Environmental Health News (EHN) 2020年7月6日
論説: PFAS 化学物質 − もうひとつの免疫系の脅威
ジャミー・デウィット、 フィル・ブラウン他
この世界的な PFAS パンデミックは誰にとっても恐ろしく、家族が免疫系に
害を及ぼすかもしれない化学物質に暴露したことを知ることはもっと恐ろしい

情報源:Environmental Health News, July 6, 2020
Op-ed: PFAS chemicals - the other immune system threat
"This global pandemic is scary for everyone and it's even scarier
knowing your family has been exposed to chemicals that may hurt the immune system."
Jamie Dewitt , Phil Brown , Courtney Carignan , Shaina Kasper , Laurel Schaider and Maia Fitzstevens
https://www.ehn.org/pfas-and-immune-system-2646344962.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2020年7月17日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_20/200706_EHN_Op-ed_PFAS_chemicals_the_other_immune_system_threat.html


 ”2014年に、家族が高レベルの PFAS を含む汚染された飲料水にさらされたことを知ったとき、私の世界は永遠に変わった。それ以来、家族の健康について心配し続けている”とニューハンプシャーの居住者であり、PFAS コミュニティの健康唱道者であるアンドレア・アミコは全国的な活動家になった。

 ”影響を受けたコミュニティには、彼らの暴露について選択の余地はなかった。我々は、我々の知識や同意なしに汚染された。そして今、私たちは不安に取り組み、 COVID-19 に対してもっと脆弱になるであろう PFAS 汚染によって害を受ける可能性がある私たちの免疫システムを心配する必要がある”。

 アンドレアは一人ではない。彼女は、家族の生命と、彼らの PFAS への暴露が COVID-19 と戦う彼らの能力にどのように影響するかを恐れている PFAS に暴露したコミュニティに住む全国の多くのリーダーのひとりある。

 PFASは、1940年代から製品を非粘着性、防水性、及び防汚性にするために使用されている化学物質のグループである、パーフルオロ-及びポリフルオロ-アルキル物質である。 レインジャケット、カーペット、室内装飾品、調理器具、ファストフード容器、デンタルフロス(歯間の歯垢や食片を除去し清掃するための細い糸)などに使用されている。

 極めて高い環境残留性のために”永遠の化学物質”と呼ばれ、それらは世界中の環境サンプル中で発見されている。 推定1億1,000万のアメリカ居住者が PFAS で汚染された水道水を使用している、これは一部には特定の泡消火剤の広範囲な使用が原因である。 疾病管理予防センター(CDC)は、ほとんどのアメリカ人の血中に PFAS を発見した。

 PFASは、低レベルの暴露でも、高コレステロールやがんを含む多くの健康への影響と関連している。

 しかし、この世界的なまん延で最も懸念されるのは、PFAS への暴露が、COVID-19 や他の感染因子との闘いにおいて非常に重要な免疫系の抗体を作るための能力を抑制することである。

 暴露した子どもは、一般的な小児ワクチンへの反応の低下−10代まで残る障害−が報告されている。 PFAS に曝露した成人の研究でも、インフルエンザ・ワクチンに対する反応の低下が示されている。

 我々の研究は、PFAS に暴露した実験動物の抗体が減少し、PFAS に暴露した人々に見られたことを確認し、PFAS が免疫系に有毒であることを確信させるものである。

 先月、有害物質疾病登録局(Agency for Toxic Substances and Disease Registry)は PFAS 暴露と COVID-19 との間の潜在的な共通点について声明を発表し、PFAS 暴露をワクチンに対する抗体反応の低下と感染症への耐性に結びつける調査結果を引用した。

 ポリ塩化ビフェニルやトリクロロエチレンなど、免疫システムに影響を与える他の合成化学物質とは異なり、PFAS は米国政府によって規制されていない(訳注1)。 現在、PFAS には連邦政府の飲料水基準はない。

 環境内で”永久の化学物質”であるだけでなく、PFAS は数日、数週間、数か月、または数年間人体に留まる可能性がある。 これは、私たちが毎日 PFAS を体内に取り込むとき、私たちが飲む水、私たちが食べる食物、そして家や職場の製品を通じて、一部は時間の経過とともに体内に蓄積されていくことを意味する。

 米国環境保護庁(EPA)は、2つの個々の PFAS について 70兆分の1(70 ppt)の飲料水”健康勧告レベル”を持っているが、この勧告は強制力のある基準ではないため、公共の水道水を監視、または PFAS を除去するための処理を求められない。さらに、このガイドラインは 5,000を超える個々の PFAS のうち 2つのみに対応しており、特に子供たちの敏感な免疫システムを保護するのに十分なほど低くはない。

 法的強制力のある連邦基準により、公衆は飲料水中の PFAS から保護される必要がある。我々は、このような PFAS の基準を前進させるための EPAの取り組みをサポートする。

 これらの化学物質を環境、飲料水、および一般的に使用されている製品に残留することを許す現在の政策は、人間の健康と我々の未来を危険にさらしている。化学業界は毒性があることを知りながらこれらの化学物質を製品に添加し続けており、EPA は市場向けの新しい PFAS 処方をまだ承認している。しかし、私たちは協力して、より良い未来を作ることができる。

 なすべき責任のある行動は、方針管理の変更、消費者の需要教育より安全な代替策への投資、コミュニティの活動を通じて、より健康的な製品に移行することである。 これらの変化には、大胆で調整された行動が必要であるが、我々が一緒に働けば、より健康でもっと弾力のある未来を築くことができる。

 アンドレア・アミコの家族は、元空軍基地の泡消火剤で汚染された飲料水により、高レベルの PFAS に暴露した。

 PFAS が家族の健康に及ぼす長期的な影響が心配で、彼女はよく眠れずにいたが、現在はさらに、COVID-19 にかかるリスクが高いのではないか、症状が長びくのではないか、いつワクチンが利用できるのか、それは PFASへの曝露が免疫系に及ぼす潜在的な影響があっても、家族を保護するのに十分効果があるのかということについて心配する負担が増えている。

 ”この PFAS の世界的なまん延(パンデミック)は誰にとっても恐ろしく、あなたの家族が免疫系を最も必要とするときに免疫系を傷つける可能性のある化学物質にさらされていることを知ることはさらに恐ろしいことである”。

 著者の所属:ジャミー・デウィット:イーストカロライナ大学; フィル・ブラウン:ノースイースタン大学; コートニー・カリニャン:ミシガン州立大学; シャイナ・カスパー:コミュニティ・アクション・ワークス; ローレル・シュナイダー及びマイア・フィツステベンス:サイレント・スプリング・インスティテュート
 テスティング・フォアピースのアンドレア・アミコも貢献した。

 彼らの見解は、必ずしも Environmental Health News, The Daily Climate 又は publisher, Environmental Health Sciences の見解を表すものではない。


訳注1:欧米日の PFAS 取り組み
  • The Intercept 2019年12月20日 ヨーロッパ諸国は有害な PFAS 化学物質を 2030 年までに廃止する計画を発表(19/12/28)

  • IPEN 2019年10月4日 プレスリリース 国連専門委員会 消防士らの健康を損なう有害化学物質の世界的廃絶を勧告(19/10/09)

  • 【アメリカ】EPA、PFOAとPFOS 規制の包括的アクションプラン発表。飲料水含有上限や地下水除染等 (Sustainable Japan 2019/02/21)

  • 米国環境保護庁(EPA)、初めての包括的全国 PFAS 行動計画について公表 (食品安全委員会 2019年2月14日)

  • PFOS目標値、1リットル当たり50ナノグラム 厚労省検討会が水質基準承認、4月から適用 (琉球新報 2020年2月20日)


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