グランジャン博士のウェブサイト
Chemical Brain Drain - News 2015年5月29日
感染症は脳汚染を引き起こすことができる

情報源:Chemical Brain Drain - News
29 May 2015
Infections can cause brain drain
By Philippe Grandjean, MD
http://braindrain.dk/2015/05/infections-can-cause-brain-drain/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2015年6月7日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/Infections_can_cause_brain_drain.html

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 熱が出れば体がだるくなるし、高熱なら、せん妄状態又はこん睡状態になることもあるであろう。しかし、我々が疲れたと感じるのは、熱のためであろうか、あるいは感染症のためであろうか、あるいは免疫系の反応のためであろうか? そして子どもたちには長期的な影響があるのであろうか?言い換えれば、感染症は脳汚染を引き起こすことがあるのであろうか? この疑問は、デンマークにある大きなデータベースに基づき研究された。研究者らは約19歳の徴集兵 161,696 人に実施された認識テストを基にして、その中で感染症で入院したことのある若者の病歴を調べた。

 実際に、以前に感染症で入院したことのある若者の35%が、約1.1 IQ ポイント低い認識点数であった。もっと重要なことは、1週間以上入院すると点数はより低下し、1か月以上病床にあると、点数に影響するであろう他の要素を調整した後、3.5ポイントほどの低下という結果となった。さらに、繰り返し入院すると段階的にIQ 点数が低下することを示し、5回以上入院すると5ポイント以上の低下があった。

 これらの関連は、小児期及び思春期に重大な感染症にかかると、認識力の発達が遅れる又は不完全になることを強く示唆している。しかし、いくつかの困惑するような発見もある。特に、入院が5年以上前の場合には IQ 低下は1ポイントより小さく、一方、もっと最近入院した徴集兵は約2ポイントの低下を示した。この発見は、より若い脳は有害影響に対してより脆弱であるという考えに反するものである。より若い年令時の感染症には、なにか代償が起きるのであろうか?

 もうひとつの興味をそそる観察は、予期されたような知能不足は明らかに髄膜炎又は脳炎と関係していたが、他の感染症も、たとえそれが皮膚、泌尿器系、又は胃腸系の疾病であろうと、ほとんど同じ程度に低い IQ に寄与したということである。一般的に感染症が何らかの方法で脳の関与をもたらすということがないならば、明らかに、感染因子の脳への侵入は知能不足が起きるために必須ではないように見える。胃腸炎に由来するバクテリアが脳を侵略できるというよりむしろ、熱と免疫反応が、脳に関与できる有害な全身反応を媒介するということであろう。この考え方は、1歳の時に重大な感染症に罹った2歳の子どもの不十分な機能によって支持されている。実際に、感染症による炎症、例えば HIV (ヒト免疫不全ウィルス)感染は、たとえ感染が体内の他の場所で主に起きても、脳の伝達系に影響を与えるかもしれない。

 若者たちは学校に行けなかったために IQ テストをうまくやれなかったということはないか? 登録データは入院期間を明らかにしたが、もっともありそうなことは入院した子どもたちは、学校に戻る前に完全に回復するために家で療養しなくてはならなかったということである。よくわからないが、学校に行かなかったことが観察された関連性の全てを説明するようには見えない。

 その他の可能性もまた、考慮する必要がある。感染に対してよりぜい弱な人々は、同時に認識力が劣る又は遅れているということはあり得るだろうか? 入院していた子どもたちが、免疫系も弱める脳汚染化学物質に暴露していたということはあり得る。例えば、生命の早い時期のダイオキシンや PCB 類への暴露は、脳の欠陥をもたらすことができるが、これらの物質はまた、免疫系を弱めることができ、それによって、重大な感染症に罹りやすくなる。同様に過フッ素化合物は免疫毒性であるとともに、神経毒性であることも疑われている。

 そのメカニズムがどのようなものであれ、過去の重大な感染症と成人の知能の間の関連は、改めて人間の脳のぜい弱さを実証している。


化学物質問題市民研究会
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