Ban Toxics! 2009年8月9日
なぜ日本が水銀輸出禁止を確立し
あなたの組織がこの取り組みを支持する
必要があるのか−10の理由

(海外 NGOs に向けた Ban Toxics!のメッセージ)
日本語pdf版

情報源:Ban Toxics!, 9 August 2009
10 Reasons why Japan Needs to Establish a Mercury Export Ban,
and Why Your Organization Needs To Support This Initiative
by Richard Gutierrez
Ban Toxics!/Zero Mercury Working Group
JapaneseMercuryExportBanRationale.v.9Aug09_jp.pdf_en.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年8月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/Ban_Toxics/Japanese_mercury_export_ban_rationale.html


1.欧州連合と米国が水銀輸出を禁止したので、世界の水銀貿易の50%は2013年までに効果的に禁止されることになる

 米国と欧州連合(EU)は世界の年間水銀貿易の推定40〜50%を占めている[1]。両国は、多くの開発途上国と移行経済国においてEUと米国から輸入される水銀の大部分が持続可能ではない方法で用いられていることを示す証拠があることを認めている。輸入水銀は、世界的な水銀汚染の主要な発生源のひとつとして認められている小規模金採鉱(AGSM))分野のような水銀汚染に加担する産業に送られることは明らかである。
 EUと米国は、彼らの水銀が環境中に出ないようにするために、水銀の他国への輸出を禁止した。

2.日本はEUと米国に続き、水銀輸出禁止を制定すべき次の主要な水銀輸出国である

 国連貿易統計(COMTRADE)からのデータは、2005年〜2007年の間に日本は水銀を世界に574.478トン輸出していることを示している。日本の水銀輸出相手国には先進国及び途上国の両方が含まれる。
 国連貿易統計のデータはまた、水銀の大部分は水銀貿易が確立した国々、すなわちオランダや香港にまず輸出され、そこからさらに世界中に送られる。これらのケースでは、日本はその先、水銀がどこに送られるのか、又はどのように使用されているのか把握していない。

3.日本自身の水銀の悲劇の歴史

 水俣の悲劇は、日本政府に水銀汚染が何を引き起こすかについての悲しく、気持ちを動かさずにはおかない記憶であるはずである。この歴史的な出来事にもかかわらず、日本は、この有毒物質が人や野生生物、環境に有害な影響を及ぼすことを十分に知っていながら、水銀を世界に輸出し続けている。

4.水銀供給を制限することは水銀の非合法な取引と使用に影響を及ぼす

 国境からの水銀の違法な流入に悩む途上国には、この貿易をとめるだけの力がほとんどない。輸出禁止を通じて世界中の水銀供給を廃止又は削減することによりコストが上昇し、違法な水銀の取引を困難にすることができる。コストが高くなれば当然のことながら、持続可能ではない水銀の使用を思いとどませることになる。

5.水銀を使用しない代替の開発のための動機付けとなる

 日本の水銀輸出禁止などを通じて実現される世界の水銀供給削減のもうひとつの恩恵は、水銀を使用しない代替の開発のための動機付けとなることである。世界の水銀コストが上昇すれば、水銀に依存していた産業は代替を探さざるを得ず、米国、EU、そして願わくば日本による水銀輸出禁止の発効期日を念頭において、代替をしなくてはならないことになる。
6.世界政治における長年の日米協力

 この点について水銀規制の国際的な取り組みが、オバマ大統領のおかげで、進歩的な立場をとることとなった米国のおかげをこうむることは間違いない。米大統領バラク・オバマは、後に米国の元素水銀の輸出を禁止する法となった上院における法案の提案者であった。米国はまた、法的拘束力のある水銀条約のための協議を推進するという方向に世界の合意を動かすために助けとなった。
 米国と日本は密接な協力関係にあり、一方が他方の立場を支持しないというケースは稀であった。現在の米国の水銀に関する立場は明らかに日本を水銀禁止の方向に向けさせるプラスの要素であり、このことは大いに利用すべきである。
 主要な自由貿易国である米国が、その貿易政策を撤回して水銀貿易を禁止することができたのだから、日本も同じことをできない理由がない。

7.米国とEUの禁止への異議はないのだから、他国からWTO違反として異議が出る可能性は小さい

 さらに、米国とEUはすでに水銀輸出を禁止したが異議はまだ出ていないので、日本がWTO抵触や貿易関連の異議申し立てを受けるリスクはない。

8.日本の水銀輸出禁止は、政府の同様な有害化学物質/廃棄物の輸出政策に影響を与える先例となる  例えば、東南アジアでは、過去数年間日本政府が推進した様々な経済連携協定によってもたらされた有害廃棄物貿易への深い懸念がある。
 し日本が水銀のような有害物質の輸出を進んで禁止するなら、このことは市民社会組織が日本の有害化学物質及び廃棄物の輸出をさらに禁止することを要求するために利用できる。
 日本の水銀輸出禁止は有害物質貿易という大きな問題に対する先例となり得る。

9.水銀に対する世界の取り組みに弾みをつける必要がある

 もし、EU、米国及び日本のような主要な水銀貿易国が自らの輸出を禁止すれば、その共同歩調は水銀貿易を望む国々を孤立させ、世界の水銀輸出禁止に向けての世界的な弾みを生み出すであろう。水銀貿易国であることが知られる国が増えれば、それらの国々はますます孤立し、そのことが水銀貿易に対する世界の圧力となり得る。

10.日本のNGOは水銀輸出を禁止するよう日本政府に圧力をかけるキャンペーンを開始している

 化学物質市民研究会の安間武の呼びかけにより、我々の日本の仲間が日本政府に水銀輸出を禁止するよう求める取り組みを立ち上げた。現在、日本ではこの取り組みを支えるための運動が盛り上がっている。

以上


[1]Peter Maxson, MERCURY FLOWS AND SAFE STORAGE OF SURPLUS MERCURY, August 2006

訳注:関連記事
Ban Toxics! 2009年6月4日 なぜ日本は水銀輸出禁止を確立する必要があるのか(日本の NGOs に向けた Ban Toxics!のメッセージ)


化学物質問題市民研究会
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