グランジャン博士のウェブサイト
Chemical Brain Drain - News 2015年6月15日
もっと多くの農薬が脳を汚染する

情報源:Chemical Brain Drain - News
15 June 2015
More pesticides drain brains
By Philippe Grandjean, MD
http://braindrain.dk/2015/06/more-pesticides-drain-brains/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2015年6月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/More_pesticides_drain_brains.html

sPesticideSprayingMan1-150x150.jpg(4420 byte)
 新たな報告書が、一般的に使用されているある殺虫剤類を化学的脳汚染に関連付けた。フランスの出生コホート Pelagie に基づくある研究が、6 歳児 287 人の朝の尿中でピレスロイド系殺虫剤の 5 種類の分解物を測定した。子どもたちはまた、神経心理学テストを受けた。他の殺虫剤及び関連する余因子を調整した後、研究者らは子どもたちの尿中の二つの主要な代謝物((3-PBA 及び cis-DBCA)の濃度は、話ことばの理解力と WISC 知能検査での作業記憶のスコアーが劣ることと関連することを見つけた。しかし、母親の妊娠中に採取された尿中の殺虫剤濃度は子どもたちのテスト結果との一貫性を示さなかった。二つの代謝物質は、一般的にデルタメトリン(cis-DBCA)とピレスロイド系殺虫剤に由来する。

 ピレスロイドは昆虫類の神経系に有毒であり、家庭用及び園芸用殺虫剤、ペット用スプレー、及び布製品用蚊忌避剤として一般的に使用されている。それらはまた一般的に農業用に使用されているので食物汚染を引き起こす。子どもたちは、家庭ダストやノミ駆除組成物シャンプーからも暴露するかもしれない。これらの物質の分解は太陽光によって促進され、従って屋内環境でピレスロイドは家庭ダスト中に長期間残留するかもしれない。暴露は、家庭用途からも又は食品汚染からも、おそらく地球規模で広がっている。このようにフランスから報告されたこれらに類似した尿中の濃度は多くの国々でも、例えばカリブ海諸国でも見い出されている。従って我々は、例えどこか遠くに行っても逃れることはできないかもしれない。ついでに言えば、民間航空機では望ましくない虫を殺すため、しばしばピレスロイドが散布され、航空機の乗務員もこれらの化合物への暴露が増大する。

 フランスの研究の結果は、これらの物質への暴露が注意欠陥多動障害(ADHD)に関連する行動の原因となっているように見えるとするカナダの研究による発見と一致する。2 週間前、横断的な米国健康栄養調査(NHANES)からのアメリカのデータが、増大するピレスロイド系殺虫剤への暴露と注意欠陥多動障害(ADHD)との間の関連を示した。ピレスロイドは発達神経毒性を引き起こすことができるという考えもまた、多くの実験的証拠によって支持されている。

 この新たなフランスのデータは、各児童と各母親からの単一の尿サンプルの分析に基づくという不完全な暴露評価を考慮して解釈される必要がある。暴露は日々変動するかもしれず、またこれらの殺虫剤は、かなり速く体内から排出されるので、このアプローチには幾分問題がある。さらに、母親の尿は 6 年間冷凍庫で保管されており、物質のある程度の崩壊は無視することができない。これらの潜在的な問題は、その発見を無効にすることになるのであろうか? そうではないであろう。一般的にそのような不正確さは、むしろ暴露に関連する有害影響の過小評価をもたらすであろう。したがって、これらの殺虫剤は、我々が考えているよりもっと悪いかもしれない。


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る