The Intercept, 2020年4月19日
アフリカの爆発的なプラスチックの悪夢
アフリカはゴミの中で溺れているので
プラスチック関連産業は好調である
シャロン・ラーナー
情報源:The Intercept, April 19, 2020
AFRICA'S EXPLODING PLASTIC NIGHTMARE
As Africa Drowns in Garbage, the Plastics Business Keeps Booming
By Sharon Lerner
https://theintercept.com/2020/04/19/africa-plastic-waste-kenya-ethiopia/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2020年4月30日
更新日:2020年5月 7日 追加 2020年5月16日 追加 2020年5月27日 追加

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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_20/
200419_The_Intercept_Africas_Exploding_Plastic_Nightmare.html



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2020年2月29日、ダンドラ投棄場でミリアム・ニャンブラと彼女の11歳の姪ローズマリーは捨てられた段ボール箱、紙、プラスチック・ボトルを回収している。ニャンブラは毎日平均20キログラムの廃棄物を集める。 Photo: Khadija Farah for The Intercept
 ローズマリー・ニャンブラは週末を伯母ミリアムとともにナイロビのダンドラ廃棄物投棄場でプラスチックを回収して過ごす。彼らが他のプラスチック業者に売るボトルは、廃棄された注射器、割れたガラス、糞便、携帯電話ケースの破片、リモコン、靴底、装身具、おもちゃ、ポーチ、バッグ、見分けのつかない無数の薄いプラスチック膜の断片などと入り混じっているので、その仕事は時間がかかり、危険である。しかし、11歳のローズマリーは彼女の努力は報われるであろうと希望を持っている。彼女の母親が死んで以来、一緒に住んでいる 6人のいとこの何人かは、既に学校をやめてしまったが、それは彼女の伯母が学費を払えないからである。もしローズマリーが小学校と中学校を卒業でき、その後に大学と医学校に行ければ、彼女はダンドラにきっと戻ってくると誓う。”私は多くの人々がここで病気になるのを見ている”と、ローズマリーは最近の土曜日に、悪臭を放つゴミ山の頂上で言った。”もし私が医者になったら病気の人々を無料で診てあげる”。

 ローズマリーが廃棄されたプラスチックからの稼ぎで学費を払うのに十分な金を稼ぐのに長い時間がかかるであろう。首都ケニアの東部に 30エーカー以上広がるダンドラで価値のあるどんなことも争いとなる。地域の業者らのグループは投棄場内で廃棄物を売買したり回収する人々を管理し、ある地域に入るのに入場料さえとっている。鶏、牛、及び山羊がゴミ山の上の彼等自身の放牧地で囲い込まれている。そして廃棄物回収者らは時には、最良の発見物のために争う。 投棄された飛行機の機内食は激しい取り合いを引き起こす。勝者は誰でも、古い乾燥したロールパン、凝固した肉、焼き過ぎたパスタなど、どのような小片も貪り食い、小さなバター容器の中身さえ、そのプラスチック容器をゴミの山に放り投げる前に食べた。

 投棄場の縁に沿って待機する業者らは、ミリアムが週 7日で集めた PET(ポリエチレンテレフタレート)の飲料ボトルをキログラム当たり 5セント以下で−彼女がこれもまた集めて折りたたんだ段ボール箱よりは高く、しかし同じ重さの金属缶に彼らが払う金額よりはるかに安く−買う。プラスチック・ボトルを 1キログラム集めるのに多くの時間が、日数すらかかる。そしてそれらすべてを収納できるディブラス(diblas)と呼ばれるバッグは子どもたちが運ぶには重すぎ、大きすぎる。

 地元の若者組織であるダンドラ・ヒップホップ・シティは、投棄場の近くに住んでいて、1キロのプラスチックを集める力も時間もない子どもたちが集める個々のボトルやその他のプラスチックで何かを手に入れる方法を考え出した。投棄場から 1ブロック離れた場所にある若者組織が運営する”銀行”で子どもたちは、例え 1個のプラスチック・ボトルでも、ポイントを得ることができ、子どもたちはたまったポイントで料理用油、小麦粉、野菜、その他必需品と交換できる。近隣で育った一人のヒップホップ・アーティストにより資金提供された同組織はまた、投棄場の縁にある建物の中で若者向けプログラムを運営している。手描きの絵画芸術で飾られ、廃棄物を利用した椅子やソファーが置かれた建物の部屋は、子どもたちが古いパソコンで音楽を作曲したり、書いたり、ゲームをしたり、ただ時間を過ごすための場所を提供している。

 しかし同組織が集めたプラスチックを非公式な市場で得るわずかな金額では銀行を通じて分配する食料をまかなうことができないので、ダンドラ・ヒップホップ・シティは、そのプログラムを支えるために、その従業員たちや彼らの友人たちからの寄付金を利用している。同組織は、完ぺきな企業スポンサーの様に見えたコカコーラ社から助成金を得ようと試みた。2,000億ドル(約22兆円)以上と評価されるコカコーラ社はアフリカを”同社が今後進むための中核的な成長の原動力のひとつ”であるとみていると、同社の CEO ジェームス・クインシーは最近書いた。そして、飢餓、無視、そして廃棄物投棄に関連する様々な健康問題の被害を受けているダンドラの子どもたちは、同社のボトルの多くを回収しており、時には学校にいるべき時にそれ等を集めている。

 2018年9月にコカコーラ社は若者組織と会うために代表団を投棄場に派遣した。ダンドラ・ヒップホップ・シティのプログラム・マネージャーであるチャールス・ルカニアは、代表団と面会し、同社がどのように”銀行”プロジェクトを支援できるかを説明した。その後、面会したコカコーラ社マーケッティング・スタッフの何人かに提案書と予算書を送った。しかし、その訪問、そして提案はどのような資金支援をももたらさなかった。その代わり、”彼らは子どもたちが買うことができるコカコーラがいっぱい詰まった冷蔵庫を我々に与えると提案した”とルカニアは言った。しかし投棄場の子どもたちの大部分は炭酸飲料を買うことができないと彼は付け加えた。”子どもたちは持っっているわずかなお金を食べ物を買うために使う”。

 同月に開催された、何日かのクリーンアップ・デーのイベントで、同社はその若者組織と提携したが、それらのイベントは直接的な財政支援を何もたらさなかった。その代わり、コカコーラ社のこれらの提携への貢献はコカコーラの提供であり、子どもたちが炎天下ゴミ拾いに数時間費やした後にのみ、与えられた。”そして、全ての飲料はプラスチック・ボトルに入っていた”とルカニアは言った。

 The Intercept からの問い合わせに答えたeメールの中で、コカコーラ社のアフリカ西部及び東部の報道部門長カミラ・オズボーンは、”我々のボトリング・パートナーであるケニアにあるコカコーラ・バーブリッジ・アフリカが、ダンドラ・ヒップホップ・シティのイベントのひとつで、水分補給とボトル回収用容器を提供した。しかしオズボーンによれば、”同社とケニアのボトリング・パートナーはその若者組織からの資金支援の具体的な要求について知っておらず”、ダンドラ・ヒップホップ・シティとの”どのような直接的な関与も持っていなかった”。

 オズボーンのeメールはまた、”世界中のプラスチック問題をひとつだけの組織では解決することはできない”と述べていた。

 公平に言えば、コカ・コーラ社は、自社製品の容器の大掃除(回収)のコストを公衆に押し付ける多くの会社の中のひとつである。コカコーラ社はアフリカ及び世界の両方でプラスチック廃棄物の最大の生成者であったが、2019年世界プラスチック廃棄物ブランド監査によれば、プラスチックを製造し、それを容器のために使用している全ての種類の会社は、彼等の製品によって引き起こされる危害に対応し防止するための費用への対処を社会に委ねている。

 アメリカでは、この企業のコストの外部化が彼等のプラスチックごみの回収、運搬、処理の責任を自治体に押し付けている。数十年間この責任は、廃棄物の約 70%を中国に輸出することにより、隠されてきた。しかし中国が 2018年に、ほとんどのアメリカのプラスチック廃棄物の流入に対するドアを閉めて以来、いくつかの都市はリサイクルする金がないことがわかり、その実施を断念した結果、広い範囲で不都合が引き起こされ、プラスチックの残留性が知られるようになった。

 現在も世界のプラスチック危機において不釣り合いな重荷を負わされている貧しい諸国では、その様子は異なる。多くの富める国では環境に対する侵害は市場を制約するが、コロナウイルス感染症の大流行の後には”プラスチックの受容性”に影響を及ぼすように見えるが、プラスチックとそれに包装された製品の使用は、アフリカ及び発展途上国のどこでもまだ急速に増大している。一方、中国の廃棄プラスチックに関する政策変更以来、アメリカ、オーストラリア、及び多くのヨーロッパ諸国は、廃棄物の管理が十分にできない他の諸国に彼らの廃棄物を輸出している。廃棄物を処理するための基盤がなく、又は他の国をだまして廃棄物をつかませるための資金がないので、プラスチックはこれらの国にどっと押し寄せて、水路を満たし、道路や畑を詰まらせ、そして動物の飼料に複雑に混ざり込む。プラスチックは生物分解しないので、細かい断片が水中、土壌中、及び大気中に数世紀間、留まる。

 プラスチック危機はアメリカでは行政レベルで大きく展開しており、地方政府にとってプラスチック廃棄物管理の増大するコストやロジスティックが大きな負担となっているが、政府の資金による廃棄物回収システムやリサイクル・システムを持たない発展途上国では、これらの負担は個人に降りかかる。

 ケニアでは、約1,800万の人々が 1日当たり 1.9ドル(約 210円)以下で生活しているが、世界で最も利益をあげている会社のいくつかによって押し付けられる責任は、ローズマリーや彼女の伯母の様な世界で最も貧しい人々に降りかかる。そしてケニアは、環境破壊に加えて、プラスチックが重大な人権と児童労働の問題を引き起こしている数多くの発展途上国のひとつである。

投棄、投棄、焼却 (20/05/07)追加

 最良の状況であっても、プラスチック・リサイクルは非常にうまくいくというわけではない。無限にできるガラスとは違い、プラスチックは1回リサイクルされただけで著しく劣化する。”使用後処理のどの段階でもポリマーの機能的品質は劣化する”と、マサセーチューセッツ大学ローウェル校の名誉教授ケネス・ガイザーは、様々なプラスチックとなる分子について説明した。”ポリマーはリサイクル・プロセスの間に直線形分子結合が切断又は破壊されるので、一般的に強度、安定性、及び成形性を失う”と、環境的に適切な材料センターを創設したガイザーは述べた。全てのプラスチックは化学添加物を含むが、それは色、成形性、及びその他の属性に影響を与える。そしてそれらの化学物質はさらにリサイクル・プロセスを複雑にする。”だから、たとえ実験室でポリマーを再溶融して改質することができても、工業的に達成することは容易ではない”。

 プラスチックのリサイクルは、洗浄、分類、すりつぶし、次に細かくしたプラスチックをフレークと呼ばれる小片にし、最後にそのフレークを新たな製品に変えるプロセスからなるが、裕福な国はほとんど、プラスチックのリサイクルをしていない。アメリカではプラスチックのリサイクル率は 2014年がピークで 9.5%であった。基盤が整備されていない発展途上国では、そのプロセスはより難しくなり、そのための支払いはもっと難しくなる。世界中で、リサイクル・プラスチックの価値は、”バージン”又は新たに製造されるプラスチックのために下げられている。それは、プラスチックを作るための化石燃料は補助を受けているので低価格であり、さらにその価格は製品のクリーンアップ・コストを含んでいないからである。

 ナイジェリアでは、空の金属缶 1キロは、同じ重さの廃プラスチック容器より 10〜15倍高い。ザンビアでは”誰もそれを買わない”と子どもたち環境健康財団のディレクター、マイケル・ムセンガは述べた。”人々はそれをある場所から他の場所に動かし、それを焼却するだけである”。

 インドでは、プラスチック回収に金銭的動機がない場合には、埋め立て場のプラスチックを含む廃棄物は急速に積みあがる。ピラナ山(Mount Pirana)と呼ばれる 20メートルを超える高さのプラスチックと有機物の混ざった廃棄物の山がインド西部の都市アーメダバードの学校の近くにそびえている。彼等と一緒に活動している環境人権活動家マヘシ・パンドヤによれば、毎日4,000トンの新たな廃棄物がその埋め立て場に加えられ、その近くに住む子どもたちは、頭痛、神経痛、呼吸器系疾患、及びがんに苦しんでいる。


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エチオピアのアジス・アベバのサミット・ロード沿いの空き地にプラスチック業者が廃棄物の買い取りに集まっている。Photo: Sharon Lerner/The Intercept
 エチオピアの首都アジス・アベバのサミット・ロード近くの狭い区画でハラ・デベダと彼の友人らは、過去10か月間、リサイクル・プラスチックのわずかな利益で生活している。車が傍らを走り。道路の中央で山羊が居眠りする中で、業者らはその大部分が女性で、背中と頭に廃プラスチック・ボトルを詰めた大きな袋を載せてバランスを取りながら運ぶウェイスト・ピッカーからプラスチック・ボトルを買う。デベダと彼の仲間たちはもっと大きな袋に分別し、それらを他の業者に売り、彼らはトラックでリサイクル業者までボトルを運ぶ。この非公式の経済活動のそれぞれの段階における利益幅はキロ当たりわずか数セントである。週に7日、1日10〜12時間働いて、彼らのビジネスをアムハラ語(エチオピアの事実上の公用語)で友達を意味するグワデンヨチと呼ぶ若いプラスチック業者らは、寝泊まりするための共有の部屋借りるのにのに十分な稼ぎである。

 しかしプラスチックの値段はここでも下がっている。最も高価な樹脂−濃くて澄んだ”オバマ”と呼ばれるプラスチックでさえ価値を失っている。運のよい日には、他のプラスチックから分けて特別な赤い袋に保管されている丈夫なプラスチックはキロ当たり 1ドル以上になることもある。様々な人種の人々を取りまとめて当地では愛されたアメリカの前大統領のように、ボトル 6本を収納するために使用される”オバマ”は統一のシンボルとして見られている。しかしアメリカでも、そして世界中でも、プラスチックは、それが引き起こしている甚大な汚染に誰が責任を持つべきかということについて完全な意見の対立を生み出している。

大きな見解の相違

 アメリカ議会に提出されたふたつの法案は、プラスチック危機への対処方法について、明確に異なる見解を示している。ひとつは、「我々の海を守れ法 2.0 (the Save Our Seas Act 2.0)」であり、それは我々のリサイクル・システムを改善するために税金を使用し、既存のプラスチック廃棄物の用途を探すというものである。同法案はまた、リサイクルされたプラスチックを車や橋を造るために利用する可能性への研究に資金を出すというものである。同法案は共和党上院議員ダン・サリバンにより昨年6月に提案され、1月に上院を通過しており、プラスチックの化学成分の製造者を代表する業界団体のアメリカ化学工業協会によって支持されている。

 もうひとつの法案は、2月に上院に提出された「プラスチック汚染をなくす法(the Break Free From Plastic Pollution Act)」であり、異なる展望からプラスチックにアプローチしている。”我々が持っているシステムを使用する方法では、この危機から脱出するすることはできない”ということを信じて、その法案の民主党共同提案者、上院議員トム・ウダルと下院議員アラン・ローウェンタールは、全国的な容器払い戻しプログラムを創設し、新たなプラスチック製造プラントの建設を一時的に停止し、ある”不必要な使い捨てプラスチック製品(single-use plastics.)”を排除することにより、プラスチック廃棄物の責任を製造者にシフトすることを 2022年中に実施するという新たなシステムを提案した。その法案は、アメリカのプラスチック廃棄物は他の国に輸出されないことを検証するための措置を含む。

 コロナウイルス危機の前であっても、2月初旬にニューヨークタイムズ紙が ”期待薄” と述べたウダル法案は、ワシントンで困難な戦いに直面した。コロナ感染症の大流行が始まって以来、産業はその世界的危機を彼らの製品を促進するひとつの機会として、それに飛びついたので、同法案の見込みはいろいろな意味で薄くなった。

 プラスチック製造のあらゆるレベルに関わっている会社を代表する業界団体である米国プラスチック工業協会は、使い捨てプラスチック製品とその他のプラスチック製品を製造している彼らのビジネスは外出禁止令(stay-at-home orders)から除外されるべきことを求める手紙のフォームを会員会社に提供した。”多くの医療機器はもとより、医薬品包装から医療機器の包装までプラスチックは、医療従事者、患者、及び消費者の安全を確保するために極めて重要である”とする手紙のフォームは ”[州又は地方当局]”に宛て、説明している。”我々は、貴殿が[当社]をこの緊急時に’重要であると指定するよう要請する”。

 3月に、そのプラスチック業界団体は、米国保健福祉省長官アレックス・アザールに、”使い捨てプラスチックに見られる健康と安全の便益に関する公的声明”を出すよう求めた。

 一方、米国プラスチック工業協会の一部門で、プラスチック禁止に抵抗し押し返そうとする米国リサイクル・プラスチック・バッグ連合の執行ディレクターのマット・シーホルムは、再使用可能な買い物袋−又はニューヨーク・ポストが最近書いたように”虫がわく(bug-breeding reusable grocery bags)再使用可能な食料品買い物袋”は、感染症大流行中は健康にとって有害であると主張するウォール・ストリート・ジャーナルフォーブスフォックス・ニュース及びその他の報道機関の記事及び評論をツイッターに投稿している。コロナウイルスはまたプラスチック上でも生きることができる一方、それらの記事は感染源として食料品買い物袋に焦点を当てている。ほとんどはライアン・シンクレアという名の一人の研究者の研究を引用している。彼はプラスチック工業協会が米国保健福祉省長官アレックス・アザールに送った再使用可能な食料品買い物袋によってもたらされる脅威を証言する宣誓供述書を準備した。

 シンクレアは本件に関して3編の研究を発表している。ひとつは、2011年からアメリカ化学工業協会によって資金提供された研究である。2015年及び 2018年に発表された他の研究は、カリフォルニアを拠点とする「環境安全連合(Environmental Safety Alliance)」という名の不透明な団体によって支援された。この団体の事務局長は、元銃ロビーイストであり、法は聖書に基づくべきであると信じている。同団体は、少なくとも2012年以来、再使用可能な買い物袋の使用に反対して活動を行なっている。2018年の研究は再使用可能な食料品買い物袋によってもたらされる感染症のどの様な脅威も、手洗いと再使用可能な袋を洗濯する必要性についての公的な教育を行なうことによって対処できると結論付けているにもかかわらず、パンデミック中、プラスチック産業は使い捨てプラスチック袋の禁止は撤回されるべきと主張するためにそれを使用している。プラスチックの化学成分を製造する石油化学産業もまた、環境規制の後退を求めてパンデミックを悪用し、多くの場合米国環境保護庁は受け入れている

 いくつかの産業のまき返しはまた、ヨーロッパでも見られる。プラスチック貿易協会は最近、欧州委員会に対して使い捨てプラスチック製品の禁止の全てを解除し、2021年7月に発効すると予想される全ヨーロッパでの禁止の実施を遅らせるよう要請書を書いた。産業側は同様な要求をトルコドイツ、及びイタリアでも行った。

 それにもかかわらず、ヨーロッパとカナダで使い捨てプラスチックの禁止が通過し、来年の発効に向けて順調に進んでいる。そしてプラスチック産業のご都合主義は、何らかの形で使い捨てプラスチックを制限する、少なくとも世界で 127か国による反プラスチック立法の波を覆すために、ほとんど何もできなかった。世界のプラスチック需要に最も大きな打撃を与えると予想される政策−中国のある種の使い捨てプラスチックの禁止−が 1月に法律となり、今年末までに中国の都市で発効することになっている。

 プラスチック禁止で世界をリードするアフリカでは、36以上の法律が現在プラスチックの使用をを制限している。セネガルで最近採択された全ての水用小袋とプラスチック・カップの禁止は4月20日に発効することになっている。ケニアではプラスチック袋の禁止は依然として有効であり、成功であると広く見られている。2017年にその法案が採択されて以来、以前は廃棄されたプラスチック袋が風で街路を舞い、水路を塞ぎ、木の枝に引っかかっていたのが、ほとんど見られくなった。

 ケニア政府はまた、国立公園内及び保護区内でボトルを含んで全ての使い捨てプラスチック製品の禁止を採択し、6月に発効の予定である。しかし、ケニアの写真家でプラスチック袋の禁止を後押ししている活動家のジェームス・ワキビアは、保護区は国土の約11%だけであり、プラスチック・ボトルのもっと広い範囲での禁止は難しいであろうとしている。ワキビアは、彼が4年間実施しているプラスチック袋を禁止するキャンペーンへの反対にはほとんど会ったことがないと述べたが、全国的なボトル禁止は飲料会社から異なる応答を引き出すであろうと予測している。

 ”産業側はそれを受け入れないであろう”と、ワキビアは述べた。プラスチック容器入りの飲料販売はケニアで繁盛しており、ほとんど全ての会社がプラスチックに替わるガラスの使用を止めた。彼らはそのような考えをやめさせるためにどのようなことでもする。法廷に出向き、批評家に金を払い、狂気じみたマーケッティングを行ない、環境保護の名の下にグリーンウォッシング(greenwashing)を行なう。

 実際にケニアの国家環境管理機関が2018年1月にプラスチック・ボトルの全国的な禁止の可能性を強めた直後、コカ・コーラ、ユニリーバ、及びケニア製造者協会は、ケニアのプラスチック産業が PET プラスチックのリサイクルを”自主管理”するための取り組みであると自から説明する会社、PETCO の創設を発表した。会社は 2010年に同じ名前で同様な取り組みを始めたが、翌年、その機能は停止された。

  PETCO は、持続可能性を示す悪名高い矢印三角の緑色のロゴを持ち、キャッチフレーズ”#do1thing. Recycle (ひとつのことをやれ、リサイクル)”を使用している。しかし、 PETCO は環境団体ではなく、そのオフィスを 12以上あるメンバー会社のひとつであるコカコーラのナイロビ本社に置いている。そして PETCO の設立は、全国的プラスチック・ボトル禁止についてさしあたり関係ないように見えるが、PETCO は明らかにプラスチック廃棄物問題を解決していない。コカコーラ及びその他の飲料用 PET ボトルは国中で散乱しているのが見られ、リサイクル PET プラスチックを使用することを意図されたプロジェクトは十分な材料を持っていないとを報告している。それは、 PETCO は 2019年にプラスチック・リサイクル市場のための助成にわずか 385,400 ドル(約4,200万円)しか提供しなかったためかもしれない。その金額は、貧しいケニア人にとっても、プラスチック廃棄物を回収し処理するために十分ではない。

  PETCO ケニアの支社長ジョイス・ワンジルは、同社の助成金は、”市場のリサイクル業者との友好関係を保ち、彼らが国際的に競争力のあるフレークやペレットを製造するのに役立つ”と述べた。ワンジルはまた、コロナウイルス危機の間、PETCO のいくつかのメンバー会社は、ケニアの廃棄物ピッカーにマスク、手指消毒液、及び食券を提供していると言及した。彼女は彼らを”廃棄物業者(astepreneurs)”と呼んだ。

1%の解決(20/05/16)追加

 環境的によいことをする戦力として PETCO を前進させるという決定、及び拘束力のある立法を先取りすることになるであろう自主的解決は、プラスチック危機の高まる意識に対応してプラスチック産業が採用した世界的戦略と一致する。昨年、 BASF, Chevron Phillips Chemical Company LLC, Covestro, Dow Chemical, Exxon Mobil, and Formosa Plastics を含むプラスチック製造い関わる主要な会社は、プラスチック廃棄物を終わらせるための連合(Alliance to End Plastic Waste)を結成した。同グループは、プラスチック廃棄物の環境中へ流をれ止めることを目的として 15億ドル(約1,600億円)を約束した。それは、会社の約束が海からプラスチックをきれいに片付けるのに必要な概算コスト 1,500億ドル(約16兆円)のわずか 1%であるということ認識するまでは、感動的な額であった。

 そして 1,500億ドル(約16兆円)は海洋をカバーするだけである。すでに製造された 83億トン以上のプラスチックに加えて、産業側は現在、年間 3億8,000万トンを製造している。それは、概略全ての人間の重量に匹敵し、大気、土壌、及び人間の体内はもちろん、全ての種類の水路にたどり着く。人々は平均、約 2,000 のマイクロプラスチックの小片を毎週摂取することにより体内のプラスチック汚染を補充しているが、それはクレジットカード 1枚分の重さである。我々の体内にあるこのプラスチックの影響について学ぶべきことは多々あるが、プラスチック中の化学物質の或るものは低用量で、人の発達、生殖、及び健康に影響を及ぼす可能性がある

 プラスチック廃棄物を終わらせるための連合(Alliance to End Plastic Waste)は、この記事のための The Intercep の問い合わせに応答しなかった。

 昨年の4月、コカ・コーラ、ネスレ、ユニリーバ、及び飲料会社ディアジオは、プラスチック危機に対応するためにアフリカ特定の企業の団体を立ち上げた。南アフリカの食品会社プロマシドールをもまたメンバーとして参加しているアフリカ・プラスチック・リサイクル連合(Africa Plastics Recycling Alliance)は、そのプレスリリースによれば、サハラ以南のアフリカにおけるプラスチック廃棄物の現在の困難な状況を、プラスチックの回収とリサイクルを改善することにより、雇用と商業的活性を作り出す機会に変えることを目指すとしている。リストされている同連合のメディアのための連絡先は、メンバー会社はどのくらいの金を同連合を支えるために費やしていたのか、そしてどのようなプロジェクトを実施していたのかということについての The Intercept の特定の問い合わせに答えなかった。しかし注目すべき点は、巨大ブランドが戦力に参加する以前であっても彼らの財力は地域の環境団体を、さらには彼らが活動している国の政府をも、はるかに凌いでいたということである。同連合の中で最大の会社であるコカ・コーラとネスレの両社の評価は、アフリカの中のどのような単一国家の予算より大きい。

 批評家らは、産業側がそのビジネスを守るためにはるかに巨額の支出をし続けているのに、プラスチックの浄化にはわずかな資金しか提供しないことを嘲笑した。”それは汚染し続けるための認可を維持するために投資された金である”と、国際環境法センター(CIEL)の環境健康プログラムのディレクターであるデービッド・アゾレイはプラスチック廃棄物を終わらせるための連合(Alliance to End Plastic Waste)について述べた。”あなたが庭をきれいにするために私はあなたにコインを一枚与え、それと引き換えに、あなたの庭にゴミを捨てるのに 250ドルを費やすと誰かが言ったら、あなたはどう思うか? だれもそんなことに同意しないだろう”。


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ケニア北部のレストランの壁に貼ら
れたコカ・コーラの広告

Photo: Sharon Lerner/The Intercept
 貧しい国でプラスチック問題に取り組んでいる活動家らは、彼らはほとんど選択肢がなく、巨大飲料会社によって示される意向に従って生きなくてはならないと言う。世界とアフリカ両方の”連合()を支援する一方で、コカコーラは 2020年1月のスイス、ダボスでの世界経済フォーラムで同社はプラスチック・ボトルの使用を続けるであろうと発表した。同社のプラスチック廃棄物に対する怒りは過去数年にわたり世界中で爆発しているが、同社の持続可能性の部門長ベア・ペレスは、プラスチックからの切り替えは、顧客を遠ざけ、販売に影響を及ぼし、同社の二酸化炭素排出量を押し上げるであろうと述べた。ペレスは彼女の主張の根拠を示さなかった。そしてそれが真実かどうかわからないが、ペレスが行った表明の中で、若い反プラスチック・ストロー活動家に対し彼女の尊敬の念を述べる一方で、コカ・コーラ社はプラスチックをどんどん製造し続けることについて自社にゴーサインを出した。自身のデータによれば、同社は2018年に 1,170億本のプラスチック・ボトル、概略 1分間に 2万ボトルを製造した。

 ナイロビの北約40マイル(約64 km)の小さな町に住む労働者ベターマン・シミディ・ムサシアは、プラスチック汚染の大部分を発生させている巨大企業に影響を及ぼす機会はほとんどないことを認めた。”もしコカ・コーラのような組織に反対しようとすれば、物事は不利な状況になる”と、現在 39歳であり 2015年にクリーンアップ・ケニアと呼ばれる組織を創設したムサシアは述べた。彼は環境活動から何も稼ぎはなく、彼の活動は彼の町の想像もできない量のプラスチック・ゴミへの嫌悪感から生じている。実際、ムサシアは彼の小さな事業からのささやかな稼ぎでその組織を維持し、その二つの仕事に週 60時間以上を費やしている。

 ゴミの浄化を指導し、ケニアの子どもたちに彼らの廃棄物にどのように責任をもって対処するかを教えることに加えて、クリーンアップ・ケニアはプラスチックに関して、国家によるボトル禁止を支持し、ボトル入り飲料水産業を”悪徳商法”と批判し、貧困地域に廃棄物投棄場を設置するという不正義に注意を喚起しつつ、難しい立場をとってきた。会社は彼等自身の廃棄物に責任を持つべきという同グループの主張は特に訴える力があることを証明してきた。ムサシアと彼の同僚らは最近、何社かの飲料会社の代表と会った時に、プラスチック・ボトルのための国のデポジット制度の支持を表明した。しかし、産業側代表者らは彼らのアイディアを拒否したのみならず、婉曲な脅しをもって反応した。

 ”彼らは我々に身のためにキャンペーン活動をやめた方がよいと言った”と、それでもプラスチックに対する困難な戦いに挑み続けるムサシアは述べた。”世界中のより多くの人々がこのことを知れば、コカ・コーラ社と他の会社はますます責任をもって行動することを余儀なくされる”。

同じ会社が同じプラスチック

 2月にブリュッセルでの持続可能性会議でコカ・コーラ社の重役ブルーノ・ヴァン・ゴンペルはプラスチックについての推進プレゼンテーションを行った。同社のサプライチェーン部門で働くヴァン・ゴンペルは、コカ・コーラはに西ヨーロッパにおける全ての容器を回収するであろうと誓約した。しかし同社はアフリカ諸国又は他のどのような発展途上国においても全ての容器を回収するとまだ約束していない。コカ・コーラ社は、なぜ同じ約束を世界の他の諸国にしないのかについての問い合わせに答えなかったが、同社が2030年までに世界的に販売するボトル又は缶と同等量を回収しリサイクルし、全ての容器を 2025年までにリサイクル可能にするするという 2018年の約束は、すべての国に適用されると言及した。

 多国籍飲料会社が地球上の様々な場所で異なる取り扱いを行なっているというプラスチック関連の問題は、廃棄物回収だけではない。コカ・コーラ社はボトル法案に反対してきた長い歴史を有するにもかかわらずヴァン・ゴンペは、”代替が存在しないことが証明されている場合には、よく設計されたデポシット返却制度を現在は支持するであろう”と述べた。しかしコカ・コーラ社は、ケニア及びアフリカの他のどの国の全国ボトル返却制度にも反対した。彼女のメールの中で、コカ・コーラ社の報道担当官オズボーンは、同社は容器デポジット制度はケニアで適切であるとは信じておらず、 PETCO が同国にとって正しいモデルであると信じると確認した。

 ”必ずしもすべての国が、成功に至る容器デポジット制度のため正しい前提条件を備えているわけではない”と、オズボーンは書いた。”悪い前提の下ではデポジット制度は、小売業環境に良くない影響を及ぼし、消費者に挫折感を抱かせるだけでなく、 PET ボトルやアルミ缶の様な高価値品目を排除することにより、既存のリサイクル価値連鎖(recycling value chains)を潜在的に損なうと我々は信じる”。彼女はまた、”我々は現在、世界中にある 40近くの市場で、公正で産業主導のデポジット制度に参加している”と言及した。

 実際には、コカ・コーラ社は、容器が戻された時に払い戻されるべき料金を彼らの飲料の価格に上乗せすることを飲料会社に求める法律に嫌々ながら支持しただけである。オズボーンは、”アメリカのいくつかの州”におけるボトル法案への同社の支持に言及する一方、同社はアメリカ全土でそれらの法案に反対する長い歴史を持っている。コカ・コーラ社は、同社が長年それに反対して闘ったことを示すリークされた文書をグリーンピースが公開した直後の 2017年に、スコットランドのボトル保証金計画(bottle deposit plan)を是認した。

 オーストラリアでは、コカ・コーラ社は最終的にノーザン・テリトリー州の容器デポジット法を支持したが、最初にそれを停止するよう訴えた。コカコーラ社も属する全国飲料産業協会もまたその計画に反対して激しいロビー活動を展開した。最近、ニュー・サウス・ウェールズ州、オーストラリア首都特別地域、及び西オーストラリア州で、容器デポジット制度が制定されたので、ある意味ではコカ・コーラ社は同制度に反対する戦いに敗れたことになる。西オーストラリア州の容器デポジット計画の実施は、コロナウイルスのために遅れているが、コカ・コーラ社は現在、これらの計画の全ての実施に参加している。

 廃棄物専門家によれば、飲料会社はコストのために、これらの制度を世界的に実施することを嫌がっているかもしれない。”非常に多くのボトルがいたる所にあるので、もし彼らが現実のボトル払い戻し制度を制定すれば、それは巨額の未積立債務になるであろう”と、カナダにある循環経済研究所の上席政策分析官であるウスマン・バリアンテは述べた。彼はヴァン・ゴンペルの約束を”虚勢の PR ”として切り捨てた。”もし 5セントの払い戻しならば、何十億というボトルの数をかけると、それは即座に数十億ドルになる。彼らはこれらの目標に合うことを望むと言うが、もし彼らが本当に意味のある取り組みをするつもりなら、彼らは逆のサプライチェーンを築かなくてはならず、それは人を雇い、設備を設置することを意味し、彼らはそれらのどれも望んでいない”。

 バリアンテは、飲料会社は強制されない限りプラスチックを止めないであろうと予測した。”プラスチックは製造し使用するのに極めて安価である”と彼は言った。使い捨てのプラスチックを順次導入したので、詰め替えと流通のためにガラス製ボトルを使用していた地域の会社のネットワークを組織的に解体したコカコーラ社にとって、その転換は追加的な利益であったと、彼は述べた。”典型的には、これ等のガラス製ボトルはコカ・コーラを詰めるだけでなく、地域の清涼飲料ブランドにも使用されていた”とバリアンテは述べた。”彼らが廃業した時に彼らが製造していた地域ブランドもまた排除された。彼らは競争相手を倒した”。

 オズボーンは、コカ・コーラ社はアフリカのボトラー(瓶詰業者)のネットワークを解体していないと主張した。逆に、彼女は、”コカ・コーラ社(TCCC)の瓶詰パートナの多くが世界で8番目の大きさのコカ・コーラ瓶詰パートナで、アフリカ最大のボトラーであるコカコーラ・ビヴァリジ・アフリカ(CCBA)に統合された”と書いた。

 ブリュッセルでの彼のプレゼンテーションにもかかわらず、ヴァン・ゴンペルはコカ・コーラ社はすぐに再充填可能な選択肢の”探索”を開始するであろうことを約束したが、同社はすでにそれらを開発しており、これらの選択肢をよく知っている。開発途上国の多くのへき地では、古いロゴ付き縦溝ガラスのコカ・コーラびんがまだ使用されている。コカ・コーラ社のオズボーンはeメール中で、再充填できるボトルは、25か国以上で、販売の半分あるいはそれ以上ですでに使われていると述べたが、彼女は同社が最近南アフリカで導入したようなプラスチック・ボトルもその数に含めていた。

 介入することなく同社は再充填可能なガラス・ボトルを駆逐することに成功するかも知れないとバリエンテは警告した。”もし政府が再充填可能な容器を使用するよう何らかの義務付けを行なわなければ、非常に早くそれらは全て絶滅するでろう”と彼は述べた。

アメリカが救助へ (20/05/27)追加

 世界的プラスチック問題に対する世論の憤りが非常に大きいので、環境よりビジネスを優先することで悪名高いトランプ政権でさえ、最近それに目を向けようとしている。11月、エネルギー長官リック・ペリーは彼の在職最後の日に、プラスチック廃棄物に対処するアメリカの取り組みを発表した。ペリーは、プラスチックを製造するために使用される主要な燃料である天然ガスの契約を固めるためにウクライナでの彼の取り組みの後、長官職を辞任しようとしていたが、その取り組みがドナルド・トランプへの弾劾調査に彼を巻き込んだ。彼の最後のログラムである”プラスチック・イノベーション・チャレンジ”は、プラスチック危機に対処するための革新的なアイデアを持っているアメリカの企業にエネルギー省の助成金を提供するというものであった。しかし、アメリカ人がその問題を解決できれば、彼らはそれを非難されるべきではないと、ペリーは主張した。

 ”私は、ごみの90%近くが海に流れ込んでいる川が、世界に、8つあると思う”とペリーは記者会見で述べた。 ”どれもアメリカの川ではない”。 彼は、プラスチック業界がお気に入りの 2017年の研究について言及した。 ”Environmental Science and Technology”に発表されたこの研究は、実際に、わずか10本の河川、アジアで 8河川、アフリカで 2河川、が世界のプラスチックの 88%から 95%を海に流し込んでいることを示した。

 しかし、ペリーが言及しなかったことは、これらの河川に堆積されたプラスチックの多くは、それが含んでいた中味の製品と同様に、米国とヨーロッパで発生したということである。 昨年、Environmental Sciences Europe(環境科学ヨーロッパ)に発表されたある研究によると、1990年から 2017年の間に、約 172トンのプラスチックと 2,850億ドル(約30兆円)相当の化学成分がアフリカの 33か国に輸出された。 また、ブランド監査(brand audits)は繰り返し、アメリカの代表的なブランドであるコーラとペプシを世界のトップ汚染者の中に見出した。

 ペリーが引用した研究の著者であるクリスチャン・シュミットでさえ、彼の研究がプラスチックの生産者の潔白を証明したとは考えていない。”大企業は責任を免れることはできない”とドイツに拠点を置くシュミットは述べた。 彼の研究は確かに、メコン川、インダス川、揚子江、黄河、ナイル川、ニジェール川を含むアジアとアフリカの 10の河川で大規模なプラスチック汚染を発見したが、”それは単に地域の問題だとは言えない」とシュミットは述べた。 彼は、ヨーロッパでますますみられるように、アフリカでも”拡大生産者責任が必要である”と感じたと付け加えた。

プラスチックの起源に関係なく、コメントの要求に応じなかったエネルギー省は、それが川、海、埋め立て地に堆積しているという事実を、アメリカの企業にとってのもうひとつのビジネスチャンスとしてはっきりと見ている。ある省当局者が言ったように、”これは主にアメリカが引き越した問題ではないが、我々はアメリカのリーダーシップが解決に大きな役割を果たすことができると信じている”。 ペリーは、助成金プログラムを”他の国が抱えているいくつかの課題について他の国と協力する機会”であると述べた。

 2月に、同省はアメリカ化学工業協会(American Chemistry Council)とそのプログラムに関して提携することを発表した。 同工業協会は、ダウ、BASF、シェブロン・フィリップスケミカルカンパニーLLC、エクソン・モービルケミカルカンパニー、リオンデルバゼル、およびプログラムが解決しようとしているプラスチック問題の生成に一役買った他の多くの多国籍企業を代表している。 政府の助成金が使用できる目的の中には、新しいプラスチックの生産がある。資金提供の発表では、エネルギー省が新しい”リサイクル可能な”プラスチックを作成する提案を探していると明記されているが、同省が対処しようとしている海洋のプラスチック汚染の多くは、理論的には、実際的ではないとしても、リサイクルも可能である。

 世界的なプラスチック危機を注意深く見ると、プラスチック危機の原因としての貧しい国々とその救世主としてのアメリカの位置づけには、厳しい皮肉がある。 ”我々は、彼らにこのゴミを送り、それから我々は振り向いて、’これらの人々はプラスチックを管理することさえできない’と言うと、国際環境法センターのアゾレイは述べた。 ”そして今、これらの同じ人々がやって来て言う。’何か問題がありますか。我々が所有し、特許を取得している技術的ソリューションを提供しましょうか?それを導入するためにお金を借りなければならないことになりますが’”。

焼却問題

 アメリカと、アメリカ化学工業協議会は、解決策としてリサイクルに焦点を当てているが、プラスチックの転用(repurposing)とリサイクルは、発展途上国では特に危険である。 カメルーンの環境団体である開発教育研究センターのコーディネーターであるギルバート・クエプオによれば、カメルーンでは、プラスチックのゴミを溶かして汚泥にし、それを砂と混ぜて道路の舗装に使用する。クエプオによれば、カメルーンの環境省は環境に配慮した取り組みを推進しているが、プラスチックは”屋外”で溶け、温室効果ガスと有毒化学物質の両方を放出する。

 ネクサス3 財団のシニアアドバイザーであるユーユン・イスマワティは、インドネシアでのプラスチックのリサイクルについて同様の懸念を抱いている。 イスマワティは、ジャカルタのバンター・ゲバン埋立地近くのいくつかのプラスチック・リサイクル工場を訪れ、そこで彼女が「貧しい状況」と表現していたことについて心配している。 ”一部の人々は、最小限の防護で多くの化学物質に暴露しながら働いている。 また、一部の女性は頭痛や生理不順の問題がある”と私に言った」とイスマワティは述べた。 ”その工場には非常に多くの煙があり、私がそこにいたとき、目と喉が痛かった”。

 一方、プラスチックを完全に焼却することは、リサイクルのためにプラスチックを溶かすよりも危険であるが、多くの国で主な最終処分方法である。 世界中で約 41%の廃棄物が野焼きされているが、あるアフリカの都市では、ゴミの 75%がこの方法で処分されている。 国際気候グループ G20 は、気候変動を悪化させ、有毒でがんを引き起こす大気汚染と灰を作り出すこの実施方法を”世界の健康災害”と呼んでいる。

 ガーナの首都アクラの近くのアグボグブロシーで行われたテストは、プラスチックを燃やすことによって生成された化学物質がどれほど簡単に食品に入り込むことができるかを知る手がかりになる。アグボグブロシーは、世界が毎年生成する推定 4000万トンの電子廃棄物の多くの最終目的地である。市内中心部近くのラグーンの隣にあるスクラップヤードは、廃棄物に対する市場駆動型(market-driven solution)の完璧なソリューションとして有名である。そして、業者が米国ではゴミとみなされている古くなったコンピューター、テレビ、その他の電子機器を再利用する方法を見つけているのは事実であるが、これらの製品のケーブル、ワイヤー、およびその他の使用できないと思われるプラスチック部分は、アグボグブロシーで燃やされている。また、昨年テストを実施した国際汚染物質廃絶ネットワーク(IPEN)によると、近くで採餌する鶏が産んだ卵には、これまでに測定された臭素化ダイオキシンが 2番目に高いレベルで含まれていた。その化学物質は、発達中の胎児に害を及ぼし、免疫系と内分泌系の機能を破壊し、がんを引き起こす可能性がある。IPEN はまた、アグボグブロシーの卵に極めて高いレベルの難燃剤 HBCDと PBDEを発見し、カメルーンの首都アクラとヤウンデの医療廃棄物焼却炉の近くでサンプリングされた卵からこれらの同じ化学物質を測定した。

プラスチック廃棄物”貿易”

 途上国は増え続けるゴミに対処するのに苦労しているが、米国は、処理できない大量のプラスチックゴミを適切に処分する能力のない国に輸出することで、それらの国の負担を増やしている。 2019年、アメリカの輸出業者はマレーシアを含む 95か国に約 15億ポンドのプラスチック廃棄物を出荷したがマレーシアは約 1億3千万ポンド以上を受け入れた。 最新のデータによると、タイはほぼ 6000万ポンド、 メキシコは 8,100万ポンドを輸入した。 ガーナ、ウガンダ、タンザニア、南アフリカ、エチオピア、セネガル、ケニアは、アメリカのプラスチックごみを受け取ったアフリカ諸国のひとつであり、そのプラスチックごみのほとんどはリサイクルが最も難しく、最も価値の低いプラスチックであった。 米国はこの輸出プラスチックをすべて”リサイクル用”として分類しているが、広範囲な報告や現地調査によれば、その多くが実際には廃棄または焼却されている。

 豊かな国から貧しい国へのプラスチックゴミの大規模な国際輸送は、「地球規模の廃棄物貿易」と言われるが、典型的な貿易のようには機能しない。 廃プラスチックの価値は非常に低いため、最近ではそれを受け取る多くの企業は、物を手に入れるために支払うのではなく、支払いを受けている。 それがわずかな収入をもたらすので、プラスチックゴミの輸入を止めることを難しくしてきた。 たとえば、インドは 2018年に廃プラスチックの輸入を禁止しが、禁止の実施は 2回延期されている。 その間、米国は少なくとも1億8,800万ポンドのプラスチックごみをインドに送り込んだ。

 ジャマイカもまた、アメリカのプラスチック廃棄物を受け取っており、昨年は10万ポンド以上であった。 そして、それは公式記録にあるものだけである。 ジャマイカで公衆衛生検査官を務め、現在はカリブ海有毒情報ネットワークで働いているシェリカ・ホワイトロック・バリンシングによれば、人道的援助を装うなどして、未知の量の米国のゴミが他の方法で入国している。 ”慈善団体は援助とマークされた輸送用コンテナを送るが、コンテナを開けると、時には中身の 10%しか使用できないことがある。 残りはゴミである”とホワイトロック・バリンシングは述べた。 ”私はこれらのものを自分で捨てるように手配しなければならなかった”。

 いくつかの国は、中国が 2018年受け入れを停止して以来、押し寄せてくるプラスチックゴミの波を食い止めようと試みてきた。カンボジアは 9月に、フンセン首相の”カンボジアはゴミ箱ではない”というメッセージとともに、廃棄物で満杯の 83の輸送用コンテナを米国とカナダに送り返した。 1月、マレーシアは 800万ポンド以上プラスチックのゴミを米国およびその他の 12の豊かな国に送り返した。 そしてインドネシアでは、税関当局が昨年、プラスチック廃棄物が含まれているという事実を隠すために、その多くに不正にラベルが付けられた数百の輸送用コンテナが、米国を含む”原産国”に送り返されたことを発表した

 しかし、ゴミを送り主に返すことは信じられないほど難しいことがわかった。 状況を追跡してきたネクサス 3 財団の報告によると、インドネシアからの輸送用コンテナの多くは、米国に返送されるのではなく、インド、タイ、ベトナムを含む他の貧しい国々に輸送されたことが分かった。 また、ネクサス 3 のイスマワティによると、押収された 1,000を超える輸送用コンテナがジャカルタの港に残っており、その廃棄物を米国に送還することもまた難しく、結局はそれらが貧しい国にたどり着くことをイスマワティは特に懸念している。”どこかのだれかが、いつでもがらくたのためにいくらかお金で喜んで受け入れるであろう”と彼女は言った。

 イスマワティにとって、インドネシアや途上国全体に移動するすべての廃棄物は、リサイクルがプラスチックの問題を解決できるという考えを否定している。”リサイクルが非常に優れていて、環境に優しいのであれば、なぜ先進国でリサイクルをしないのか?”と 彼女は問うた。”ロケットを月に送ることができるほど高度な人なら、なぜあなたの国にリサイクル工場を建設できないのか?”。

爆発する気球

バーゼルアクションネットワークの執行ディレクターとして廃棄物の国際的な動きを追跡しているジム・パケットによると、プラスチックがすでに世界的なゴミの争いを引き起こしているが、実際の戦いにはまだなっていない。 ”それは爆発寸前の気球である”と彼はプラスチック・ゴミに関する国際的な緊張について述べた。”すべての業者は、これらのゴミを引き受ける次の国を見つけようとしている。 我々は大量の廃棄物について話しているのであり、それはゴミの山、そして山である。 そして、それを永遠に駐機場に待機させておくことはできない”。 プラスチックが高く積みあがれば、その輸入を停止する圧力も高くなる。 ”人々がそれを見て匂いを嗅ぎ始め、それが裏庭で燃えていることに気づいたら、彼らは仕方がないと言う」とパケットは述べた”。  昨年5月、187か国の代表がバーゼル条約の会議のためにジュネーブに集まったとき、その圧力は高まった。 米国は有害廃棄物を統制するその国際条約に加入または署名していないほんの一握りの国のひとつであるが、アメリカの代表団はとにかくアメリカ化学工業協議会の代表とともに会議に出席した。重要な条項改正が議題であったが、世界のほとんどを構成する加盟国にプラスチック廃棄物を輸出することを厳しく制限する可能性がある。それが採択された場合、それは米国が何十年もの間海外に送ってきた混合プラスチックで満たされた輸送コンテナに終止符を打つことになる。

 各国が論争のある改正を交渉できるよう会議は数日延長された。 追加の時間をとっての、議論は夜遅くまで続き、米国と米国化学工業協会はアルゼンチン代表団を通じて修正案に反対したが、残りのほとんどすべての加盟国がそれを支持した。

 条約交渉は通常、政策表明が敬意の沈黙をもってなされる地味な事柄である。 しかし、会議の議長であるアブラハム・ジヴァイ・マティザが数日間のほぼノンストップの交渉を経てプラスチック修正案が全会一致で可決されたことを発表したとき、「会議場は激しい拍手で満たされた」と、会議に出席した国際汚染物質廃絶ネットワーク(IPEN)の上級科学顧問であるジョー・ディガンギは述べた。

 誰もが幸せだったわけではない。 投票後、ディガンギは会議でプラスチック業界を代表していた弁護士とエレベーターに乗った。彼は私を見て、首を横に振って、言った。”君たちはプラスチック貿易全体をまさに再構築した”。

 米国がプラスチック廃棄物を海外に送り続けることを選択した場合に、米国企業がどのような影響を受けるのかはまだ不明であるが、バーゼル修正条項の迅速な採択は、ほとんどの国が緊急な行動の必要性を見ているプラスチックをめぐる国際戦争の新しい段階に我々が到達したことを示している 。国際的な環境条約が決着するには通常何年も、時には数十年かかるが、2021年1月に発効するプラスチックに関するバーゼル条約修正は、最初に提案されてから 1年足らずで可決された。 ”その修正のように国際条約が早く動くのを見たことがない”とパケットは語った。

 条約の迅速な行動を促進した緊急性は、現在、コロナウイルスのパンデミックによって引き起こされた前例のない経済的混乱と緊密に関連している。そして、ある人々はプラスチックの生産の急激な増加に終止符を打つと予測している。 衰えのない成長が何十年も続いたが、パンデミックの前に、業界は通常の拡大を大幅に拡大することを計画していた。 2月に、アメリア化学工業協会は、プラスチックおよび石油化学製品の生産のための新しいインフラストラクチャへの 2,000億ドル以上の投資を発表した。 アフリカでは、米国や他の国から輸入されるプラスチック製品となるプラスチックとポリマーの量が、2030年までに2倍になると最近予測されている。

 しかし、国際環境法センターの会長兼最高経営責任者であるキャロル・マフェットによると、その軌跡は変わった。”業界はすでにプラスチックがどのように成長するかについての想定は非常に楽観的であった”とマフェットは述べ、新しいプラスチックおよび化学プラントの建設におけるコロナウイルス関連の遅れ、フラッキング会社の破産の増加、および化石燃料生産における前例のない減少を、 業界が今、さらなるトラブルに向かっている証拠として指摘した。

 マフェットによれば、パンデミックと戦うためのツールとしてのプラスチックの業界の宣伝でさえ、その必然的な収縮を防ぐことはできない。”彼らはこれを利用して、消費者の衛生を装ってより多くの拡大を売り込むだろうか? もちろん。 しかし、それは石油セクター全体の不安定さと相まって、プラスチックの受け入れの低下を相殺するのに十分であろうか? そうは思わない”。

 マフェットが正しいかどうかを知るのは時期尚早である。そして、いずれにせよ、それが実現するようになれば、プラスチック産業の縮小は何年も何十年も続くであろう。その間にも、アフリカはコロナウイルスに備えている。それはプラスチック危機のように、他の世界とは異なる方法でその大陸に影響を与えるだろう。報道時点でコロナウイルス感染が確認されたのは300人弱だったケニアでは、多くの人がロックダウン中に生き残るための備蓄を持っていない。食物についてのパニックはすでにナイロビのスラム街での暴動につながっている。先週、症例数が増加したため、国は外国旅行と学校を一時停止した。それでも、ダンドラダンプでは先週、男性、女性、そして子どもたちが巨大なゴミの山の上で扇状に広がり、ゴミを素手で分別しているのが見られた。政府はスマスクを義務化したが、廃棄物収集者の多くはマスクを着用していなかった。彼らをマスクを見つけることができなかったか、購入する余裕がなかったかにかかわらず、彼らは生き残るために十分な収入を得られるように、逮捕と伝染の両方の危険を冒していた。



化学物質問題市民研究会
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