EHN 2023年9月27日
黒人、ヒスパニック系、貧しい子どもたちは
汚染にさらされやすく、最終的には脳にダメージを受ける:研究

研究者らは環境の不公平を指摘している
By EHN Staff
情報源:Environmental Health News, September 27, 2023
Black, Hispanic and poor children are more exposed to
pollution that ends up harming their brains: Study

Researchers point to environmental injustice.
By EHN Staff
https://www.ehn.org/children-pollution-brain-development-2665741800.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
掲載日:2023年10月11日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/ehn/230927_EHN_
Black_Hispanic_and_poor_children_are_more_exposed_to_pollution.html

 黒人、ヒスパニック系、低所得層の子どもたちは、大気汚染や鉛などの有害物質により多く暴露しており、この様々な暴露が自閉症、より低い IQスコア、より悪い記憶力のに関連していることが、200以上の研究を対象とした新たな科学的レビューによって明らかになった。

 今日『Environment Health Perspectives』誌に掲載されたこのレビューでは、科学者らは人種や所得が汚染暴露にどのように関連しているかを研究しており、有色人種や低所得世帯の人々の暴露がより多いことを繰り返し発見しているが、人種や所得レベルがこれらの暴露とどのように相互作用しているかを調査することはしばしば出来ていないことが判明した。 こうした相互作用を実際に調査すると、貧しい子どもたちや有色人種の子どもたちは、学習、注意、行動に問題を経験する可能性が高いことがわかる。

 ”差別的な慣行や政策の結果、低所得の家族や有色人種の家族は、現在も歴史的にも、生活し、働き、遊び、祈り、学ぶ場所で、本人たちの知識や同意なしに化学物質に不釣り合いにさらされている”と共同筆頭著者のデボン・C は述べた。 プロジェクト TENDR のメンバーでメリーランド大学公衆衛生大学院准教授のペイン・スタージェスは声明でこう述べた。 ”彼らの近隣地域は、工場、化学工場、スーパーファンドの敷地、高速道路、車両交通量の多い場所、または農薬が散布されている農地の近くに位置している可能性が高い。”

 子どもたちを有害物質から守ることに焦点を当てた50人以上の主要な科学者、医療専門家、擁護者からなる連合であるプロジェクトTENDR のメンバーである研究者らは、1974年から2022年まで、鉛、粒子状物質、有機リン系殺虫剤、PBDE 難燃剤、PCB、フタル酸エステル類を含む、脳に害を与える有害物質への子どもたちの暴露を調査した218件の研究を調べた。

 彼らは、一般集団と比較して次のことを発見した:
  • 黒人の子どもたちは鉛への暴露が多かった
  • 貧困層と非白人居住区では周囲の大気汚染が高かった
  • 黒人とヒスパニック系の子どもたちは有機リン系殺虫剤への暴露量が多かった。
  • 黒人とヒスパニック系の母親は体内のフタル酸エステル濃度が高かった。
 いくつかの主要な影響:
  • 大気汚染がひどく、貧しい地域に住んでいる赤ちゃんは、自閉症と診断され、IQスコアが低い可能性が高い
  • 鉛に暴露され、低所得世帯の子どもたちは認知機能が悪化している
  • 出生前ストレスとその後の大気汚染にさらされた黒人とヒスパニック系の少年らの記憶力スコアは悪い
 ”低所得地域社会と有色人種の地域社会に過度の影響を与えている汚染に対処するには、より厳格な環境基準が必要である”と共同筆頭著者でプロジェクト TENDR のメンバーであるバスティア大学助産学部助教のターニャ・ケメット・タイウォは声明で述べた。 ”しかし、そもそも有害な状況を生み出す不当な制度や社会政策を改善する方法を見つけることも同様に重要である。”

 著者らは、子どもたちの有害物質への暴露による下流への影響を追跡するさらなる研究、特に先住民とアジア系アメリカ人の子どもたちに焦点を当てたさらなる研究、子どもの脳を保護するための連邦政府のさらなる行動を求めている。

 食品医薬品局と環境保護庁は”神経毒性化学物質から家族を守るために、食品と接触する材料からフタル酸エステル類を禁止すること、住宅環境、航空燃料、及び子どもたちの食品から鉛を排除すること、有機リン系殺虫剤の使用をやめること、そして。子どもたちの脳の発達を保護するために大気汚染基準を設定することにより、後ではなく今すぐに行動できる”と EPA で12年間政策専門家を務めたペイン・スタージェス博士は述べた。

 研究の全文はこちらをご覧ください。



化学物質問題市民研究会
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