G8 マイアミ宣言以後5年間の各国の進捗情況
エグゼクティブ・サマリー
1.はじめに

情報源:Five year review of progress since the G8 Declaration / April 2002, Canada
掲載日:2003年10月24日
(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会

Executive Summary
エグゼクティブ・サマリー

 この報告書は、8カ国 (G8) の環境大臣による子どもの環境健康に関する1997年宣言 (マイアミ宣言) の実施状況の概要を、8カ国及び欧州理事会から提出された情報に基づき、取りまとめたものである。それは、リスク評価と基準の設定、子どもの鉛への暴露、微生物的に安全な飲料水、大気汚染、環境タバコ煙 (environmental tobacco smoke ETS)、内分泌かく乱物質 (EDCs) による新たな子どもの健康への脅威、及び地球気候変動が子どもの健康に与える影響など、宣言の中で取り上げられた主要な各論点を検証するものである。
 この報告書はまた、国際的共同研究、他国政府の施策、追加的施策及び科学的研究、及び各国の子どもの環境健康に関する将来計画なども検証している。

 多くの G8 諸国は、子どもの環境健康を守る必要性を考慮して、リスク評価と基準の設定プロセスを最近、改訂した、あるいは改訂中であることが判明した。これには、子ども独特の暴露、生理機能、及び発達における異なる段階での影響の可能性などの考慮が含まれる。
 信頼性あるデータが入手できない場合には、いくつかの国は子どもの健康を守るために、追加的な不確実性係数を導入している。

 1997年宣言の中の鉛に関する問題提起については下記のような著しい進展があった。
  • 子どもの鉛血中濃度は著しく減少した
  • 1998年の鉛リスク減少に関する経済協力開発機構(OECD)宣言が実施されつつある
  • 加鉛ガソリンの廃止など子どもの鉛暴露を減少するための措置がとられた
  • 社会の周知のためのキャンペーンが実施された
  • 監視計画が企画、実施された
 G8 諸国の、全てではないが、多くの国々は、飲料水中の微生物の危険性に関する基準又は指針を持っている。もっとも、それらは、規制、基準、あるいは指針を生み出したリスク評価プロセスの中で明示的に子どもの環境健康を考慮しているものではない。
 いくつかの G8 諸国の中には、発展途上国に対する微生物的に安全な飲料水のための支援計画を実施している国もある。

 いくつかの G8 諸国は1997年以来、ある汚染物質について、大気の品質を改善したと報告している。他の諸国は様々な生産分野、及び運輸分野の大気排出を抑制するための措置を実施したと述べている。子どもの環境健康に関連する室内空気の品質に関する措置について述べた国もある。

 多くの G8 諸国は現在、家庭及び公共の場所における子どものタバコの煙 (ETS) への暴露を減少するための措置をとっている。これらの措置には、すでに喫煙している大人や若者に対する禁煙の奨励、若者が喫煙を始めるの防止する努力、そして、非喫煙者の ETS への暴露を減少するための自主的及び法的措置が含まれる。

 内分泌かく乱物質 (EDCs) に関する研究の国際的目録が完成し、国際的な科学評価がいくつかの G8 諸国の科学者の下で実施されている。多くの G8諸国 が EDCs に関する広範な研究計画を持っている。

 いくつかの G8 諸国は地球気候変動が子どもの健康に及ぼす影響に目を向けた行動を起こしている。

 G8 諸国はまた、子どもの環境健康に関するその他の政策、計画、科学的研究、及び監視・観察を実施している。提供された情報の概要によれば、各国は、これらの点に関し国際的な共同作業を実施する仕組みを展開しつつ、各国が独自の必要性と実情に合わせて対応している。

 ほとんどの国々は子どもの環境健康に関し、現在の施策を継続することから革新的な新たな企画を実施することまで、幅広い将来計画を持っている。
 これらの計画の特性と範囲を見れば、この問題が重要で優先度の高い行動が要求されるものてして認識されていることがわかる。

 環境の危険から子どもの健康を守るための各国及び国際的な努力はいくつかの重要な利益をもたらした。最も重要な結果は子どもの環境への暴露とリスクが減少しているということである。恐らく、最もはっきりしている例は鉛であり、加鉛ガソリンの廃止、及びその他の政府の施策により、多くの G8 諸国の大気中の鉛濃度及び子どもの血中鉛濃度に劇的な効果を及ぼした。
 その他の利益としては、子どもの環境健康を守ることの必要性、及びこの問題についての複数専門領域及び多分野の協力体制を作り上げることの重要性について各国及び国際的な認識が高まったということである。

 結論として、1997年の宣言以来、国際組織とともに多くの国々が環境の危険から子どもの健康をまもることの必要性についてより強く関心を持つようになったということである。この宣言は環境の危険から子どもの健康を守ることの必要性についての各国及び国際的な認識を高めるのに役立った。
 全体として、各国は子どもの環境健康に目を向けて前進しているが、まだ、なすべきことが多くあり、各国はこの問題に関する進め方についてさらに評価する必要がある。


1. Introduction
1. はじめに

 1997年のマイアミでの会議において、8か国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、イギリス、アメリカ、及び欧州委員会 EC )の環境大臣は、子どもの環境健康は8カ国が共有する重要事項であると表明した。この会議で採択された、法的には非拘束的な子どもの環境健康に関するマイアミ宣言は、環境の脅威から子どもの健康を守るための国内及び国際的な活動の枠組みの基礎を用意するものである。
 また、特定の実施活動案が会議で採択された。宣言と特定の実施活動案は Appendix B (訳注:子供の環境保健に関する8か国の環境リーダーの宣言書(1997年)(環境省仮訳) ) に示される。

 2002年は、子どもの環境健康に関する G8 宣言の5周年にあたる。2001年のイタリア、トリエステで開催された G8 環境大臣会議で、カナダは2002年の G8 環境大臣会議の主催国となり、各国のマイアミ宣言の実施状況及び今後の現実的な実施計画を報告することとなった。

 この報告書は、1997年の子どもの環境健康に関する G8 宣言の実施状況を、G8 各国の代表からの情報に基づいて取りまとめたものであり(注1)、宣言中おける主要な各項目についてのレビュー、主要なコミットメントの概観と各国の実施状況の概要からなる。
 各国の活動内容は概要を説明的に示したものであり、各国が実施している広範な関連活動の全てを記述しているわけではないということに留意する必要がある。
 項目毎に、子どもの環境健康に関する国際間の共同活動、他の政府活動計画、追加的活動と科学的研究、及び将来計画を含む実施計画の章を設けた。
 Appendix A は、各国からの情報に基づいて作成した各国毎の1997年の子どもの環境健康に関する G8 宣言の実施状況を項目毎にまとめたものである。

注1:
各国の情報は、標準化したフォームを G8 各国の環境部門に送付し、内容を記載して送り返すよう依頼した。ロシアからは回答がなかった。





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