WHO プレス・リリース
環境:リスクはどこに? 子どもたちの安全はどこに?
世界保健機関 『子どもの環境健康と環境の地図』を発行


情報源:22 JUNE 2004 | BUDAPEST/GENEVA
http://www.who.int/mediacentre/releases/2004/pr43/en/
The environment: where's the risk, and where are children safe?
World Health Organization publishes first-ever Atlas of Children's Health and the Environment

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2004年6月28日


 世界中で、汚染された空気や水、その他の環境関連の危険により、毎年5歳未満の子どもたちが300万人以上死んでいる。
 産業化、都市の汚染増大、気候変動、化学物質使用の増加、そして環境の悪化が、数世代前には想像もできなかったようなリスクを子どもたちに及ぼしているが、ほとんどの子どもたちの死因として古くからよく知られている基本的な脅威は、不安全な水、衛生設備の不足、マラリア、そして屋内の空気汚染である。

 5歳未満の子どもたちは世界の人口の10%なのに、環境関連疾病に苦しむ人々の40%がこの年代の子どもたちである。このことの理由の一部は子どもたちは有害な物質を体重当たりでは相対的に高い割合で体内に取り込んでいること、そして他の理由の一部は子どもたちが自分自身を守るほど強くなく、知識もないことである。

 子どもたちの健康に及ぼす環境の影響を描くために、世界保健機関(WHO)は初めて、 『子どもの環境健康と環境の地図』 を発行した。ハンガリーのブダペストで開催された第4回ヨーロッパ健康と環境大臣会議で発表されたこの本は、我々の子どもたちの健康に及ぼす環境リスクの影響についての広範な要素を示すと共に、我々全てが直視すべき危険を画像により描くことで、世界中で5歳未満の子どもたちが年間300万人以上死亡していることの理由を説明している。[1]
 子どもたちは環境の危険の主な被害者である。社会の中で最も脆弱なメンバーが、環境の危険から健康を守るための政策上の失敗の対価を払わなければならないということは、どのような観点から見ても許容することはできない。子ども時代の発達は生涯を通じての健康に影響するので、子どもが健康に影響を及ぼすダメージを受けるということは、社会全体が被害を受けるということである。この会議は、我々ができることを実施し、それをどのように実現するかということに合意する素晴らしい機会を提供するものである” と WHO 理事長リー・ジョンウックはこの本の発行にあたって述べた。

 国連ミレニアム宣言では、各国政府は2015年までに5歳未満の子どもの死亡率を2/3まで削減することを求めている。これは最も野心的な目標の一つかもしれない。
 ”この本は我々と世界に対する警鐘である。子どもの死亡数が警告を発している。それは陰惨な画像により、このことの無策を説明している。我々は現実を直視し、持続可能で明るい将来に向かって、今、行動を起こさなくてはならない” と持続可能な開発と健康な環境担当の WHO 副理事長カースティン・レイトナー博士は述べた。

 広範に描かれているように、このアトラス(地図)は子どもたちがあらゆるところで直面している脅威について明確に証言している。それは子どもの健康に与える貧困の影響と、環境問題と闘うために必要とされる取組みについて強調している。また、我々の子どもたちの健康に与える環境との関連性、相互関係、及び影響について議論している。この重大な局面は無視することはできず、緊急の措置が求められる一方、我々の子どもたちが安全な地球と明るい将来を引き継ぐことを確実にする世界への道を示している。

健康と環境−アトラスが示す事実の一部:

  • 汚れた水は下痢の原因となり、それにより毎年世界で推定180万人が死んでおり、そのうち160万人が5歳以下の子どもである。それはまた、コレラ、赤痢、ギニア虫(訳注:熱帯の線虫類で人や馬などの皮下深部に寄生する)、腸チブス、腸寄生虫など多くの病気の原因となる。
  • ラテン・アメリカとカリブ海諸国では都市排水の86%が、また、アジアでは全ての排水の65%が未処理のまま川、湖、そして海に放流されている。
  • ガンジス川だけをとっても、毎分110万リットルの未処理排水が放流されているが、驚くべきことには未処理排水1グラムには1,000万個のウィルス、100万個のバクテリア、1,000個の寄生虫胞子、100個の虫の卵が存在する。その結果として生じる病気には、下痢、コレラ、赤痢、チフス、ギニア虫、トラコーマなどが含まれる。
  • 毎年、約100万人の子どもたちが、彼ら自身の家の中の空気汚染によって引き起こされる病気で死んでいる。ほとんどのアジアとアフリカ諸国の家庭の75%以上が、薪、動物の糞、石炭、又は穀物廃の固形燃料を用いて調理しているが、それらは黒煙を生じ、、それらは吸い込むと、肺炎やその他の呼吸器系疾病を生じ、あるいは悪化させる。

”子ども、環境、そして健康”の CD、本日発行

 世界保健機関は、本日、今回初めての子どもの環境と健康に関する WHO 文書の世界電子ライブラリーを公開した。この ”ブダベスト・コレクション Budapest Collection” は、子どの環境健康リスクに及ぼす影響−屋内及び屋外の空気汚染、水と衛生、化学物質、怪我、食品安全と栄養、世界気候変動、社会経済的要因、及びタバコ−に関する100以上の文書からなっている。
 これらの文書は、1999年のロンドンにおける第3回環境と健康に関する大臣会議と今回ブダベストで開催されている第4回大臣会議の間に、WHO 本部及び6つの地域事務所によって発行されたものである。
 この第3回大臣会議において、ヨーロッパの健康と環境担当大臣たちが、環境の脅威に対する子どもたちの脆弱性を認め、安全と健康な環境を子どもたちに与えることを約束した。
 これを受けて、多くの分野別研究論文、報告書、雑誌掲載論文が発行され、それらが現在ブダベスト・コレクションの一部となっている。

”この世界規模の成果は、子どもたちの健康に及ぼす環境の影響を如何に少なくするかにについての多くの専門分野にわたるの洞察を提供することで、政策決定者や科学者にとって重要なツールとなる" とWHO ヨーロッパ地域事務所の健康責任者ロベルト・ベルトリニ博士は述べた。

 提供される CD は、ユーザーが容易に検索し、目を通し、様々な言語の全文をダウンロードできる対話型検索機能をオプションで持っている。
 ”ブダペスト・コレクション” のコピーは gcc@who.it 又は fgi@who.it にメールで要求することで入手できる。

[1]:この数値は、5歳未満の子どもで不安全な水や衛生設備、屋内空気汚染、屋外空気汚染、及びマラリアなど気候変動に起因する死亡を含む

関連サイト

子どもの環境健康と環境の地図
Inheriting the world: The atlas of children's health and the environment


子どもの環境健康
Children's environmental health




化学物質問題市民研究会
トップページに戻る