グランジャン博士のウェブサイト
Chemical Brain Drain - News 2015年12月10日
事実の後に

情報源:Chemical Brain Drain - News, 10 December 2015
After the fact
By Philippe Grandjean, MD
http://braindrain.dk/2015/12/after-the-fact/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2015年12月27日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/After_the_fact.html

sDeadLeaves.jpg(20223 byte)
【2015年12月10日】数日前、あるスウェーデン人の母親から電話があり、助言を求められた。彼女の家は、実験農産物用の畑が隣にある田舎にある。その畑の主要な目的は、様々な農薬の残留をテストすることであり、したがって様々な物質、例えば、まだスェーデン又は EU で承認されていないような化合物を含んで、除草剤、抗菌剤、及び除草剤が扱われている。

 今年の夏に間違いが起きて、最大250メートル離れた近隣の 8 軒の家の庭の植物が枯れた。知らせを受けた当局は、後にテストして、現在は許可されている除草剤クロマゾン(Clomazone)(訳注1)が存在することを見つけた。しかし、商業上の機密保持のために住民はこの農薬散布に責任ある会社から詳細な情報を得ることができなかったので、他の物質も関与しているのかどうか不明確であった。

 一方、地域の子どもたちは外で遊んでおり、家族は農薬散布された畑からわずか数メートルしか離れていない彼ら自身の菜園から作物を収穫していた。しかし、植物を枯らすのだからと、その母親は子どもたちの健康を非常に懸念した。この点について彼女の15か月の娘は、成長が標準より遅れているが、かかりつけの医者は有害影響を示唆するようなものは何も見出さなかった。

 それで母親は国の規制当局から既知の除草剤に関する文書を得ようとしたが、無駄であった。そのような情報は機密であり、公開されることはなかった。しかし農薬暴露は実際に起きた。このことは数週間後まで確認されなかったので、暴露を評価するための血液と尿のサンプルを得た時はすでに遅すぎた。ひとつの承認された物質が環境中のサンプルから検出されていたが、他の可能性ある物質については検証は行われず、この畑を管理する会社は情報を提供することを拒否した。同様に、関与していることが分かった唯一の物質について、政府のウェブサイトで利用可能な概要データ以上の安全情報を入手することはできなかった。

 その母親のフラストレーションはよく理解できる。適切な暴露評価はもとより、関与しているかもしれない特定の危険を特定することすら不可能である。可能性あるリスクに関するデータは機密である。この点についての詳細を知ることなくして、この除草剤が脳の発達に引き起こすかもしれないどのようなリスク−ほとんどの農薬はそのような影響についてテストされていない−をも決定するための優先テストが実施されていないということはほとんど確実である。さらに、もしその暴露が脳毒性をもたらすなら、我々はそれが起きていないことを望むが、かかりつけの医師はそれを検出することはできないであろう。一般的に脳の発達への有害影響は、それが重大な損傷でなければ、学齢期になって初めて明らかになる。

 我々の現状の文書では、それが起きるのか、起きるならいつなのかを我々は予測することができず、また脳発達への有害影響は長く続き、恐ろしいので、化学的脳汚染の存在だけでも恐れとフラストレーションのもとである。懸念するこの母親の経験は、この分野の科学は社会的な決定に関連しなくてはならないということを明確に示している。


訳注1:クロマゾン
ウェブ上では、日本においても残留基準値以外、クロマゾンの製造/輸入、使用、有害性、リスク評価、規制等についての情報は見つからない。


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る