画は、健康と環境影響を低減するために世界の水銀使用、排出及び放出は著しく削減される必要があるということを明確にした。これに基づき、各国は食品中の水銀最大含有量の基準を設定し、水銀の使用を制限し、水銀の放出を削減するなどの対策をとり始めた。 フィリピンの水銀 2008年、フィリピン環境天然資源省は、フィリピンにおける水銀の供給と放出の調査を行った。この調査は、水銀放出のひとつの主要な源は、フィリピン全体の水銀放出の約20%を占める製品及びプロセスからの廃棄物、例えば温度計、電池、その他水銀含有製品からの廃棄物であることを明らかにした。 フィリピンは不適切な廃棄物処理の問題に取り組んでいるので、この発見はフィリピンにさらなる問題を提起することになる。首都マニラでは毎日発生する約 5,250トンの廃棄物が収集されるが、日々発生する廃棄物の27%、あるいは約 1420トンは個人の土地、河川、小川、マニラ湾に不法に投棄され、あるいは野焼きされる。廃棄物を発生源で分別することを求める法律があるが、実際には分別はほとんど行われていない。 フィリピンは水銀汚染廃棄物の幾分かを隔離することができると仮定すれば、フィリピンはその水銀が環境に戻らないようにするために、その水銀をいかに管理するかの展望に向き合うことになる。この研究は、収集した水銀を安全に確保する最終保管という、この分野における新たな実施方式について調査するものである。 最終保管方式 世界には、様々な水銀保管方式があるが、地上保管と地下保管の二つの方式に分類することができる。それぞれの方式には事例があり、この研究で検証したのは、アメリカ国防総省備蓄センター(DNSC))の地上保管方式、ドイツの岩塩廃坑への埋め立て方式、及びスウェーデンの深い地下岩盤への注入方式である。 これら3つの方式はいずれも、高い技術と資金を必要とする。保管施設の場所、地理学的安定性、水文学、台風のような自然災害の発生などは、これらの施設をどのように選定するかに影響を与える。同様に、コストも非常に重要である。深い地下岩盤への注入について、スウェーデンは、1,000〜20,000トンの高レベル水銀廃棄物のために、2億〜3億クローネ(約2,500万〜3,700万ドル)を予想している。アメリカ国防総省備蓄センター(DNSC)は、彼らの施設の運転開始コストとして1,745万ドルを必要とし、4,436トンの商品グレードの水銀元素の管理のために運転コストとして毎年少なくとも 547,904ドルを予測している。最も安そうに見えるのはドイツの岩塩廃抗方式であり、会社は、主に塩素アルカリプラント解体からの余剰水銀に対し、トン当たり270ユーロを請求している。 政策と法律のギャップ 基本的に、この研究は水銀に関する既存のフィリピンの法律と政策が、最終保管のような野心的なプロジェクトを支えるのに十分に強固で包括的であるかどうかを検証している。水銀問題に対応する場合の主要な切り口として、最終保管を考慮しそれを認めるという水銀に関する包括的な国家政策がフィリピンには現在、欠如しているというのが、この研究の結論である。さらに、処分施設の確立のために広範な措置を持っているが、既存の法律は水銀の最終保管のためには不適切である。この研究は、水銀廃棄物に 関する法律によって確立される廃棄物管理の優先度、不適切な免除、及び責任体制における問題点に矛盾を見出している。 勧告 水銀は、多くの国に、特にフィリピンのような途上国に多面的な課題をもたらす。この有毒物質を隔離し永久に保管するという概念は、実に革命的であり、多面的で完全なライフサイクル・アプローチが必要である。これを実現するために、フィリピン政府は、規制上のある偏向を捨て去り、最終保管、その影響、及び要求を、それ自身を目的とするのではなく、包括的なアプローチのひとつの面としてとらえる必要がある。 この研究は対応すべき下記のギャップを特定した。 A. 下記の要素を持った水銀最終保管のための包括的な国家政策
D. 意見をレビューし、勧告するための多数利害関係者プロセスの創造 E. 最終保管施設を創設するための基準における社会的及び政治的考慮 |