NIH/米・国立がん研究所 2023年12月13日
小児白血病は母親の妊娠第1期に測定された
PFAS レベルと関連している
/フィンランドの出生コホート研究

ジェニファー K. ルキサス, M.P.P.
情報源: NIH/National Cancer Institute, December 13, 2023
Childhood Leukemia Linked to PFAS Levels
Measured in Mother's First Trimester

By Jennifer K. Loukissas, M.P.P.
https://dceg.cancer.gov/news-events/news/
2023/pfas-childhood-leukemia


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2024年1月29日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/nih/231213_nih_Childhood_
Leukemia_Linked_to_PFAS_Levels_Measured_in_Mothers_First_Trimester.html

 フィンランドでの研究では、妊娠中の女性で測定された特定のペルフルオロアルキル物質及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)の血清中濃度の上昇は、子孫における小児急性リンパ芽球性白血病(childhood acute lymphoblastic leukemia / ALL)のリスクと関連していた。 この研究は、出生前 PFAS 暴露と小児白血病のリスクとの関連を初めて調査したもので、2023年12月13日に国立がん研究所ジャーナルに掲載された。

 職業環境疫学部門(Occupational and Environmental Epidemiology Branch)の研究員であるレナ・R・ジョーンズ博士(Ph.D., M.S.) と主任研究員であるメアリー・H・ウォード博士(Ph.D.)、及び、がん疫学及び遺伝子学部門(Division of Cancer Epidemiology & Genetics /DCEG)とフィンランドの同僚らは、フィンランドの出生コホートの 18〜39歳の女性から採取された妊娠第1期の血液サンプル中の PFAS を測定した。同コホートは、1986 年から 2010 年の間にフィンランドの妊娠の 90% 以上を収集した人口ベースのバイオバンクである。分析は、小児白血病(ALL) 400 症例と 400 対照を対象に実施された。

 PFAS は、広範囲に使用され、環境に残留するため、世界的に懸念されている化学物質のグループである。 人間は主に汚染された食品、飲料水、ハウスダストから暴露される。 最も量の多い 2 つ PFAS、ペルフルオロオクタンスルホン酸 (PFOS) とペルフルオロオクタン酸 (PFOA) は、2000 年代初頭に自主的に生産が段階的に中止されたが、ヒトからは検出され続けている。 出生前及び出生後の PFAS への暴露は、それぞれ臍帯血及び母乳を通じて生じる。

 PFOS の特定の前駆体である N-メチル パーフルオロオクタン スルホンアミド酢酸 (MeFOSAA) のレベルの上昇が、後に小児白血病を発症した子どもたちのすべての妊娠の血清で観察された。同様の観察が、1986 年から 1995 年の間に発生した妊娠に対する PFOS との関連についても観察された。この期間は、PFOS のレベルがその後の年に比べて相対的に高かった、段階的廃止前の期間であった。 PFASへの暴露はどこにでも存在しているものの、フィンランド人女性の PFAS 濃度は米国や欧州の他の一部地域の一般集団で観察される濃度よりも若干低く、このことがこれらの集団における小児白血病のリスクに影響を与える可能性がある。

 小児白血病(ALL)は世界中で最も一般的な小児がんであるが、それでもまれな病気である。 NCI SEER / Surveillance, Epidemiology, and End Results(米国国立がん研究所・監視疫学最終結果)プログラムによると、米国では毎年、子ども 10 万人あたり 4.9 人の症例が発生している。小児白血病の 5 年生存率は約 90% である。 研究者らは、免疫調節異常が小児白血病のリスクに関連しているのではないかと考えている。 PFOS と PFOA は抗体反応を抑制する可能性があるため、一部の PFAS が小児白血病の危険因子である可能性がある。 PFAS に関連する免疫抑制は、動物と子どもを含む人間の研究で観察されている。

 今年11月、国際がん研究機関(IARC)は PFOA を再検討し、その結果、実験動物におけるがんの十分な証拠と暴露されたヒトにおける強力な機構的証拠に基づいて、ヒトに対する発がん性があると分類(グループ 1)した。 PFOA の以前の分類は、精巣がん及び腎臓がんに関する限られたヒトの証拠と限られた動物の発がん性の証拠に基づいて、ヒトに対して発がん性がある可能性があるグループ 2B であった。 PFOS は初めて評価され、グループ 2B に分類された。(訳注1

 著者らは、特に暴露レベルが高い集団において、これらの新たな発見を再現することの重要性を指摘している。

参照
Jones RR... Ward MH. et al. Prenatal maternal serum concentrations of per- and polyfluoroalkyl substances and childhood leukemia among offspring in the Finnish Maternity Cohort. / Nat Cancer Inst 2023.
(ジョーンズRR…ワードMH 他 フィンランドの出生コホートにおける出生前母体血清のパーフルオロアルキル物質及びポリフルオロアルキル物質の濃度と小児白血病 / Nat Cancer Inst 2023


訳注1
 PFOA(パーフルオロオクタン酸)及びPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)に対する国際がん研究機関(IARC)の評価結果に関する Q&A(食品安全委員会 2023年12月5日公開/2023年12月21日更新



化学物質問題市民研究会
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