グランジャン博士のウェブサイト
Chemical Brain Drain - News 2013年4月20日 
自閉症の病因

情報源:Chemical Brain Drain Website - News
Autism etiologies, 20 April 2013
By Philippe Grandjean, MD
http://braindrain.dk/2013/04/autism-etiologies/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2013年9月3日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/Autism_etiologies.html

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 多くの諸国で、自閉症及びその関連障害はその発生が増加しているように見える。その増加の程度についは議論があるが、この疾病の原因とそれを防止する方法はよくわかっていない。脳の化学物質による汚染は、その疾病に大きく寄与しているように見えるが、フィンランドの新たな研究がこの考えを支持している。

 研究者らは、75人の自閉症児のケースと75人の健康な子どものコントロールについて、母親の妊娠中に採取した母親の血清を分析し、その化学物質濃度を比較した。この新たな報告書は、PCB類と農薬DDT及びHCB(ヘキサクロロベンゼン)についての結果を示している。対象者が比較的少数であったため、その結果は統計的に有意ではなかった。しかし、PCB類とDDTの代謝物であるDDEについては、自閉症児のケースの方が高いという明確な傾向を示した(オッズ比はPCB類で1.9、DDEで1.8)。PCBとDDE濃度上位10%では、自分の子どもが後に自閉症と診断される母親は、コントロールの母親の約2倍であった。

 この新たな発見は予備的ではあるが重要である。第一に、研究者らは、ケース・コントロール設計は実行可能であり、妊娠中に採取された母親の血清サンプルを使用して上首尾に実施することができることを実証したことである。数年来、フィンランド人は、大きな冷凍庫に約100万の血清サンプルを保管しているので、我々は、この世界の片隅からもっと多くの証拠が出現することを期待できる。同様に、小さな生物学的銀行が多くの諸国に存在する。この新たな研究はこれらの発見を再現し拡張するという励みを与える。

 第二に、現在までのところ、環境化学物質に関するほとんどの証拠は、自閉症児であると診断された後の曝露だけに目を向けてきた。しかし、原因となる曝露はもっと早い段階で、特に胎児期の発達段階で起きていたに違いない。したがって、ある人々は水銀やその他の脳の汚染物質として知られているものへの関連を示唆しているが、診断後の曝露の結果は、ほとんど利用できない。他の研究は、自閉症の発症を様々な大気汚染物質に関連付けている。しかし大気汚染は複雑な混合物であり、その時々で変化する。一般的に、暴露評価は不正確であるために、これらの研究は自閉症の原因となる暴露の実際の寄与を過小評価しがちである。

 第三に、その結果はまた、化学物質に関する他の証拠に照らして検討されるべきである。サリドマイド、ミソプロストール、バルプロ酸のようなある種の薬が妊娠中に用いられるなら、それらは子どもの自閉症リスクを増大させ得る。妊娠中の母親のアルコール摂取及び風疹への感染もまた、自閉症リスクへの寄与が知られている。(小児期のワクチン接種はリスク要素として疑われているが、多くの研究はこの見解を支持しない。)したがって、初期の脳発達段階の有害化学物質への曝露は自閉症の非常にありそうなリスク要素である。

 自閉症は遺伝的要素を明らかにもっており、またその理由のために遺伝子と環境化学物質との相互作用がこの疾病にとって非常に重要なものかもしれない。そのような相互作用を解読するためには、大規模な調査が必要である。

 要は、自閉症は脳の化学物質汚染(chemical brain drain)の結果であると考えられるべきである。

 


化学物質問題市民研究会
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