グランジャン博士のウェブサイト
Chemical Brain Drain - News 2014年9月17日
脳に対する権利

情報源:Chemical Brain Drain Website - News
The right to a brain, 17 September, 2014
By Philippe Grandjean, MD
http://braindrain.dk/2014/09/the-right-to-a-brain/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2014年10月10日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/The_right_to_a_brain.html

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【2014年9月17日】 著作権、通行権、言論の自由という権利があり、また生きる権利もある。しかし、我々には脳を発達させるという権利はあるのか? 法学者ローラ・ウェストラはこの問題を彼女の新たな本 『子どもの法律(Child Law)』 で取り上げている。彼女は、母親のプライバシーに対する権利(訳注:妊娠中絶の権利)は、出生前の子どもの生きる権利に勝るとする米最高裁の判決により引き起こされた”解決困難な対立(intractable conflict)”に光を当てた。この判決は、健全な心と体をもって命の営みを始めるという子どもの明白な権利(the right to be well-born)と矛盾する結果となる。ウェストラ博士は、法学者らが1973年の「ロウ対ウエード事件」の判決(訳注1)を頻繁に引用したと言及している。しかし同じ出典は、子どもが出生前の母親の怠慢(母親の飲酒など)を訴えることが可能となると、論理の明確な欠如を議論することを回避している。

 この欠落は不幸であり、また深刻である。もし母親のプライバシーに対する権利が子どもの生きる権利に勝るなら、彼女は胎児に対し”執行停止(stay of execution:ウェストラ博士のことば)”を授与することができるはずである。それは法律的には、子どもが健全な命の営みを始め、そして適切に機能する脳を持つと言うことではないのか? もっと言えば、まだ生まれていない子どもは、有害物質により乱されていない適切な脳の発達に関する権利を持つと言うことではないのか?

 この疑問はまた、女性の体内に入り込み、彼女の子どもの脳汚染を引き起こす化学物質に責任があるかもしれない第三者にも関連する。さらにこの疑問を複雑にするのは、関連する会社は多くの権利と特権をもった”人間性”を備えているが、胎児は持っていないということである。このとんち問答は、巨大化学会社を訴訟から守るための、いわゆるモンサント保護法(Monsanto Protection Act)(訳注2)により、最近アメリカでその構図が示された。哲学教授カール・クラノールの著書 『合法的に汚染される(Legally Poisoned)』 の中で詳細に議論されているように、現在の法は子どもを有害化学物質から守るという点で、嘆かわしいほどに不適切である。それではなぜ、’脳発達保護法’と言うようなものがないのであろうか? これらの法的疑問は未解決であり、明らかに非常に長い間無視されている。ウェストラ博士の新たな本は、まさしく、次世代及び次世代の脳に対する我々の共同責任の徹底的な検証を求めている。


訳注1:ロウ対ウエード事件
Roe v.Wade 「ロウ対ウエード事件」
1973年の判決で米国の連邦最高裁判所は、条件付きで人工妊娠中絶を認める州法の合憲性を初めて認めた。

訳注2:モンサント保護法
日本にも影響か〈モンサント保護法〉が米で成立
モンサント社などが販売する遺伝子組み換え作物で消費者に健康被害が出ても、因果関係が証明されない限り種子の販売や植栽を法的に停止させることができない、と定めている。



化学物質問題市民研究会
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