EHN 2014年3月20日
ふたつのホルモンかく乱化学物質が
自閉症的行動に関連する


情報源:Environmental Health News, March 20, 2014
Two hormone-disrupting chemicals linked to more autistic behaviors
By Lindsey Konkel
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2014/mar/autism/

オリジナル:Braun JM, AE Kalkbrenner, AC Just, K Yolton, AM Calafat, A Sjodin, R Hauser, GM Webster, A Chen, BP Lanphear. 2014. Gestational exposure to endocrine-disrupting chemicals and reciprocal social, repetitive, and stereotypic behaviors in 4- and 5-year-old children: The HOME Study. Environmental Health Perspectives.
http://dx.doi.org/10.1289/ehp.1307261

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年3月23日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/ehn/140320_EHN_Two_EDCs_linked_autistic_behaviors.html

 ある研究で、難燃剤及び禁止されている農薬中のある化学物質に子どもが胎内でより高いレベルで暴露すると、わずかに強く自閉症的行動を示した。

 以前の研究は、子どもの脳発達の変化を、母親のホルモンンかく乱環境化学物質への暴露に関連付けていた。しかし、これらの研究の中でそれらが自閉症に関連するかどうか特に検討したものはほとんどなかった。

 少年は少女より4倍自閉症と診断され、またいくつかのホルモンは脳発達を制御することが知られているので、科学者らはそのホルモンが自閉症おにある役割を果たしているのではないかと疑っている。

 その新たな研究で研究者らは、オハイオ州のシンシナチで175人の妊婦から採取した尿と血液のサンプルをテストした。ジャーナルEnvironmental Health Perspectives にオンラインで発表されたピアレビューされた研究によれば、妊婦らは平均して44のホルモンかく乱性を疑われる化学物質を尿と血液中に持っていた。

 彼女らの子どもたちが4歳又は5歳になった時、母親らは、例えば、子どもたちが話しかけられた時にどのくらいの頻度で目をあわせるか、又は子どもたちがどのくらいよく他の子どもたちと遊ぶかというような要素についてその行動の程度を質問された。程度が高いほど自閉症的行動が高いことを意味する。

 臭化難燃剤 PBDE-28 のレベルが最も高い母親らの子どもたちは、最も低いレベルの母親らの子どもたちより平均して2.5ポイント高い得点であった。禁止されている農薬クロルデンのひとつの成分であるトランス-ノナクロル(trans-nonachlor)の最も高いレベルを有する母親たちの子どもらは、平均4.1ポイント得点が高かった。

 この二つの化学物質に関連する自閉症様行動の変化はわずかであり、この研究はそれらが自閉症的行動に結びついていることを証明したわけではない。

 ほとんどの子どもたちは30ポイントから90ポイントの範囲で得点したが、60ポイント以上の子どもたちは社会的行動に顕著な欠陥を示した。子どもたちは平均得点は51ポイントであったが、約12%にあたる12人の子どもたちは60ポイント以上であった。

 教師と親は、自閉症に関連した行動の程度を決定するためにこの尺度をよく使用するが、高ポイントであることがその子どもが自閉症であることを必ずしも意味しない。

 ”この尺度上の行動のあるものは、ADHD(注意力欠陥多動症)のような他の行動障害と一貫性があり、したがって高い得点の子どもたちのあるものは自閉症ではないかもしれない”と、ロードアイランド州のブラウン大学公衆衛生校の疫学者で、この新たな研究の主著者であるジョー・ブラウンは述べた。

 アメリカ疾病予防管理センターは、全米では概略88人に1人の子どもが自閉症スペクトラム(ASD)であると診断されていると推定している。

 テストされた他の化学物質は、尺度のどちらの方向でも1.5ポイント以下の無視できる変化をもたらしたが、他のPBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)及びPCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む少数の化学物質は、わずかに自閉症的行動に関連しているように見えた。

 ”化学物質は有害であるとだけ考えるのは単純である。ある健康評価項目に対しては有害かもしれながいが、他の項目に対しては保護的であるかもしれない”と、ブラウンは述べた。

 PCB類も臭化難燃剤も、これまでのヒトと動物研究で脳の発達を損なうことに関連するとされていた。

 農薬クロルデンは環境中に蓄積し、ヒト発がん性があるので、1980年代に禁止されていたが、その成分であるトランス-ノナクロルの神経毒性は比較的研究されていないと研究者らは書いている。

 自閉症行動が見られる他の化学物質 PBDE-28 は、以前から幼児の甲状腺ホルモンのかく乱と関係づけられていたが、それらは脳の発達にとって重要なホルモンである。PBDE-28 は、アメリカでは2004年に禁止されるまで、家具のクッション中の難燃剤の成分として使用されていた。

 研究者らは、脳の発達を害する遺伝子のような要素や、鉛のような汚染物質の考慮はしなかった。 また出生後の暴露や、その他の要素を検証しなかった。

 また、テストで高い点を得た子どもたちが実際に自閉症であったのか、あるいは子どもたちが自閉症と矛盾しないより多くの行動を持っているとして母親が子どもたちをそのように採点しただけなのか不明である。

 科学者らは、この研究は自閉症のための化学的リスク要素をはっきりと特定することはできないが、その結果はさらなる調査のためにもっと多くの研究が必要であると示唆している。

 アメリカにおける自閉症発症率は、2002年から2012年の間に78%上昇した。多くの専門家らは、環境的要素が遺伝的要素と共にその増加に寄与しているのではないかと疑っている。昨年発表されたある研究は、自閉症と交通排気ガスによる大気汚染との関係を見出した。

 この新たな研究は、シンチナチ大学、ハーバード大学公衆衛生校、ウィスコンシン−ミルウォーキー大学、サイモン・フレーザ大学、BC 子どもと女性病院、シンシナチ子ども病院医療センター、ブラウン大学、及び疾病予防管理センターの科学者らにより共同して行われた。



化学物質問題市民研究会
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