グランジャン博士のウェブサイト
Chemical Brain Drain - News 2014年6月16日
米機関からの魚介類摂取に関する怪しい勧告

情報源:Chemical Brain Drain Website - News, 16 June 2014
Fishy advice from US agencies
By Philippe Grandjean, MD
http://braindrain.dk/2014/06/fishy-advice-from-us-agencies/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2014年6月23日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/Fishy_advice_from_US_agencies.html

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【2014年6月16日】 先週、米当局−食品医薬品局(FDA)と環境保護庁(EPA)は、妊婦と子どもは魚介類を食事でどの様にとるかについての勧告案を発表した。FDA/EPA 両当局は、女性は 1週間の食事で低水銀汚染の魚介類を8〜12オンス((240〜360グラム)とするよう勧告した。この勧告には議論があり、その発表は著しく遅れた。

 FDA の主な懸念は、妊婦の21%が(水銀を恐れて)魚の摂取を回避するという(調査がある)ことである。FDA/EPA 両当局は、魚油及び脳の発達に重要な栄養素で水銀汚染のレベルが低い信頼できる魚としてエビ、ポロック(北大西洋産の白身の魚)、サケ、缶詰のライトツナ、ティラピア(淡水、汽水の魚)、ナマズ、及びタラを強調した。

 以前の勧告では、妊娠中及び授乳中の女性と小さな子どもは、神経毒素であることがよく報告されているメチル水銀の含有が高いという理由で、アマダイ(メキシコ湾産もの)、サメ、メカジキ、及びサバを避けるよう助言していた。ビンナガマグロ(ホワイトツナ)については、FDA/EPA 両当局は1週間に6オンス(180グラム)を越えないよう勧告している。この摂取レベルでは、1週間に他の魚介類を食べない妊婦でも、EPAのメチル水銀暴露限度を50%−FDA/EPA 両当局が計算しなくてはならなかった値であるが共有していない−超えるであろう。

 マグロの消費についての助言は、提案されるどのような制限値についても水産業界が批判するので、激しい議論となっている。もうひとつの隠された事実は、缶詰マグロ(”ライト”マグロ及び、”ホワイト”マグロ)は、アメリカ人のメチル水銀摂取の3分の1を占めているということである。ある缶詰マグロは、かなり高い水銀濃度を含むことがあるので、消費者グループは妊娠中は缶詰マグロを食べないよう助言している。

 この懸念に対応して、FDA の報道官は記者への説明文書で次のように述べている。”食べる魚の種類という点で食事に多様性があるなら、表示されている水銀レベルより高いかもしれない時々の缶詰についての懸念は無視されるべきであろう”。このややいかがわしい声明は、健康な魚介類の食事に関して決定的な言葉となろうとしている。FDA は、魚介類について明確で、正確で、理解しやすい情報を提供するよう訴えられている。なぜ FDA は声明にそのような表示を提案しなかったのかと問われたときに、FDA は、”係争中”であるという理由でコメントを拒否した。

 さらに混乱の元として、魚介類、特にある種の貝や甲殻類についての水銀濃度に関する FDA の表の中に明らかな矛盾があることである。アメリカン・ロブスターは、”調理された魚肉(cooked fish)”の4オンス(120グラム)中に47マイクログラムの水銀を含むと言っている。もし体重 60 キログラムの女性が毎週1回このサイズのロブスターを食べたなら、彼女はEPAの暴露限界(体重1キログラム当たり0.1マイクログラム)を越えるであろう。それにもかかわらず、アメリカン・ロブスターの FDA 自身の分析結果は、9 サンプル中の平均濃度が 0.1 マイクログラム−新たな勧告中で引用されているレベル(訳注:47÷120=0.39マイクログラム/グラム)の4分の1−であることを示していた。アメリカン・ロブスターの水揚げは主にメイン州の沿岸であり、EPA の国家沿岸環境評価プログラム(National Coastal Condition Assessment Program)によるモニタリングは、ロブスターの平均水銀濃度は 0.05 マイクログラム/グラム−新たな勧告中で引用されているレベル(訳注:47÷120=0.39マイクログラム/グラム)の8分の1−であることを示した。

 そのような未解決の疑問と懸念は、2014年6月11日からの30日間に多くのパブリック・コメントをもたらすであろう。勧告で述べられていない追加的な論点は、現在では天然魚の総漁獲量を越える養殖による魚についてである。養殖魚は脳汚染化学物質を高濃度で含んでいるかもしれず、最近ノルウェーでは最も有毒な食物と呼ばれていた。

備考:メイン州は、平均水銀濃度が州の対策レベルである 0.2 マイクログラム/グラムを超えていたことを同州の分析が示したので、今年の初めに、ペノブスコット川河口でのロブスター漁を禁止した。FDAのデータは、マカジキ、オレンジラフィー、ビンナガ及び大型マグロ種が大幅にこの対策レベルを越えていることを示している。



化学物質問題市民研究会
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