EHP 2009年1月号 子どもの健康
全米子ども調査 募集開始

情報源:Environmental Health Perspectives Volume 117, Number 1, January 2009
Children's Health
National Children's Study Begins Recruitment http://www.ehponline.org/docs/2009/117-1/forum.html#nati

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年1月2日


 計画が立てられた後ほとんど10年経過して、全米子ども調査は最終的にようやく立ち上がった。科学者らはこの20年にわたる全国調査が今日の子どもの健康への最も重要な脅威に関するなぞを解明することを期待している。

 ”全米子ども調査は、早産を減らすことを難しくしてる生物学的、遺伝的、環境的要素を我々が理解するのに役立つであろう”とユニス・ケネディ・シュライバー国立子ども健康とヒト発達研究所(NICHD)の医学オフィサーで調査ディレクターのピーター・シェイドは述べている。”それは我々が自閉症、学習障害、ぜん息、そして統合失調症さえもその原因についてもっと理解するのに役に立つ”。

 胎児と幼児が特に環境中の有害物質に脆弱であり、また生命初期の暴露影響は何年も後にならないと現れないかもしれないということを示す証拠が増大した1990年代に、調査の機運ができた。これらのリスクを評価するために、1998年の”子どもたちに対する環境健康リスク及び安全リスクに関する大統領タスクフォース”は全国長期調査を提案した。議会は2000年にこの調査を承認し、2007会計年度に実施開始のために6,900万ドル(約69億円)の資金が割り当てられた。さらに2008会計年度に1億1,090万ドル(約110億円)が追加された。

 研究者らは、食事、精神的ストレス、妊娠問題、及び化学物質暴露など母親の妊娠に関するデータを収集する。最終的には10万人の子どもたちについて誕生から21歳まで追跡するという前例のない調査が行われる。研究者らは、子どもたちの物理的、化学的、心理的、及び生物学的な環境の影響を検証する。彼らはまた、対象者の環境に対する脆弱性又は耐性における遺伝子の役割も調査するであろう。対象者は民族的、経済的、地理的、及び人種的な多様性をもった集団を構成するよう全国105地域で登録される。

 調査登録は2009年1月から、クインーズ、ニューヨーク、デュプリンカウンティー、ノースカロライナで開始され、調査担当者が妊娠している又は妊娠予定の女性の家の戸口まで出かけて募集する。4月には、募集はペンシルベニア、サウスダコタ、ミネソタ、カリフォルニア、ユタ、及びウィスコンシンにまで拡大する。年末までに1,700人の女性を登録させることを希望している。

 シェイドと同僚らは今年の応募を2010年における全国的な展開の前に調査を微調整するためのパイロットとして見ているが、これは全米科学アカデミーによる調査レビューを反映した勧告である。”我々は、20年間の長丁場を我々についてきてくれるよう女性たちをどのように励ますことができるかを学ぶであろう”。

 この調査に参加している連邦機関には、ユニス・ケネディ・シュライバー国立子ども健康とヒト発達研究所(NICHD)、国立環境健康科学研究所(NIEHS)、米環境保護庁(EPA)、及び疾病管理予防センター(CDC)が含まれる。大学と病院は調査センターとして対象者を募集し、インタビューし、空気、水、ほこり、その他の環境サンプル、及び血液、尿、髪の毛、つめなどの生物学的サンプルを収集する。調査ディレクターは、2016年には10万人の子どもの参加という目標を満たすことを期待している。

 この調査は20年以上にわたるが、統計的に有意なデータは2012年までに入手することが期待されている。これらの初期データは、”母親と子どもの健康に関連する要素の理解に役立つであろう”と国立環境健康科学研究所(NIEHS)の管理者であり疫学者であるキンバリー・グレイは述べている。”我々は妊娠に関わる問題と出生異常を減らすことについてもっと多くのことを学ぶであろう”。

 全米子ども調査ののリーダーたちは、疾病管理予防センター(CDC)の全米健康栄養調査(NHANES)のデータが現在多くの研究者らに使用されているの同じやり方で、独立の研究者らが彼ら自身の調査のためにこのデータを使用することを期待している。”それは刺激的な調査である。その価値は研究界にとって途方もなく大きい”とグレイは述べている。

シンシア・ウアッシャム(Cynthia Washam)

訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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