マウントサイナイ子ども環境健康センター(CEHC)
2012年4月25日 プレスリリース
自閉症と学習障害を引き起こすことが疑われる
上位10有害化学物質のリストを発表


情報源:Mount Sinai CEHC, April 25, 2012
Mount Sinai Children's Environmental Health Center
Publishes a List of the Top Ten Toxic Chemicals Suspected
to Cause Autism and Learning Disabilities
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2012/01/
http://www.mountsinai.org/patient-care/service-areas/children/areas-of-care/childrens-environmental-health-center/cehc-in-the-news/news/mount-sinai-childrens-environmental-health-center-publishes-a-list-of-the-top-ten-toxic-chemicals-suspected-to-cause-autism-and-learning-disabilities


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年5月9日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/cehc/120425_CEHC_Top_Ten_Toxic_Chemicals.html


【2012年4月25日 ニューヨーク】本日、権威ある「nvironmental Health Perspectives」誌に発表された論説は、アメリカの子どもたちの自閉症とその他の神経発達障害の可能性ある環境要因を特定するための研究を増やすことを求め、これらの疾患に大きく寄与していると考えられるものを含んで10種の目標化学物質のリストを発表した。

 フィリップ・ランドリガン博士(MD, MSc):子どもの環境健康分野の世界的に著名な指導者、マウントサイナイ医科大学子ども環境健康センター(CEHC)ディレクター、論説 『自閉症と神経発達の環境的要因を見つけるための研究戦略』(訳注1) 共同著者、ルーカル・ランバーティニ博士(PhD, MPH, MSc):マウントサイナイ医科大学予防医学助教授、同論説共同著者、リンダ・バーンバウム:国立環境健康科学ディレクター、同論説共同著者

 同論説は、有害化学物質と自閉症との関連を示唆する他の4つの論文と共に発表された。その論説と論文は2010年12月にCEHCにより主催された会議で最初に発表されたものである。

 国立科学アカデミーは、自閉症スペクトラム障害(ASD)(訳注2)や注意欠陥多動症(ADHD)(訳注3)のような、子ども達の全ての神経行動障害の3%が、環境中の有害化学物質への曝露によって引き起こされ、他の25%は環境的要因と遺伝子の相互作用によって引き起こされるということを報告している。しかし、正確な環境要因はまだ分かっていない。遺伝子研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)と他のある神経発達障害は強い遺伝的要素を持つことを示しているが、多くの人は環境要因もまたある役割を果たしているかもしれないと信じており、マウントサイナイ医科大学は、アメリカで毎年生まれる400万人の子どもたちのうち40万〜60万人に影響を及ぼしているという状況の中で、これらの有害物質の役割を理解するための取り組みを行なっている。

 ”広範に使用されている多くの化学物質は潜在的な毒性についての最小の評価すらなされておらず、これは非常に懸念されることである”とランドリガン博士は述べている。”神経発達障害の環境要因の知識は、それらは防ぐことができる可能性があるのだから、非常に重要である”。

 子ども環境健康センター(CEHC)は、潜在的に防ぐことができる環境要因を見つけるための研究戦略を導くために、自閉症と学習障害(訳注4)に寄与することが疑われている消費者製品中に見出される10種類の化学物質のリストを作成した。上位10種の化学物質は次のようなものである。

 1. 鉛
 2. 水銀
 3. PCBs
 4. 有機リン系農薬
 5. 有機塩素系農薬
 6. 内分泌かく乱物質
 7. 自動車排気ガス
 8. 多環芳香族炭化水素
 9. 臭素系難燃剤
 10. 過フッ素化合物

 同論説に加えて、他の4つの論文もまた、アメリカの子どもたちの自閉症の可能性ある環境要因を特定するための研究を強化するよう求めている。ミルウォーキーのウイスコンシン大学の研究チームにより書かれた最初の論文は、妊娠中の喫煙をとアスペルガー症候群(訳注5)、及び高機能自閉症(High Functioning Autism)(訳注6)と関連付ける予備的な証拠を発見した。カリフォルニア大学デービス校の研究者等によって書かれた二つの論文は、PCB類が初期の脳発達を阻害することを示している。最後の論文も同じくカリフォルニア大学デービス校の研究チームによって書かれたもので、農薬曝露と自閉症の関連をさらに探求している。

 マウントサイナイ子ども環境健康センター(CEHC)についてもっと知るためには、どうぞ www.cehcenter.org. をご覧ください。

マウントサイナイ医療センターについて

 マウントサイナイ医療センターは、マウントサイナイ病院とマウントサイナイ医科大学の両方を含む。1968年に創立されたマウントサイナイ医科大学はアメリカにおける一流医科大学のひとつである。同医科大学は、教育における革新、生物医学研究、臨床医療、地域及び世界のコミュニティへのサービスが有名である。32部門と14研究所に3,400人以上の教授陣を擁し、国立健康研究所(NIH)の助成、及びUSニュース&ワールド・レポートによる上位20医科大学にランクされている。

 1852年に設立されたマウントサイナイ病院は、1,171床の第3及び第4高度医療教育施設であり、米国内で、最古、最大で、最も尊敬されている任意寄付制病院のひとつである。2011年に、USニュース&ワールド・レポートで、マウントサイナイ病院は、評判、安全性、その他の患者医療要素に基づき、米国内上位病院中で第14位の優良病院(Honor Roll)にランクされた。マウントサイナイ医療センターは米国の上位20病院の中の12の統合大学病院センターのひとつであり、その医科大学は国立健康研究所(NIH)の助成、及びUSニュース&ワールド・レポートにおける上位20医科大学にランクされ、その病院はUSニュース&ワールド・レポートの優良病院としてランクされている。昨年は6万人近くの人々が入院患者としてマウントサイナイで治療を受け、約56万人の外来患者があった。

更なる詳細情報は下記にアクセスください。

http://www.mountsinai.org/
Facebook: http://www.facebook.com/mountsinainyc
Twitter @mountsinainyc
YouTube: http://www.youtube.com/mountsinainy


訳注1
A Research Strategy to Discover the Environmental Causes of Autism and Neurodevelopmental Disabilities
Philip Landrigan, Luca Lambertini, Linda Birnbaum
Children’s Environmental Health Center, Mount Sinai School of Medicine, New York, New York, E-mail: phil.landrigan@mssm.edu, Director, NIEHS and NTP, National Institutes of Health, Department of Health and Human Services, Research Triangle Park, North Carolina, E-mail: birnbaumls@niehs.nih.gov
http://ehp03.niehs.nih.gov/article/info%3Adoi%2F10.1289%2Fehp.1104285

訳注2
自閉症スペクトラム - Wikipedia
自閉症 - Wikipedia

訳注3
注意欠陥・多動性障害 - Wikipedia

訳注4
学習障害 - Wikipedia

訳注5
アスペルガー症候群- Wikipedia

訳注6
高機能自閉症 - Wikipedia
 自閉症スペクトラムのうち、知的障害がないもの(一般的にはIQ70以上)を高機能自閉症(知的遅れのないカナータイプ)やアスペルガー症候群(言語障害は無いが、視覚認知・空間認知力に、問題を生じる)と呼ぶことがある。「高機能」というのは知能指数が高いという意味であるが、平均的な健常者より高いとは限らず、知的障害との境界域の場合もあれば、一部平均的な健常者をはるかに上回る場合もある。1980年代以降、急速に認知されてきた。



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る