Food & Water Watch, 2021年9月1日
モンサント−現在はバイエルが所有−は
消費者向けのグリホサート販売を中止する
としているが、それだけでは十分ではない


情報源:Food & Water Watch, Seo 1, 2021
Monsanto - Er, Bayer - Will End Consumer Glyphosate Sales. It’s Not Enough.
A fierce battle over the truth of glyphosate's cancer-causing effects has waged
for years as Bayer (formerly Monsanto) tried to influence the science and sway the EPA.
We've pushed to reveal their con-job for years. Now a deluge of lawsuits from
cancer-stricken consumers has the corporation taking glyphosate out of its
consumer-level product lineup.

https://www.foodandwaterwatch.org/2021/09/01/monsanto-er-bayer-
will-end-consumer-glyphosate-sales-its-not-enough/


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2021年9月月8日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_21/210901_F-W_Watch_
Monsanto_Bayer_Will_End_Consumer_Glyphosate_Sales_Not_Enough.html

 バイエル(旧モンサント)が科学に影響を与え、EPAを揺るがそうとしたため、グリホサートのがんを引き起こす影響の真実をめぐる激しい戦いが何年にもわたって繰り広げられてきた。私たちは何年もの間、彼らの詐欺の手口を明らかにするように圧力をかけてきた。現在、がんに冒された消費者からの訴訟の大洪水により、同社は消費者レベルの製品ラインナップからグリホサートを取り除こうとしている。
 消費者からの10万件を超える法的請求により、バイエルは先月、2023年からラウンドアップを含む住宅用除草剤からグリホサートを除去すると発表した(決して速いとは言えない)。バイエル(現在はモンサントを所有)は、グリホサートを別の代替品に置き換えると述べた(訳注1

 2015年、世界保健機関はグリホサートを発がん性の可能性のある物質として分類したが、当時はモンサントという社名であった同社は、発がん性があるという発見と矛盾する集中的なキャンペーンを開始した。これには、有害化学物質に健康の証明を与えるための”独立した”レビューを実施するために科学者に金を支払うこと、及び農薬のがんの影響をレビューする任務を負った環境保護庁(EPA)の職員に懇願することが含まれていた。この干渉は水をひどく濁らせ、グリホサートが人間にがんのリスクを及ぼさないという結論に至るよう EPAに影響を与えた可能性がある。

 しかし、私たちを保護することになっている政府機関がしなかったこと、その利益を保護することに熱心な企業が積極的にしなかったこと、そして何千もの費用のかかる訴訟がついに成し遂げられた。それでも、この住宅用製品からのグリホサートの自主的な撤退は、十分に進んでおらず、EPAがグリホサートを完全に禁止するまで休むことはできない。

 これは、モンサント/バイエルがひどい金儲け商売を続けるために、科学機関や政府機関をどのように操作したかについての簡単な歴史である。

 裁判所の文書は、ラウンドアップとがんの関連をを曖昧にするためのモンサントの戦略を明らかにした

 2017年3月、連邦判事は、安全であるという主張の下でグリホサートの販売を継続するために、モンサントが公の場での語り(public narrative)と EPAのレビューを捻じ曲げるためにやったことを詳述した裁判所の文書の封印を解いた

 たとえば、内部の発表資料(パワーポイント)は、発がんの可能性があるとする非常に不利な分類に対抗するためのモンサントの戦略の概要を示している。 ひとつの提案は、WHO ががんの評価に使用した動物データを新たに分析する論文を発表することであり、”その論文の大部分をモンサントが書くことにより、手間が省ける”と述べた。翌年、モンサントが資金提供した分析を共同執筆したヘルムート・グライムのような外部の科学者を採用することを提案し、当然のことながら、グリホサートは実験動物に対して発がん性はないと結論付けた。

 彼らはまた、論文を代作せ、”独立系”科学者に彼らの名前を借りるために金を支払い (訳注2)、彼らの指示に従わない科学者との協力を打ち切った。

 ラウンドアップのような農薬によって引き起こされる公衆衛生上のリスクを評価するための EPA の枠組は業界が資金提供する科学に大きく依存しているため、この種の事前に決定された結論主導のアプローチに対してプロセスが脆弱になる。グリホサートの代替品にはそれ自体の健康上のリスクがあり得るのに、それでもEPAによって青信号が与えられているのではないかと擁護者が心配しているのもそのためである。

 被害を受けたラウンドアップの使用者らやフード&ウォーターウォッチなどの擁護団体は、EPA が行動を起こさなかったときに行動を起こした

 EPAがグリホサートを禁止することで科学的に健全なことをするのを何年も待っていた間、私たちは自分たちで警鐘を鳴らし、研究を発表し、市民にその危険性について教育した。

 グリホサートを示すデータを以下にまとめた。
  • 内分泌かく乱物質であり、食品中のグリホサート残留物が許容閾値を下回っている場合でも、ホルモンレベルを妨害する。
  • 世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)によると、おそらく発がん性があり、非ホジキンリンパ腫と強く関連してる。その評価は、モンサント/バイエルに対して提起された訴訟の多くを支えてきた。
  • 特定の細菌の抗生物質耐性に寄与する可能性がある。
  • 生殖の問題や先天性欠損症に関連している可能性がある。
  • 私たちの食品には広く存在している。つまり、消費者レベルのラウンドアップ販売のこの自発的な停止は十分ではなく、EPA の行動が必要である。
 EPA が国民を保護し、グリホサートを禁止する仕事をする時が来た

 最終的に製品からグリホサートを排除する動きを発表したバイエルのプレスリリースは、食料品店の多くの食品に至る経路である大規模な農業用途でのグリホサートの販売を停止する計画がないことを確認している。

 この動きは、安全上の懸念のためではなく、訴訟リスクに対処するためだけに行われている。訴訟における請求の大部分は芝生や庭の除草剤使用者らからのものであるため、事前に芽を摘むこの措置により、いつ生じるかわからない将来の請求の主な原因が大幅に排除される。米国の専門家及び農業市場における同社のグリホサート製剤は従来通り入手可能である。

 この声明は、バイエル/モンサントが消費者に危害を加え続けることについて、彼らがその危害に対する責任から十分に保護されていると感じている限り、彼らには何の懸念もないことを意味する。

 これが、私たちが正しいことをするために企業に頼ることができない理由であり、私たちは EPA がきちんと仕事をし、どこであってもグリホサートを永久に禁止するよう主張しなければならない。


訳注:関連記事
訳注1:バイエル プレスリリース
訳注2


化学物質問題市民研究会
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