憂慮する科学者同盟(UCS)2024年4月17日
化石燃料会社は数十億ドルの利益を得る一方、 我々は数十億ドルの損失を被る:2024年版 シャイナ・サダイ博士、Hitz Fellow 情報源:Union of Concerned Scientists, April 17, 2024 Fossil Fuel Companies Make Billions in Profit as We Suffer Billions in Losses: 2024 Edition By Shaina Sadai, Ph.D., Hitz Climate Science Fellow https://blog.ucsusa.org/shaina-sadai/fossil-fuel-companies-make- billions-in-profit-as-we-suffer-billions-in-losses-2024-edition/ 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2024年4月22日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_24/240417_UCS_Fossil_ Fuel_Companies_Make_Billions_in_Profit_as_We_Suffer_Billions_in_Losses.html
すべての数字が 2023 年に出揃ったが、悲しいことに、この傾向は今後も続くと言える。 昨年は極端な年で、産業革命以前の平均気温を 1.48℃上回る年間気温で、再び最も暑い年の記録を更新した。 極端な気温と海洋温度の記録は破られた。 世界中の人々が山火事、洪水、激しい嵐、その他の災害を経験した。 化石燃料業界の利益は 2022年の利益より減少したが、これらの企業は 2023年にも依然として目もくらむような高い利益をあげ、エクソンモービル、シェブロン、シェル、BP の利益を合わせると合計 1,000億ドル(約15兆円)を超えた。 シェブロンの CEO は、同社の記録的な利益と化石燃料生産レベルを自慢し、”2023年、当社は株主により多くの現金を還元し、会社の歴史のどの年よりも多くの石油と天然ガスを生産した”と語った。 このコメントは、化石燃料産業の世界に及ぼす悪影響や、気候変動に立ち向かい人権を優先する世界的な取り組みに対するひどい無視を示している。 米国の災害と災害対応 2023 年、米国は 28 件の気象災害および気候関連災害に見舞われ、それぞれの経済的損害が 10 億ドル(約1,500億円)を超えるものとしては、単年で記録された最多となった。 これらの災害を合計すると、929 億ドル(約14兆円)に達した。この金銭的損害は、人命の損失、文化遺産の破壊、受けたトラウマ、その他の経済用語では説明できないタイプの損害を完全には考慮していない、大まかな尺度である。 これらの災害により、悲劇的なことに 492 人が死亡した。 この数字は、これらの災害の生存者が経験したトラウマの全容を捉えているわけではない。彼らの多くは、報道が大惨事の余波から離れてから長い間、精神的、身体的、経済的に回復するのに無数の困難に直面している。 これらの数十億ドル(数千億円)規模の災害の 1 つは、ハワイのラハイナを壊滅させた山火事であった。 この火災だけでも 100 人以上が死亡し、重要な文化遺産と 2,700 軒の家が破壊され、地元の生態系に深刻な影響を及ぼした。 この火災では有害な灰も残り、その処分には問題があることが判明した。 この火災に対する気候変動の影響は定量化されていないが、気候変動により山火事がより頻繁かつ深刻になっていることがわかっている。 今日に至るまでこの土地を形作ってきた植民地化の歴史も影響を及ぼした。 メディアはこのような異常な火災の条件を作り出す化石燃料の役割について限定的な報道しかしていなかったが、マウイ郡は、化石燃料生産者は自社製品が引き起こすと知っていた気候変動による害について国民を欺いたとして、化石燃料生産者を訴えている。 例えば、訴訟では、山火事季節はもはやひとつ季節ではなく、一年を通して続く闘いであると指摘している。 残念ながら、現状では化石燃料会社はラハイナの惨状からの復興活動に費用を支払う必要はなさそうだ。 米国では、災害後の復旧活動の費用の一部は連邦緊急事態管理庁(Federal Emergency Management Agency /FEMA)からの資金によって賄われている。 しかし、災害の数が増加し、復旧費用が増大しているため、FEMA には増大するニーズを満たすのに十分な資金がない。 大幅な資金不足に陥った FEMA は近年、数十億ドル(約数千億円)規模の赤字を縮小するために議会の緊急追加資金に依存してきた。 私の同僚のシャナ・ウドバーディが書いたように、この資金不足は、FEMAが、過去に起きた災害からの復興を支援するプロジェクトを停滞させながら、差し迫った人命救助のニーズのために限られた資金を温存しなければならないことを意味している。 災害復旧のための議会予算のこのような延期は、住居を失ったり、避難を余儀なくされたり、歴史的に恵まれない人々を含む、十分なサービスを受けられていない人々に最も深刻な影響を与えている。 世界中の災害と災害対応 昨年は、モザンビークとマラウイの一部を破壊した記録的なサイクロン「フレディ」、リビアの壊滅的な洪水、ケニアの深刻な洪水と干ばつなど、大規模な気候と気象災害が世界中で発生した。 何千人もの人々がこれらの出来事の影響を受けており、回復までの長い道のりに直面している。 この回復を支援する世界的な取り組みが切実に必要とされており、動きが起こり始めている。 COP28では、待望の損失と損害基金(loss and damage fund)が運用開始された。 この基金の目的は、災害により被害を受けた人々に補償を提供することである。 基金の運用開始は前向きな一歩ではあるが、これまで各国が約束した資金は大幅に不足しており、これまでに基金に集まっているのはわずか 4億ドル(約600億円)に過ぎない。 気候変動により世界の安全性が低下し続ける中で、これは必要とされる金額に比べれば微々たるものである。 米国は 1,750万ドル(約26億円)の拠出を約束したが、歴史的に世界最大の排出国であり、世界最大手の化石燃料会社の多くが本社を置く国からすると、あきれるほど低額だ。 クライメート・アナリティクス(Climate Analytics)(訳注:ドイツの民間研究機関:新レポート発表、日本は石炭火力のフェーズアウトを(参考))は、世界最大の石油・ガス生産者の利益とともに損失と損害基金への誓約の必要性を示唆する新たな分析を発表した。 彼らの調査によると、わずか30年強(1985年から2018年)で、化石燃料生産者は 30兆ドル(約4,500兆円)の利益を上げ、その製品に関連した損害の部分的な計算は20兆ドル(3,000兆円)であった。 これは、化石燃料生産者が関連する気候変動の損害をすべて支払ったとしても、まだ 10 兆ドル(約1,500兆円)の利益を得ることができる可能性があることを意味する。 世界中の人々が化石燃料の害に苦しんでいることは明らかであり、これらの企業が経済的損害を補償する資金を持っていることは明らかである。 疑問は残る、これらの問題を橋渡しする政治的意志は存在するのか? 気候変動と紛争から利益を得る 世界中で災害復旧活動が地域社会のニーズに応えるのに苦労している一方で、化石燃料業界には資金に余裕があり、株主に記録的な配当金を支払い、自社株買いを実施している。 彼らが地球よりも利益を優先するために以前に何度も選んだ道を再びたどっているのを我々は見ており、これは、彼らの気候変動に関する公約の撤回と同時に起こっている。 化石燃料産業の高い利益は主に、世界がその製品に依存し続けていることに起因しており、企業自身がそれを維持するようロビー活動を行っている。 しかし、その利益は世界的な紛争によっても支えられている。 グローバル・ウィットネスの最近の分析によると、ロシアによるウクライナ侵攻以来、紛争でエネルギー価格が高騰する中、米国と欧州の化石燃料大手 5社が 25兆ドル(約3,750兆円)をかき集めたことが判明した。 化石燃料会社が利益を得る一方で、人々は苦しんでいる。 コースを変える時が来た 2023 年には、化石燃料からの温室ガス排出量は 1.1%増加した。 これは少量のように聞こえるかもしれない。しかしこれらの排出量を削減する必要があり、排出量削減目標の達成には程遠いことが何十年も前から分かっている世界では、いかなる増加も地球上の生命への脅威となる。 気候変動を引き起こす化石燃料生産の増加は、今後も大惨事を引き起こし続けるだろう。 このような増加により、化石燃料会社は今後も驚異的な利益を上げ続けることが可能になるが、米国の FEMA や世界規模の損害賠償基金など、災害対応への資金提供への取り組みは、依然として必要とされるものよりはるかに遅れている。 化石燃料会社は、彼等が正しいことをしているとは信頼できないことを何度も示してきた。 記録的な猛暑の影響が世界中で想像を絶する被害を引き起こしているにもかかわらず、彼らは気候変動に関する以前の公約を撤回し、彼らは信頼できないことを証明し続けている。 だからこそ、我々は化石燃料の迅速かつ公正な段階的廃止に向けて国民の圧力を維持し、このシステムを支える銀行の役割を検討し、業界の数十年にわたる偽情報と否定に光を当て、そして裁判所を通じて説明責任を求め続けなければならないのである。人々が自社の製品が引き起こした壊滅的な影響に苦しんでいる間、これらの企業が株主の私腹を肥やし続けることが許されないようにするための行動が必要である。 著者について シャイナ・サダイ(Shaina Sadai )は、憂慮する科学者連合の訴訟関連科学のヒッツ・フェロー( Hitz Fellow)である。 彼女は、海面上昇と世界のメタン排出の気候への影響について書いている。 |