掲示68(2006年1月22日)
ピコ通信 第89号(2006年1月23日)掲載
更新:2015年7月15日
掲載:2006年1月22日
化学物質問題市民研究会
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プレスリリース
環境ホルモンに関わる小冊子「チビコト」および
ホームページに関する公開質問状

このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/keijiban/keijiban06/keijiban06_68.html

 環境省は1月13日付で「『チビコト:ロハス的環境ホルモン学』ホームページ掲載について」という報道発表を行いました。(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=6720

 その概要で、「環境省は、月刊エコマガジン「ソトコト」(発行部数:約10万部)と協力し、2006年1月号別冊付録として「チビコト:ロハス的環境ホルモン学」を作成しました。チビコトの内容を「化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページ」(http://endocrine.eic.or.jp/)に掲載しましたのでお知らせします。ロハスという観点から、いわゆる環境ホルモンの問題を捉え直し、日々のライフスタイルに関する提言を行っています」と述べています。

(注)このホームページは現在、Official Endocrine Disruption Website (化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページ)として、URL が http://www.env.go.jp/chemi/end/endocrine/ に変わっており、「チビコト」 は、このホームページの資料・リンクのページで参考文献として、http://www.env.go.jp/chemi/end/endocrine/4link/chibikoto/index.html で紹介しています。 (2015年7月15日)

 また、この小冊子は12月4日から6日まで沖縄県で環境省が開催した「第8回化学物質の内分泌かく乱作用に関する国際シンポジウム」でも配布したと述べ、環境省への直接申し込みに応じて配布するとしています。この小冊子は平成17年12月18日に福島で行われた第16回「化学物質と環境円卓会議」でも配布されています。

 この小冊子の内容を検討したところ、環境ホルモンについては、現在様々な研究結果や議論が積み重ねられているにもかかわらず、"人間には影響がない"、"主原因は人工化学物質ではなく自然界である"という印象を与える一方的な内容であり、また、環境ホルモン問題を「騒動」と表現して、国の政策の下に取り組んできた人々や関心を持った国民を愚弄し、環境ホルモンの研究者や学問等をおとしめるなど品性にも欠ける不適切なものであると判断しました。
 よって当会は、このような小冊子を環境省が発行・配布することについて、1月22日付けで公開質問状を送りました。


環境大臣 小池百合子 殿
写し)環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
2006年1月22日
化学物質問題市民研究会
代表 藤原寿和


環境ホルモンに関わる小冊子「チビコト」およびホームページに関する公開質問状


 拝啓 貴下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。  環境省は2006年1月13日、月刊エコマガジン『ソトコト』と協力し、新年1月号の別冊付録として小冊子「チビコト:ロハス的環境ホルモン学」を作成し、その内容を「化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページ」(http://endocrine.eic.or.jp/)に掲載したと発表しています。
 この小冊子を検討した結果、内容には以下のような問題があると考えます。
 (注:「」内は引用文。引用文中()内は、当会が説明用に加えたものです)

■環境ホルモン作用の主原因は「自然界」との印象を与えようとしている
 「女性ホルモンが生態系を崩す?」「汚染源は『人間』だった」「自然現象としての『魚の性転換』」等の見出しの下に、環境ホルモン作用の主原因は人工の化学物質ではなく、「自然界」であるとの印象を与えようとしている。

■環境ホルモン問題を「騒動」と表現し、国の政策の下に取り組んできた人々を愚弄している
 安井至氏(国連大学副学長)と小出重幸氏(読売新聞東京本社編集委員)の「チビコト環境対談」では、「1998年に起きた『環境ホルモン騒動』に始まり・・・」「『環境ホルモン騒動』の発端」「事実と乖離してゆくメディア」「ダイオキシン問題との相乗効果」「世紀末現象」「ニュースになりにくい安心情報」「一般人は『忘却型』でしか対応できない」等々と続く。さらに、ホームページに掲載されている両氏の対談の前書きでは「いわゆる環境ホルモン騒動を検証し、評価する」としている。
 環境ホルモン問題を「騒動」と表現することは、国の政策であったSPEED'98の下に環境ホルモン問題に取り組んできた国、地方の行政担当者を、また、環境、健康問題として真摯に取り組んできた研究者を、さらには環境ホルモン問題に深い関心を持った国民を愚弄するものである。

■「野生生物にしか害が及ばない?」とし、人間には影響がないという印象を与えようとしている
 対談では「野生生物にしか害が及びません、そういう上で、どういう反応をするのが正しいかみたいな議論をそろそろしてもいいんじゃないか・・・」等として、あたかも人間には影響がないような印象を与えようとしている。

■環境ホルモンの学問と研究者を侮辱している
 対談では、「環境ホルモンという『井戸』」の見出しのもとで、「(環境ホルモンは)世の中がつくった穴であり、世の中が関心を失った瞬間にここも閉じてしまうという『井戸』だったんです」「(環境ホルモンの)プロにとっては問題ないという結論を出した途端に、その『井戸』が閉まるという構造を持っている」「結論がそういう方向(大丈夫ですという方向)に出そうでも、プロは『大丈夫です』とは言えない」としているが、これは環境ホルモンの学問と研究者への侮辱である。

 環境ホルモンについては、現在様々な研究結果や議論が積み重ねられている中で、このように内容が一方的で、しかも品性に欠ける小冊子を環境省が発行・配布することについて、以下の質問をいたします。
 ついては、2月10日までに回答いただきたく存じます。

 尚、この質問状、及び、貴回答は当会のウェブサイトに公開するとともに、関係者に配布いたします。
敬具


質問

1.小冊子の発行について
1-1 環境省の発表によれば、小冊子を無料配布しているとのことであるが、制作・配布の経費は、国、又は月刊「ソトコト」出版社のどちらが負担しているのか、国が負担している場合は、支出科目及びその金額を説明していただきたい。
1-2 この小冊子の著作権及び版権はどこが持っているのか説明していただきたい。
1-3 月刊「ソトコト」出版社との金銭の授受があったのかどうか、ある場合は、その名目と金額を説明していただきたい。
1-4 小冊子の配布先と配布部数。

2.小冊子に掲載された内容について
2-1 小冊子に掲載されている内容は、環境省の考えと同じなのかどうか、また、異なる部分があれば、列挙して詳しく説明していただきたい。
2-2 異なる部分がある場合、報道発表し広く無料で配布している理由を説明していただきたい。

3.「化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページ」 http://endocrine.eic.or.jp/ について
3-1 このホームページは財団法人環境情報普及センターの提供であるとし、環境省の責任があいまいである。このサイトに関する環境省の立場を明確に説明していただきたい。
3-2 ホームページの運営方針、企画、投稿記事の採否はどこが決めるのか、また、投稿記事の採否の基準があればそれを説明していただきたい。

以上


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