Ban Toxics 2010年2月15日 プレスリリース
水銀中毒被害者 学校を訴える
危害の説明責任と損害賠償が求められる

情報源:Ban Toxics, 15 February 2010 FOR IMMEDIATE RELEASE
Mercury Poisoning Victim Files Case Against School
Accountability and Damages for Injuries Sought
http://bantoxics.org/site/index.php?option=com_content&view=article&id=100:15feb10&catid=1:latest&Itemid=60

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年2月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/Ban_Toxics/Ban_Toxics_100215_Mercury_Poisoning_Victim.html


 【2010年2月17日 ケソン市、フィリピン】4年前、ジョン・セス・セリロさんは14才で、パラニャーケ(Paranaque)にあるセント・アンドリュー校の新入生であった時、科学の授業で先生が生徒に水銀を取り扱うことを許した後に、金属水銀に暴露した。ジョン・セスさんはこの有毒な水銀液には触れていなかったが、空調された教室に充満した水銀蒸気によって深刻な影響を受けた。

 本日、ラスピナスの地方裁判所でジョン・セスさんは弁護士を通じて、パラニャーケのセント・アンドリュー校と科学教師グローリア・メルカド氏を、彼の人生を変えた危険で有毒な実験の実施における彼らの過失についての説明責任と損害賠償を求めて訴えた。

 ”彼らの過失が私の息子から正常な子どもの時代を奪った。彼は水銀中毒であると診断されており、ジョン・セスの健康は悪くなったままである”とジョン・セスの母親ジュリエット・セリロさんは述べた。”彼の脳検査の結果は、パーキンソン症候群(parkinsonism)と神経損傷が起きていることを示した。彼のいつもの高熱と激しい震えは彼の生活に急激な変化を及ぼし、彼は水銀被害にあう前には普通に享受していた、学校に行き、友達と一緒に過ごし、運動をするということは、最早出来なくなった”。

 水銀は脳と中枢神経系を損傷する強力な神経毒素であり、脳と神経への損傷は回復不可能である。世界保健機関(WHO)によれば、水銀暴露の安全な閾値というものは存在しない。

 フィリピン政府は国内での水銀使用を抑制する措置をとるのが遅い。2008年に、保健省は行政命令 No. 21 を発令して、フィリピンの全ての医療施設において、水銀と水銀含有機器の使用の段階的廃止を要求した。2009年、環境天然資源省はナショナルフォーラムで水銀廃棄物の解決を討議するよう要求した。

 しかし、フィリピンの環境団体バン・トクシックス(Ban Toxics)の代表であり、ジョン・セスの共同弁護士であるリチャード・グティエレス氏は、これらの措置は学校において水銀から子ども達の安全を確保するために十分ではないと主張した。”この水銀中毒事件が起きてから4年経過しているのに教育省は初等学校及び中等学校での水銀使用をまだ禁止していない。当局が措置を取るまでにどのくらい多くの子ども達が水銀中毒になるであろうか?”

 水銀について他の諸国では強い措置が取られている。2009年にスウェーデンは水銀を含有するどのような製品も販売することを禁止した。アメリカと欧州連合もまた水銀によって及ぼされる健康と環境への危険性を認めて、水銀の他国への輸出を禁止する法律を制定した。

 ”問題は水銀の事故は防ぐことが出来るのに起きたということである。ジョン・セスさんに被害を与えた水銀は学校では決して使われてはならないことであった”とグティエレス氏は残念がった。


原注
バン・トクシックス(Ban Toxics)は、アテネオ人権センター弁護士のギルバート・センブラーノ氏とパティ・シゾン−アロヨ氏とともにジョン・セスさんの共同弁護を行っている。

さらなる情報と連絡
Richard Gutierrez, Ban Toxics!
(0917) 506 7724; richard@bantoxics.org

関連情報
1. 水銀は、純粋の元素水銀と水銀化合物の両方ともに最も危険な環境汚染物質のひとつである。水銀は神経系を損傷し、記憶、言語、運動能力に危害を及ぼすことが知られている神経毒素である。環境中に放出されると、最も有毒なメチル水銀に転換する可能性があり、魚に蓄積して人間がそれを食すると人の体内に入り込む。小さな子ども、妊婦、胎児はこの有害な水銀影響に最も敏感である。

2. 米国政府機関は水銀暴露に関するいくつかのガイドラインを発表している。米国労働安全衛生局(OSHA)は水銀蒸気の最大許容量を0.1 mg/m3と規定している。しかしこの規制値は成人労働者用に意図されているということ、及び子ども用の基準は存在しないということに留意することが重要である。摂食による暴露については、米食品医薬品局(FDA)は全ての海産物に含まれるメチル水銀を1ppmに制限している。


訳注
日本では、当研究会が中心となり、2009年10月15日に日本政府に大して「市民団体共同声明 日本政府に水銀輸出禁止法の制定を求める」を提出しました。下記ウェブページをご覧ください。
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/mercury_CSO_master.html

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Philippine Daily Inquirer
Teenager sues school for neglect
First Posted 21:31:00 02/15/2010
http://newsinfo.inquirer.net/inquirerheadlines/metro/view/20100215-253379/Teenager_sues_school_for_neglect



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