グランジャン博士のウェブサイト
Chemical Brain Drain - News 2019年5月10日
子宮中の大麻

情報源:Chemical Brain Drain Website - News
10 May 2019
Cannabis in the womb
By Philippe Grandjean, MD
http://braindrain.dk/2019/05/cannabis-in-the-womb/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2019年8月21日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/Cannabis_in_the_womb.html

 【2019年5月10日】妊婦がアルコール飲料を飲んだかどうか誰も気にしない時代があった。しかし、大麻(cannabis)についてはどうだろう。マリフアナ(大麻)とその誘導体は、最近まで非合法であると一般的にみなされていたが、現在はオーストラリア、カナダ、オランダ、デンマークを含んで、多くの国で医薬用途に処方されている。アメリカでは、33州とワシントン D.C. が大麻を医薬用途に合法化している。さらに重要なことに、11州が大麻を嗜好用途での使用を許している。

 このことは、マリファナは、慢性の痛みを持つ患者だけではなく、妊娠するかもしれない健康な女性にまで広く入手可能となっている。つわりを軽減するためにどうやらマリファナを吸っている妊婦の数が増大しているようである。残念ながら大麻は容易に胎盤関門を通過し、胎内循環に到達する。しかし妊娠中のマリファナの使用に対する警告はどこにあるのか? 大麻の代謝物は数日間、血液中で循環する。それらはまた、そのように長い間、胎児と共有される。さらにその化学物質は母乳中にも入り込むので、暴露期間が長くなる。この点に関し大麻についての警告は何もないが、それでよいのか?

 妊娠中にマリファナを週に1回又はそれ以上吸っていた女性たちの子どもを追跡したオタワ出生前前向き研究(訳注1)を含んで 3つの大きな経年的研究がある。報告された子どもたちへの影響の中で、多動と不良行為、記憶障害と低 IQ スコアが増加している。精神病及び精神分裂病の様な症状もまた記述されている。これらの影響は、大麻の活性化合物によって引き起こされる脳内のエンドカンナビノイド(訳注2)系の変化によって調節される。結論は、大麻は化学的脳汚染物質であるということである。

 大麻を合法化することのひとつの良い面は、大麻製品中の活性成分濃度の品質管理と残留農薬制限である。出生前の脳はなんらかの保護がなされているかもしれないが、大麻自身からのリスクが無視されるべきではない。嗜好用大麻で得るハイ感覚は母子両方の脳に影響を及ぼすが、子どもにとっては快感はなく、影響は永久に続く。


訳注1:前向き研究
  • 前向き研究/日本緊急医学界
     疫学調査法の一つで,容疑要因に暴露したものと暴露しないものをあらかじめ定義された集団から選び,将来に向かって問題とする疾病の発生を観察して,両者の発生率を比較する方法で,コホート研究(Cohort Study)あるいは追跡研究(follow-up study)ともいう。
     これに対し,問題とする疾病にすでに罹患している群としていない,いわゆる対照群の両者について,仮説として立てられた要因への暴露を過去にさかのぼって情報を集め,比較する方法を後ろ向き研究(retrospective study)という。
訳注2:エンドカンナビノイド
  • エンドカンナビノイド/脳科学辞典
     エンドカンナビノイドとは生体内で作られるカンナビノイド受容体のリガンドの総称である。大麻草(学名:Cannabis sativa)に含まれる生理活性成分の総称名カンナビノイドに対して内因性のカンナビノイドであることから名付けられた。いわゆる脳内マリファナ類似物質である。


化学物質問題市民研究会
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