グランジャン博士の
化学的脳汚染ニュース 2018年10月29日
大気汚染と脳汚染

情報源:Chemical Brain Drain - News, 29 October, 2018
Air pollution - brain pollution
By Philippe Grandjean, MD
http://braindrain.dk/2018/10/air-pollution-brain-pollution/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2019年7月24日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/Air_pollution-brain_pollution.html

【2018年10月29日】最もはっきりしている脳汚染物質は、水銀、鉛、又は有機リン系農薬のようにすでに発見されているが、疑われる神経毒性物質ということになれば、そのリストはもっと長くなる。それらの多くは食物や水の摂取を仲立ちとしている。しかし私たちが吸い込む空気はどうであろうか? この分野はいささか複雑である。それは大気汚染とその成分が場所によって、季節によって、一日の時間によって、そしてその他の要因によって、変化するからである。

 大気汚染は、既知の人間の神経毒性物質である一酸化炭素、ある金属類、窒素酸化物、そしてタール化合物や混合成分の粒子のような、あまり明確ではない神経毒性物質を含む。しかし我々が吸入する空気が次世代の脳の発達に影響を及ぼすかもしれないことを示す証拠が増えている。本日、欧州環境機関(EEA)は大気汚染が非常に悪化しており、”目に見えない殺し屋”であると警告しているが、それ以上のことである。

 最も強い証拠の一つは、ISGlobal の研究者らによって実施され、2015年3月3日に発表されたバルセロナでの大規模な調査である。彼らは、小学校の児童の様々な程度の交通大気汚染への暴露が、標準化されたワーキングメモリー(訳注1)テスト及び注意力テストの繰り返し得点を使用して、12か月間の認識能力の発達に関係したかどうかを評価した。学校でより高いレベルの交通関連大気汚染物質に暴露した子どもたちは、認識力改善が減じていることを示しており、これは出生後の発達中の脳の脆弱性の継続を強調している。

 2018年8月27日に発表された、成人についてのある研究は、安全ではないレベルの大気汚染の吸入は、不十分な又は低下した認識能力に関連し、したがって成人の神経系も関与しているかもしれないことを示唆している。その調査は、参加者が居住している場所の二酸化硫黄、二酸化窒素、及び粒径が 10マイクロメートルより小さい粒子の測定レベルと、認識能力−この場合は数学と言語能力−との関連を調べた。その調査は 4年間にわたり、約 20,000人以上の人々について行われた。その調査よって分かったことは、この特定のどこにでもある世界的な暴露源と、成人の脳はもちろん、それが及ぼす発達への影響について緊急に対処すべきことを強調している。この調査は中国で実施されたものであるが、大気汚染は地球規模の問題である。

 欧州委員会は問題を知っており、環境委員カルメヌ・ヴェッラは 本年(2018年)1月に加盟国に対して、大気汚染レベルを EU の大気汚染法類に適合するよう低くする計画を提出するよう要求した。”私はこの生命を脅かす問題に緊急に対応するよう全て加盟国に強く要請する”。数か月後、11加盟国が欧州委員会に排出規制上限を高くするよう求めた。オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、アイルランド、ルクセンブルグ、スペイン、及びイギリスである。多くの場合、窒素酸化物(NOX)は制限値を超えている。EU の制限値は健康に基づいていると考えられているが、それらは脳の機能と発達への潜在的な有害影響を考慮していない。我々は大気をきれいにし、脳汚染物質を大気から取り除くことができるのであろうか?


訳注1


化学物質問題市民研究会
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