グランジャン博士のウェブサイト
Chemical Brain Drain - News 2014年5月27日
ADHD と脳汚染物質

情報源:Chemical Brain Drain Website - News, 27 May 2014
ADHD and brain drainers
By Philippe Grandjean, MD
http://braindrain.dk/2014/05/adhd-and-brain-drainers/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2014年5月29日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/ADHD_and_brain_drainers.html

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【2014年5月27日】注意欠陥多動症(ADHD)は、小児期の最も一般的な行動障害であり、学童の有症率は10%程度かもしれない。ADHD の子どもは、注意持続時間が短く、集中することが困難で、直情的で、しばしば多動的である。症状は年齢とともに変化し、成人のADHD は、学業不振、雇用問題、低所得、不安定な人源関係及び傷害リスクに関連する。ADHD は重大な公衆健康問題である。アメリカの研究者らによるレビューは、なぜ ADHD が現代社会で一般的になったのかを検証している。

 現在までのところ、ADHD の病因論と病因はほとんど理解されていない。それでもなお、有害化学物質がひとつの役割を果たしており、最も明白な犯人は、胎児期のタバコとアルコールへの暴露、そして出生後の鉛への暴露である。しかし、詳細な用量−反応関係はまだ不明である。暴露の時期と期間は重要であるが、原因となる暴露はおそらく診断が下された数年前の生命の初期に生じているかもしれず、文書で証明することは難しい。いくつかの研究は、有機リン農薬、特に出生前の暴露は ADHD を発症させるかもしれないことを示唆してる。もうひとつの最近のレビューは、潜在的な ADHD の原因としてマンガン、DDTのような有機塩素系農薬、及び PCB 類を主張しているが、やはり不確実性と将来の研究でのより良い暴露の評価を強調している。

 現在までのところ、ほとんどの研究は、単一リスク要素に焦点を合わせており、結果に影響を与えてるかもしれない他の脳汚染化学物質への暴露を原因として説明していない。我々は全て、その多くが脳の発達に有害かもしれない多くの様々な化学物質のカクテルに暴露しているのだから、包括的な曝露評価が必要であるように見える。このことは、シンシナティの子どもたちの前向き研究(prospective study)が試みられたが、そこでは4〜5歳児の行動問題は妊娠中の母親の血液と尿サンプル中の52の化学物質の濃度に関連していた。いくつかの示唆に富む関連が発見されたが、現在我々が知っていることに基づいて解釈することは難しい

 さらなる問題は、遺伝的体質が、ある子どもたちの脳汚染化学物質への感受性を高めるかもしれないということである。例えば、アルコール脱水素酵素遺伝子の共通の突然変異は ADHD 行動のより高い発症リスクに関連している。農薬については、パラオキソナーゼ(訳注:リン脂質酸化防止や有機リン系農薬の解毒を行う酵素)遺伝子の突然変異もまた、子どもが暴露により影響を受けるかどうかを決定するある役割を果たすように見える。このことは、 ADHD が遺伝性疾患であるとみなされることを意味しない。しかし、遺伝子の構成が脳汚染物質への暴露へのぜい弱性に影響を与えるらしいので、ある子どもたちは他の子どもたちより影響を受ける程度が大きい。ほとんどの研究はそのような相互作用考慮していないが、そのことが変わりやすい又は有意ではない結果の主要な原因のひとつかもしれない。

 要は、ADHD は多くの様々な病因論と病因を反映するらしい診断用語である。この点において、母親のアルコール摂取と喫煙は、小児期の鉛暴露とともに ADHD 発症に寄与することは間違いないと言うことができる。我々はまた、他の脳汚染物質も寄与することを確信するが、このことがどの程度生じるのか我々はわからない。そのことは脳汚染化学物質を無視することができるということを意味するものではない。ADHD は慢性的症状であり、おそらく一生続くのだから、ADHD は我々が脳汚染物質への暴露を減らすためのもう一つの理由である。



化学物質問題市民研究会
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