グランジャン博士のウェブサイト
Chemical Brain Drain - News 2014年4月7日
知っている悪魔の方が良いか?

情報源:Chemical Brain Drain Website - News
Better the devil you know?, 7 April 2014
By Philippe Grandjean, MD
http://braindrain.dk/2014/04/better-the-devil-you-know/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2014年4月28日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/Better_the_devil_you_know.html

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【2014年4月7日】 オランダの科学者らは13点のプラスチック・ケースに入った家電製品を購入し、プラスチック中のフッ化難燃剤の含有を分析した訳注1)。その目的は、これらの製品が、ヨーロッパ及びアメリカで5年以上前に脳毒性のポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDEs)が禁止又は廃止された後に、代替難燃剤を含んでいるかどうかを調べることであった。それらは含んでいた!

 製品8点が、化学者らの間では TTBP-TAZ という名前で知られている「2 4 6トリス4 2エチルヘキシルオキシカルボニルアニリノ1 3 5トリアジン」を含んでいた。最も高い検出値は2%に近かった。さらに研究者らはまた、9戸の異なる住宅の屋内ダストを分析した。全ての住宅のダスト中に PBDEs の典型的なレベルより低かったが、TTBP-TAZ が存在した。そこで、 PBDEs は廃止されており、他の化学物質で代用されているということは良いニュースということになるのか?

 必ずしもそうとは言えない。以前に使用されていた難燃剤の可能性ある代替物質に関する米・環境保護局のある報告書は、TTBP-TAZ は環境中で生物蓄積する可能性と非常に高い残留性を持つと結論付けた。非常に限られた情報ではあるがそれに基づけば、その毒性の強さは弱いと考えられている。新たに出現している難燃剤の評価において、欧州食品安全機関は非常にしばしば次のことばを使用した。この難燃剤については”情報は特定することができなかった”。特性化が不十分であった他の代替物質もまた市場に出されていた。

 子どもの家具についての最近の調査は、製品中に様々な難燃剤を見つけた。最もしばしば出てきた難燃剤のひとつ(42製品中22製品)は、内分泌かく乱を引き起こすと考えられており、脳毒性もあるかもしれないと十分に考えられている。”火災安全の科学者らは、これらの有害で有毒な難燃剤化学物質は、それらが子ども用の(又は大人用の)家具の中で使用されても、火災リスクを減らすのに効果はないと言っている”と、その著者らは述べている。すなわち、新しい代替物質はプラスチック材に添加するという当初の目的を満たしてすらいない。そこには隠された危険があるかもしれない。

 毒性情報がないか限られている代替及び代用の問題がしばしば起こる。例えば、内分泌をかく乱するBPAの、赤ちゃんのほ乳瓶での使用が廃止されたときに、BPAを使用せず(BPA-free)、安全(safe)であると主張する新たな製品が市場にあらわれた。前者(BPA-free)は正確であるが、後者(safe)は正確ではない。エストロゲン物質(女性ホルモン)はまたBPAを使用していないと主張するプラスチックからも放出されている。したがって我々は、順調ではないかもしれないし、少なくとも現状では順調ではない。

 ”知らぬ悪魔より知り合いの悪魔の方がまし(better the devil you know than the devil you don’t know)”ということわざがある。我々は、 TTBP-TAZ は PBDEs よりも安全であるかどうか確信はない。それらはすべて悪魔かもしれず、したがって廃絶されるべきである。


訳注1
米化学会 C&EN 2014年4月4日 科学者ら 新たな臭化難燃剤を消費者電気製品中に発見



化学物質問題市民研究会
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