科学的データと手法

注:本資料は、アメリカ環境保護局(EPA)の中に設けられている ”子どもの健康保護事務所 (Office of Children's Health Protection (OCHP)” のウェブサイトの一部を翻訳して、
OCHP について紹介するものです。
このページは OCHP の Scientific Data and Methods
http://yosemite.epa.gov/ochp/ochpweb.nsf/content/Whatwe_scientif.htm

を翻訳したものです。(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会


 子どもの健康保護事務所 (OCHP) は、子どもの環境健康に関する懸念についての理解を深めるために、環境保護局の内部及び外部の組織とともに活動している。

■研究
  • EPAと国立環境健康科学研究所(NIEHS)は、子どもの環境健康に対する危険性について専ら研究するために、12の子どもの環境健康と疾病予防研究センター (Centers for Children's Environmental Health and Disease Prevention Research ) を設立した。
     これらのユニークなセンターは子どもの環境健康について目標とする研究を実施し、そこでの成果を地域との共同作業による調停と予防戦略に反映している。

     12のセンターのうち4つは2001年10月に設立されたもので、子どもの発達障害に関する研究に焦点を絞っている。当初の8つのセンターは1998年に設立されたもので、幼児期の農薬への暴露やぜん息などを含む様々な研究プログラムを行っている。

     EPAの国立環境研究センター (National Center for Environmental Research) もまた、子どもの環境健康に関連する個々の研究に対し、助成を行っている。

  • 環境保護局、国立子どもの健康と発達研究所、国立環境健康科学研究所、及び疾病管理予防センターが共同で、全国子ども調査 (The National Children's Study) を提案し、立ち上げた。
     全国子ども調査は、全米100,000人以上の子どもの健康と発達に対する環境影響を、出生前から21歳になるまで追跡調査するものである。この調査の目標は子どもの健康と幸福を向上させることである。

     全国子ども調査 (当時は、子どもの長期的集団調査 Children's Longitudinal Cohort Study と呼ばれていた) は2000年10月17日に議会で正式に承認され、同日、子どもの健康法案 2000の一部として、立法化された (Law 106-310)。

  • 子どもの健康研究小児科学センター・アメリカ・アカデミーはEPAと共同で、現在、学会誌 『小児化学 Pediatrics』 の増刊号を刊行しつつある。この増刊号には、胎児、乳幼児、子ども、及び青年の環境中の化学物質、麻薬、及び physical agents に対する脆弱性と過敏性に焦点をあてるとともに、特に発達期の重要性と暴露の程度を記述した記事が掲載される予定である。

  • 2000年10月にEPAは、 『子どもに対する環境リスクに関する研究のための戦略 Strategy for Research on Environmental Risks to Children 』 を発表した。
     この戦略は、今後5年から10年にわたる計画への指針として研究の必要性と優先度に関する枠組みを設定するものである。この 『子どもに対する環境リスクに関する研究のための戦略』 には、EPA計画事務所及び地域事務所 (EPA Program Offices and Regions ) が特定した現在の重要な問題指向の研究とともに、危険の特定、用量−反応評価、暴露評価、及びリスク管理に関する研究の永続的、長期的、中心的な計画が含まれる。

■指標

  • 子どもの健康保護事務所とEPA政策経済革新事務所は合同で、子どもの健康と幸せに最も影響を与えると思われる環境要因に関する国の最初の評価を実施した。その報告書 『アメリカの子どもと健康 :入手可能な測定データについての最初の調査 America's Children and the Environment : A First View of Available Measures / EPA (PDF 1.1MB) 、  (PDF 1.1MB)』 は、環境暴露、生体的測定、及び環境的原因によるかも知れない病気に関する主要な情報についての報告書である。

     『アメリカの子どもと環境 :汚染物質、体内汚染、及び病気の調査 第2版 America's Children and the Environment: Measures of Contaminants, Body Burdens, and Illnesses (Second Edition)  、 (PDF 2.1MB)』 が現在入手可能である。様々な出典からの情報に基づき、大気中、水中、食物中、及び土中の環境的汚染レベル、子どもと女性の体内で測定され汚染物質の濃度、及び環境汚染への暴露によって引き起こされる小児期の病気についての傾向を示している。 (訳注:まえがき、目次、主な調査結果 についての日本語訳(当研究会))

     『アメリカの子どもと環境』 は、”子どもと家族の統計に関する連邦機関間フォーラム”によって毎年発行されている 『アメリカの子ども :幸福についての主要な国の指標  America's Children: Key National Indicators of Well-Being』をモデルにしたものである。 『アメリカの子ども』 は、健康、教育、家族生活などを含む子どもの全ての生活における健康と幸福に関する指標を含んでいる。

■暴露

  • EPAは 『子ども特有の暴露要因ハンドブック Child-Specific Exposure Factors Handbook』 を刊行したが、これは 0歳〜19歳までの子ども特有の暴露要因を提供するものである。このハンドブックは、子どもの環境汚染への暴露に影響を与える人間の行為と特性に関する入手可能な主要データを取りまとめ、また、子どもの健康リスク評価で使用する定量的データをリコメンドするものである。このハンドブックは現在、暫定版である。

  • 国民の健康と栄養摂取調査 National Health and Nutrition Examination Study (NHANES)は 『環境化学物質への人間の暴露に関する国家報告書 National Report on Human Exposures to Environmental Chemicals』 を刊行した。この調査は、116種類の環境汚染物質に対する人間の暴露を評価するために生体測定を用いた。 (生体測定 Biomonitoring  は人間の血液や尿などの試料中の化学物質や代謝物を測定して人間の暴露を評価することである)。この調査は大人とともに子どもの暴露についても含んでいる。この調査は、将来、環境暴露が時間とともにどのように変化していくかを把握することができるよう、毎年行われるようになってきた。

  • EPAは ”子どもの健康のための暴露のクリティカル・ウィンドウズを特定するためのワークショップ” を1999年9月に開催した。このワークショップでは有毒化学物質への暴露のタイミングの重要性、及び暴露の時間が結果にどのように影響を与えるかについて検討された。そのような情報は、子どもがいつ環境中の有毒化学物質の影響に最も感受性が高いかを決定するために貴重なものとなる。
     このワークショップは、一般的成長及びがんとともに、呼吸器系、免疫系、生殖系、神経系、心臓血管系、及び内分泌系に焦点をあてた。ワークショップの成果は 『環境健康展望 2000年6月補遺版 June 2000 supplement to the journal Environmental Health Perspectives 』 に掲載されている。

  • EPAは、2000年7月に子どもの暴露の評価時の行動と身体的な発達的変化を検討するためのワークショップを開催した。このワークショップは、子どもの発達の重要な局面を定義し特徴付けること、及び既存の暴露情報としての制約から小児期の暴露をいかにうまく推定するかということについて焦点をあてた。このワークショップの成果は、EPAが暴露とリスク評価において一貫して使用する人間の生涯における初期段階の最小限必要なデータを定義するのに役に立つ。

■がん

  • EPAは、草稿最終版 『発がん性リスク評価ガイドライン Guidelines for Carcinogenic Risk Assessment』 を完成したが、そこには 『発がん性物質への生涯の初期段階での暴露に起因するがん感受性評価の補足的ガイダンス Supplemental Guidance for Assessing Cancer Susceptibility Resulting from Early-Life Exposure to Carcinogens』 がある。この補足的ガイダンスは、発ガン性物質への暴露が小児期に起きた時に、いかに定量的科学的なデータをリスク評価に利用するかについての調査と手法について述べている。EPAの科学諮問委員会はこの補足的ガイダンスをレビューしており、その草稿版(PDF 235KB)を入手可能である。

  • EPAは 、”小児がんの予防可能な原因” と題する全国会議を1997年9月に開催した。約300人の科学者、政府担当者、関係団体の代表者、その他が参加した。健康専門家が、環境中の有毒物質に対する子どもの特別な脆弱性、親の職業上の暴露に関する調査、小児がんの傾向、及び小児がんの環境的要因の研究に用いる手法、等を含む広範な問題に関する彼等の展望を示した。詳細な研究課題及び会議での科学的プレゼンテーション資料は、 『環境健康展望 1998年 補遺版 June 1998 supplement of the journal Environmental Health Perspectives 』 に掲載されている。この研究課題は知識間のギャップを埋めるための青写真を提供し、それにより小児がん予防の指針を与えることを意図している。

■その他

  • 子どもの健康保護事務所は、 ”世界保健機構(WHO)子どもの環境健康保護タスクフォース  World Health Organization's (WHO) Task Force for the Protection of Children's Environmental Health ” のメンバーである。このタスクフォースの現在及び提案されている活動には次のようなものがある。
     ・子どもの環境健康に関するマニュアルを作成する
     ・各国の活動計画を用意する
     ・特定の脅威に対しアドバイスする
     ・教育資料を作成し配布する
     ・新たに発生した問題に対する研究を促進する
     WHOとの共同作業は、子どもの環境健康を守るための科学的基礎が発展する中で、それらは地球上至る所で必要とされているので、子どもの環境健康を促進する上で貴重な活動である。

     世界保健機構は、2002年3月3日〜7日にタイのバンコクで開催された ”子どもに対する環境的脅威に関する国際会議 : 危険性と脆弱性  International Conference on Environmental Threats to the Health of Children: Hazards and Vulnerability ” を支援した。この会議の目的は、子どもの脆弱性に関する科学的データと研究に目を向けること、現在の子どもの健康状態をいかに改善するか討議することこと、健康、教育及び環境分野における知見を高めること、及び世界中の子どもの環境健康を守るための活動を促進することであった。 (訳注:概要紹介の日本語訳(当研究会))

  • 欧州環境保護局とWHO欧州地域事務所は共同で報告書 『子どもの健康と環境 : 証拠の検証 Children's Health and Environment: A Review of Evidence 』 を作成した。この報告書は自然環境と子どもの健康との関連性に関する入手可能な証拠を概観したものである。それは環境的危険から子どもの健康を守るための研究の必要性と政策上の優先度を特定するものである。

  • 2000年12月にEPAは 『自主的子どもの化学物質評価プログラム Voluntary Children's Chemical Evaluation Program (VCCEP)』 を発表した。これは、国民が特定の化学物質に関する子どもの潜在的健康リスクを理解できるようにすることを目指したものである。(VCCEPは現在、試験的な実施が行われており化学産業界からのボランティアが試験的な実施における検討用にリストされた23種の化学物質のうち20種類について協力している。試験的実施の第一段階は協力を受けた化学物質について進行中である。


化学物質問題市民研究会
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