汚染された学校:見えない脅威 見える行動
(目次及びエグゼクティブ・サマリー)

(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
情報源:Poisoned Schools: Invisible Threats, Visible Actions
Child Proofing Our Communities Campaign
http://www.childproofing.org/PoisonSchoolsfinalForWeb2-27-01.pdf
掲載日:2003年8月31日


 この報告書は、”Child Proofing Our Communities 汚染された学校キャンペーン”のメンバー組織の協力で作成された。このキャンペーンは、子どもを学校、家庭、そして地域における環境健康に対する危険への暴露から守るための、地域に根ざした全国にネットワークキャンペーンである。 CHILD PROOFING OUR COMMUNITIES CAMPAIGN

 このキャンペーンは、ロックフェラー基金、アメリカ環境財団、イトリソン財団、ニューヨーク・コミュニティ・トラスト、ウインスロー財団、ウォーレス遺伝子基金からの基金で運営されている。


 目次


エグゼクティブ・サマリー3
第1章 はじめに 汚染された学校:見えない脅威 見える行動7
  Child Proofing Our Communities キャンペーン7
第2章 子どもの特別な脆弱性について9
  子どもの病気発生率の増加9
  環境化学物質に対し何が子どもを特別に脆弱にするのか?11
第3章 我々の学校の情況13
  学校の敷地について増加する問題点14
  学校における殺虫剤が軽視される危険性14
  規制システムの失敗と科学15
  学校理事会の説明責任16
  親は知らされていない17
第4章 汚染された学校:汚染された土地の建物19
  新設学校の立地条件19
  汚染された学校のケース・スタディ20
第5章 保護指針なく建設される学校新設ラッシュ25
  新設学校の立地モデル:カリフォルニアのアプローチ26
第6章 学校用地の取得及び既設校のためのガイダンス29
  学校用地取得のための勧告29
  用地評価のための4段階プロセス29
  既設校のための勧告33
第7章 汚染された学校:殺虫剤35
  軽視されている殺虫剤の危険性35
  学校での農薬汚染のケース・スタディ37
  公の通知39
  完全な情報開示:親は知る権利がある41
第8章 学校統合害虫対策43
  成功した学校統合害虫対策(IPM)プログラム43
  連邦及び州の規制44
第9章 ゴールド・スタンダード学校統合害虫対策の方針47
  ゴールド・スタンダード IPM 政策の推奨と原則47
  学校統合害虫対策の戦略適用53
  ゴールド・スタンダード IPM 政策の10段階55
参照64
資料69
補遺A 学校用地調査 サンプル74
補遺B 害虫対策調査 サンプル76


P.3
 エグゼクティブ・サマリー

見えない脅威
我々の学校の情況


 国もアメリカの公立学校のお粗末な情況に目を向けるようになってきた。2000年5月、クリントン大統領は、学校の修繕と建設の必要性に光をあてつつ、”学校修繕ツアー”で全国を回った。学校の建物は40年経過すると急速に老朽化し始める。アメリカの公立学校の平均築年数は42年で、その1/3は大幅な修繕叉は改築が必要である。

学校施設:アメリカの学校の情況
 アメリカ政府会計局は、「法は子どもたちを学校に行くよう求めるが、学校によっては建物が安全ではなく、子どもたちの健康に有害ですらある」と述べている。60%以上の学校が、水道配管の破損などの大きな修繕箇所を少なくとも一つは持っており、約半分の学校が換気設備、暖房あるいは照明などの環境的不具合を少なくとも一つは持っている。

 『アメリカ学校大学第29回年間維持と運用コスト調査』によれば、学区は現在、その建物の維持と運用のために多額のコストがかかっている。しかし、全体予算について言えば、維持と運用にあてられる予算はわずかである。
 1999-00学校年度では、全国の学区は維持と運用のために実際に出費したコストのわずか9%強の予算しか割り当てられておらず、3期続けての予算額減少である。

 生徒数の増加がこの問題をさらに悪化させている。公立の小中学校の入学児童生徒数は1999年から2006年の間に約100万人増加し、最高4,440万人になることが予想されている。従って、この大量増加する児童生徒を収容するためには、今後数年間にさらに3,000近くの学校を新設する必要がある。
 議会は地域が6,000の学校を建設/改修するのを支援するために数十億ドル(数千億円)を確保する”学校新設及び近代化法”の立法化を約束した。残念ながら超党派による措置は2000年の議会では立法化できなかったが、2001年に新たな法案として立法化させるための努力が払われている。
 ”緊急に学校を修理することについての動議”は通過し、12億ドルが政府から、屋根、水道配管、電気系統の緊急修理及び改築のために、出されることとなった。

見えない脅威
危険な土地に建てられる学校


 驚くべきことに、学区に対し新設校を建設すべき場所を指示するガイドラインが存在しない。全米の親たちと地域は、埋立地跡、荒地、叉は汚染が激しい工場の近くに学校を建設しようとする業者がいることを知って衝撃を受けた。予算を圧縮しようとする学校区は、しばしば、素性のわからない汚染された用地の寄付、最も安い土地を探すこと、叉は環境評価の観点から質の悪い業者の採用など、全て子どもたちにとって大きなリスクとなる誘惑に脅かされた。
 子どもたちが既に不公平にぜん息、鉛汚染、発達障害の被害を受けているような貧しい有色人種の地域では、しばしば、このワナにはまった。

見えない脅威
殺虫剤で危険に曝される学校


 我々は、子どもたちの全ての年代で、落ち着きがなく、学習が遅れ、乱暴な行動をする子どもたちが増加している事態に直面している。多くの科学的証拠がこれらの増加の原因として農薬が関係あることを示している。報告書 『危険な方法:子どもの発達に与える有毒物質の脅威 In Harm's Way:Toxic Threats to Child Development』 は、通常使われている農薬と多動症や脳障害との関連性に関する最新の証拠を取り纏めている。また、この報告書には、典型的な農業が地下水を汚染することで、農薬が人間の免疫系、ホルモン系、そして脳神経系に与える悪影響との関連性についての研究も含まれている。

 悲劇的なことは、学校では規則的にこれらの有毒物質が散布されているのに、多くの親たちはその危険性についの知識がないということである。親たちは子どもたちが曝される化学物質によるリスクについて知る権利があり、そのリスクに対する代替案を要求する権利がある。危険について知った親は行動を起こそうと立ち上がるが、それは、子どもたちを守るための立法を阻止しようとする農薬業界のロビーストたちが最も恐れることである。

見える行動
全ての子どもたちに安全で健康な学習環境を


 我々は重要な分岐点にいる。我々の子どもたちを農薬暴露から守ることのできる法律が危うい。非常に多くの学校が、土壌中、水中、そして大気中の有毒汚染物質への暴露から子どもたちを守るガイドラインもなしに、汚染された土地に建設されている。
 行動が遅れると、学校で子どもたちを有毒物質にさらに暴露させることになる。我々は、これ以上子どもたちが不必要に危険に曝される前に、今すぐ、行動を起さなくてはならない。

The Child Proofing Our Communities:汚染された学校キャンペーンは、国中の地域での努力を結集し、子どもたちの健康をおびやかす有毒物質の脅威についての知識を広め、そして子どもたちを最も守る予防的措置を促進することを目指している。

勧告

 この報告書では学校を取りまく大気及び土壌の化学物質汚染から、また学校の中及び校庭での有毒殺虫剤への暴露から、子どもたちを守るための特定の勧告を提案している。
 アメリカの子どもたちが健康に育ち、化学物質により学習環境を脅かされることなく学べるようにするためには、これらの勧告に基づいて行動を起さなくてはならない。

学校用地に関する勧告

  • 学校用地取得のプロセスは、親、適切な年齢の生徒、教師、及び地域のメンバーが参加する仕組みとするべきである。

  • 新たな建設用地を決める場合には、予防的アプローチがとられることを確実にするために、完全な土地の履歴、実地訪問、周囲の潜在的な汚染源の調査、及び子どもたちへの潜在的な健康リスクの検証と評価が、どのような用地検討を行なう場合にも必要である。もし、何か懸念があれば他の土地を選択すべきである。

  • どのようなことがあっても、学校を危険な廃棄物、ごみ、叉はその他の埋め立て用地に建設してはならない。

  • 他の土地が入手できない場合には、学校建設予定地は子どもを守るための基準を満たすよう浄化されるべきである。

  • 埋立地叉は汚染発生施設のような汚染源は、学校叉は Head Start 施設から1,000フィート(約300メートル)以内に建設されてはならない。また、化学物質を排出する産業用叉はその他の施設は学校から2マイル(約3,2キロメートル)以内に建設してはならない。

学校統合害虫対策(IPM)プログラムについての勧告

  • 学校統合害虫対策(IPM)委員会、叉は他の公式な団体に、親、適切な年齢の生徒、教師、及び地域のメンバーが参加できる仕組みとするべきである。

  • まず、予防的なそして代替的な害虫対策方法が用いられるべきである。それには、害虫のすみかを除去するための衛生施設に対する措置、害虫が入り込まないようにするための構造的な措置、そして害虫の発生を抑える防護措置などが含まれる。

  • もし、害虫が健康叉は安全を脅かすことが確認されたなら最小の有毒性を持つ殺虫剤のみ使うこととする。決して審美的理由からは使用しない。

  • もし、殺虫剤を使用する場合には、入手できる最も毒性の少ないものとし、その使用は厳密に制限されるべきである。発がん性、生殖障害、神経系障害、ホルモン系かく乱、免疫障害、叉は急性中毒を引き起こすものは、決して使用してはならない。

  • もし、最小の有毒性殺虫剤が使用される場合には、親、生徒、及び教師は事前に書面で告知されなくてはならない。告知には、何の殺虫剤が使用されるか、暴露による健康影響、業者との契約内容、なぜ殺虫剤を使用する必要があるかの理由、そして代替案を要求する権利があること、を示さなくてはならない。

 殺虫剤の使用と学校の用地の問題は、我々の学校における多くの環境健康問題の中の単なる二つであるに過ぎない。その他に例えば、換気、空気汚染、有毒な学校用製品、改修、維持、衛生設備の問題などがある。
 全米の様々な団体がこれらの問題に一生懸命取り組んでいる。我々は引き続き ”Child Proofing Our Communities:汚染された学校キャンペーン” を支援し、全ての子どもたちのために、より健康な家庭、学校、そして地域を作るための戦略とツールを開発するために、ともに活動していくことを約束する。

(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会)



化学物質問題市民研究会
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