Quartz Africa 2021年4月12日
アフリカのプラスチック禁止は
環境を経済と戦わせている

キングスレイ・コボ

情報源:Quartz Africa, May 16, 2021
Africa's plastics bans are pitting the environment against the economy
By Kingsley Kobo
https://qz.com/africa/2007658/why-western-style-plastic-bans-
arent-working-in-africa/?ct=t(RSS_EMAIL_CAMPAIGN)


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2021年5月25日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_21/210516_Quartz_
Africas_plastics_bans_are_pitting_the_environment_against_the_economy.html



 多くの国、主にサハラ以南のアフリカでの飲料水の供給不足は、ウォーターサシェ(訳注:プラスチック製袋入り飲料水)の人気の高まりに牽引された新しいプラスチック経済を生み出した。

 アフリカの 54か国のうち 30か国以上が、2000年以降、徐々にプラスチック袋対策を採用している。しかし、専門家は、アフリカの大部分でウォーターサシェなどのプラスチック製品が継続的に使用されており、またそれらが及ぼす多くの脅威を無視していることを考えると、効果はわずかであると主張している。

 多くのアフリカ諸国では、使い捨てプラスチックが人々の日常生活の一部になっている。代替手段がなければ、市民はプラスチック循環、すなわち購入、使用、廃棄、そして再購入で生活せざるを得ない。多くの人々は、日常的に発生する廃棄物の環境への影響に気づいていないように見える。気づいている人の中には、不潔な状況について当局を非難する人もいる。

 ナイジェリアは、人口規模(2億600万人)と貧弱な給水施設のために、ほとんどの家庭には水道がなく、大陸で最も多くの水袋を消費している可能性がある。地元の報告によると、この国では毎年250万トンのプラスチック廃棄物が発生している。

アフリカのプラスチック輸入、1990-2017

Quartz | qz.com Data: Environmental Sciences Europe
注:研究者らは、10年以上にわたって利用可能なデータを使用してアフリカの33か国をレビューした。

 ”我々は誰も環境に配慮していない国に住んでいる。公共水道がないためナイジェリア人の 5人に3人が毎日プラスチック製の水袋を消費している状況下で、どのようにしてプラスチック製の水袋を根絶できるのか?”と、カノを拠点とする飲用水活動家のアブドゥラヒ・サリフは言う。

 サリフは、彼が住んでいるナイジェリア北部では現在、”多く市や周辺地域で7年以上、水道が干上がっている。公共水道が利用できなければ、完全なプラスチック禁止は機能しないと思いう。我々が現在しなければならないことは、環境を保護するためにプラスチック材料の適切な処分について人々を教育することである。”

 きれいな飲料水と雇用の重要なニーズを満たすために構築された繁栄しているプラスチック経済は、急速に都市化する大陸の脆弱な環境を保護する緊急の必要性と真っ向から対峙している。

問題のある、利益を生み出すサプライチェーン

 プラスチック袋は、主に包装に使用されており、ポリマーであるポリエチレンから作られている。ポリエチレンの原料は主に石油や天然ガスなどの化石燃料である。これは、プロセス全体が環境専門家の怒りを招くもう1つの理由である。

 この地域で最も一般的なポリエチレンはタイプ 2プラスチックで、買い物袋の製造や 500mlの小袋で販売される飲料水(通称純水)の包装に使用されている。このプラスチックは、技術的には高密度ポリエチレン(HDPE)として知られており、非生分解性材料である。

 ウォーターサシェのサプライチェーンは、LDPE(低密度ポリエチレン)プラスチックフィルムロールの販売業者から始まる。これらの販売業者は、主に中国とインドから製品を輸入し、包装関係者に販売している。次に、卸売業者に供給し、小売業者に販売し、道路のジャンクション、信号機、市場、スタジアム、パーティー、結婚集会などのイベントスポットで販売する。

 サハラ以南のアフリカの都市部の 63%近くの人々は、基本的な水道サービスにアクセスするのが難しいと感じている。ウォーターサシェにはいくつかの利点があり、低中所得者の間で人気がある。それらは、クーラーボックスまたは角氷で満たされたタライに入れて売られているため、安価で、どこでも入手でき、持ち運び可能で、新鮮である。この地域に冷蔵庫を持っている家庭はほとんどない。冷蔵庫を持つ人々はしばしば権力の不正や高額の請求に直面する。

 しかし、ほとんどの購入者が中味を消費後に軽量のその小袋を地面に捨て、水と風によって分散させてしまうため、アフリカではこれらの水運搬用バッグは深刻な廃棄物問題の象徴となっている。


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先月ナイジェリアのアブジャで開催されたラマダン初日のアルハビビヤモスクで断食中の男性が一袋の水を飲んでいた。 REUTERS/AFOLABI SOTUNDE
 ”これらの投棄された使い捨てプラスチックは、水路に流れ込み、排水管を詰まらせ、浸食を引き起こす”と、ベナン共和国で人気のあるエコスポーツ NGO である Course Verte Benin の共同創設者であるモデステ・アリマは述べている。 ”廃棄された水袋のあるものにはまだ水が残っているので、徐々に蚊の営巣地になり、アフリカで最大の致命的な病気であるマラリアを引き起こす可能性がある。”

 ”特にサハラ以南のアフリカのほとんどの都市の街路やビーチを見ていただきたい。プラスチック袋がいたるところに散らばっている”とアリマは言う。”それは我々の観光産業にとって良くない。汚い場所に行きたいと誰が思うであろうか? 緊急な行動が必要である。”

革新的なプラスチック禁止は反対に会う

 科学者によると、プラスチックごみは生分解せず、何世紀にもわたって残留する可能性がある。それらの生産と消費を削減することは、廃棄物の収集とリサイクルシステムが非効率的である地域の汚染を減らすであろう。南アフリカだけが成功したモデルを持っており、2018年にはプラスチック廃棄物の 3分の2近くがリサイクルされた。

 これに対抗するために、アフリカでのプラスチックの使用を規制するために 30以上の法律が可決されており、そのほとんどが薄い使い捨てプラスチック袋を対象としている。

 いくつかの経済的および社会的要因により、制限はほとんど無駄になっていいる。コートジボワールのアビジャンにあるフェリックス・フーフェ・ボワニー大学の経済学研究者であるマキシム・コウアディオは、プラスチックに取り組む前に、これらに最初に取り組む必要があると考えている。彼の推定によれば、彼は、水袋を含む国内での プラスチック袋の 2013年の禁止を、最大100万人にある程度の収入を提供する産業を閉鎖することの経済的影響を考えると「完全な大失敗」と説明している。

 ”代替プログラムなしで100万人を生存手段から外すことができますか?、彼らが腕を組んで見守ると思いますか?”とコウアディオは言う。 ”政策は激しい抵抗に直面し、我々は振り出しに戻った。再びあらゆるところにプラスチックを目にするようになっている。

 ガーナも同様の問題に直面しており、政府は多くの企業や家族が業界に依存していることを考えるとプラスチックの全面的な禁止を実施することはできないと言っているとコウアディオは説明する。 ”解決策は、使い捨てプラスチックが現在解決している問題を解決することであり、最終的にはそれらを不要にすることである。”

 クリーンな環境の擁護者たちは、プラスチック袋の禁止は必ずしも失業を引き起こすとは限らないと信じており、懐疑論者には、たとえば、世間の意識向上キャンペーンにより、プラスチック取り扱い業者に新たな製品に軸足を移したり、商売替えすることを推奨しているルワンダやタンザニアなどの環境にやさしい国から学んでもらいたいと考えている。

 アブドゥル・スレイマンは、政府が 2005年に使い捨てプラスチックを非合法化したとき、タンザニアのダルエスサラームでプラスチック事業を成功させていた。しかし、その後早い時期に彼は軽い段ボールのパッケージに転換することに決めたが、彼が言うにはそれは新しい文化に完全に適合した。

 規制だけでなく、プラスチックの健康への影響によっても促され、”以前は国内でプラスチック事業に携わっていたすべての人々が、今では別のことに取り組んでいる”とスレイマンは言う。 ”仕事を確保するという口実で我々の健康と環境を犠牲にすることは考えられない。ルワンダはアフリカでプラスチック・ゼロを求める理想的な例であるが、その国から雇用がなくなったのか?”(ルワンダは 2008年にプラスチック袋を禁止した。施行に使用された措置のいくつかは批判されている。)

プラスチック汚染に対する教育

 中部アフリカ地域の当局は、使い捨てプラスチックの荒廃影響に対する国民の意識向上キャンペーンに多額の投資を行ってきたが、いくつかのメディアや活動家らの報告が環境に優しい態度の向上やプラスチック処分の改善を示しているガボンやコンゴ共和国(ブラザビル)など一部の国を除いて、その成果はささやかである。

 しかし、この地域で最も人口の多い 2つの国であるコンゴ民主共和国(キンシャサ)とカメルーンでは、水袋がまだ広く使用されている。 ”当初、カメルーンの公共水道の断続的な不足が水袋の普及につながたったが、人々はすぐにそれが儲かるビジネスであり、雇用機会を生み出していることに気づき、多くの人々が関わることとなった”とヤウンデに拠点を置く開発・環境センターのブレイズ・オリンガは言う。 ”一部の家族は、子どもの学費の支払い、給餌、病院の請求書の支払い、家賃の支払いのために水袋を販売している。水袋の流通事業で儲けて家を建てたり車を購入した人はたくさんいる。”

 今年3月、キンシャサ州知事のジェンティニ・ンゴビラGは、コンゴ民主共和国の首都でのプラスチック袋の製造と商業化に関与する人々に対して、課徴金や懲役刑を含む厳格な措置を発表した。この動きは国際的な環境団体グリーンピースによって歓迎されたが、意味のある変化はまだもたらされていない。

 環境保護論者とビジネスマンが、一見受動的な当局の監視の下でアフリカのプラスチック袋の運命をめぐって衝突するにつれて、一部の声は実際的なアプローチを求めている。

 政府、製造業者、ユーザーはプラスチックの管理に責任を持ち、クリーンな環境が人々の健康をサポートする方法を優先する必要があると、ヌアクショットを拠点とする NGO ネイチャー・モーリタニア(」NatureMauritanie)の創設者兼議長であるイェリ・ディアワラは述べている。

 ”現在の我々の社会的および経済的状況を考えると、多くのアフリカ諸国でプラスチック禁止を完全に実施することは難しいであろう。プラスチック袋は基本的な作業に毎日使用されている”と彼は言う。 ”問題はプラスチックそのものではなく、不注意な投棄やポイ捨てなどのユーザーの廃棄物処理慣行にあると思う。”

 ディアワラは、廃棄物の収集とリサイクル・システムの改善、及び廃棄物の環境への影響に関する教育によって、”アフリカのプラスチック汚染は大幅に減少するはずである。ヨーロッパはアフリカよりも多くのプラスチック廃棄物を生成しているのに、”なぜヨーロッパの都市はアフリカの都市よりもきれいなのか? ”と述べている。



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