EHN 2010年6月14
胎児期のPHAsへの曝露 5歳時の低認識力と関連

情報源:Environmental Health News, June 14, 2010
Prenatal PAHs linked to lower cognition at age fives
Synopsis by Patrick H. Ryan
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/
prenatal-pahs-linked-to-lower-cognition-at-age-five/


オリジナル:Edwards, SC, W Jedrychowski, M Butscher, D Camann, A Kieltyka,
E Mroz, E Flak, Z Li, S Wang, V Rauh and F Perera.
Prenatal exposure to airborne polycyclic aromatic hydrocarbons and
children's intelligence at age 5 in a prospective cohort study in Poland
Environmental Health Perspectives
http://dx.doi.org/10.1289/ehp.0901070

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年6月27日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/ehn/100614_ehn_Prenatal_PAHs.html


 子どもの認識力の発達は胎内での高レベルの大気汚染物質に曝露することによって影響を受けるかもしれない。

 ポーランドの子どもたちの調査によれば、幼稚園年齢の子どもの知能の遅れは、多環芳香族炭化水素(PAHs)(訳注1)と呼ばれる普通の大気汚染物質への出生前の曝露の結果かもしれない。

 研究者らは、母親が妊娠時にPAHsに高い曝露を受けると、認識能力を測定するテストでIQが3ポイント以上低下するという結果を報告した。

 この結果は、どこにでもある大気汚染物質への胎児期の曝露は有害であり、子どもの神経系発達に潜在的に長期の影響を及ぼすことを示唆している。この研究は、小児期の認識力をあるPAHsへの胎内曝露と比較した2番目の研究である。ニューヨークシティにおける母親と子どものペアーの同様の研究が、同様の結果を示している。

 PAHsは、ガソリン車やディーゼル車からの排気、石炭燃焼、家庭暖房、調理用燃料、たばこの煙などから大気中に排出される。

 ベンゾ(a)ピレン(訳注2)はPAHのひとつのタイプである。動物とヒトの研究は、この化学物質が神経系発達、知能、身体成長に影響を及ぼすことができることを示している。発がん性がることも知られている。

 胎児や小さな子どもは、この時期に中枢神経系や脳が急速に成長し発達するするので、これら及び鉛などのその他の環境有毒物質の有害影響に対して、より脆弱である。

 ポーランドに住む妊娠中で喫煙しない女性がこの研究に参加した。女性らは、妊娠期間(trimester)の第2期又は第3期の2日間、大気サンプリング用バックパックを背負った。大気サンプルは、PHAsへの個人的曝露を評価するために8種類のPHAsが分析された。母親とへその緒からの血液サンプルが出産時に採取され、女性は質問票に健康、家庭/職場の環境、及び個人情報を記入した。この研究対象のうち、214人の子どもたちは、絵とパターンに基づく標準化されたテストにより、非言語系推理能力及び知能の調査が行なわれた。

 ポーランドの女性の平均曝露レベルは39.5ナノグラム/m3であった。その曝露は、ニューヨークシティにおける同様なテストに参加した女性の平均値3.48 ng/m3の約10倍であった。
 高いレベルのPAHsに出生前に曝露した子どもたちは、出生前のたばこの煙への曝露、子どもの性別、及び母親の教育レベルを考慮した後の知能テストスコアが有意に低かった。
 最も曝露が大きかった子どもたちは知能指数(IQ)が3点以上低下していた。IQのわずかな変化でも、学業、生涯の学習、及び社会活動に影響を及ぼす。


訳注1
多環芳香族炭化水素:ウィキペディア

訳注2
ベンゾピレン:ウィキペディア



化学物質問題市民研究会
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