The Hill 2020年3月22日
ペンタゴンは有害な ’永久化学物質’ の浄化は
数十年続きそうだと考えている


情報源:The Hill, March 22, 2020
Pentagon cleanup of toxic 'forever chemicals' likely to last decades
https://thehill.com/policy/energy-environment/488723-pentagon-cleanup-of-
toxic-forever-chemicals-likely-to-last-decades?ct=t(RSS_EMAIL_CAMPAIGN)


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2020年3月27日
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https://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_20/200322_
The_Hill_Pentagon_cleanup_of_toxic_forever_chemicals_likely_to_last_decades.html



 最近のペンタゴン(米・国防総省)からのある報告書は、有害な ’永久化学物質’ の汚染が疑われる米軍基地の数の激増を考えると、米軍基地近辺の水供給から同化学物質を除去するのに数十年かかるかもしれないと述べている。

 米・国防総省は現在、多くの日用品中及び米軍の泡消火剤中で使用されている化学物質類の仲間である PFAS で汚染されている可能性がある 651 の基地を抱えている。

 ペンタゴンの PFAS タスク・フォースによる先週の報告書の中で明らかにされた汚染基地数の増加は、以前の勘定から 50%の飛躍である。

 軍は今こそ、 PFAS について全ての基地をテストし、 PFAS がどのように拡散したかを特定し、それを除去するための計画−それは30年以上繰り広げられるかもしれないプロセス−を練り上げなくてはならない。

 ”651という数字は PFAS が使用されていたかもしれない場所はどこなのか、そしてそのことは、我々がそこ行き、調査する必要があることを意味するということは全く明らかである。ただ我々は現在の所、 651 の全ての地点で環境中への放出が実際にあったかどうかわからない”と国防省の副次官補モーリーン・サリバンは The Hill に述べた。

 ペンタゴンは現在、環境中や人体に生物蓄積する、いわゆる永遠の化学物質を浄化するよう、議会や環境団体からますます強い圧力を受けている。 PFAS はがん、ホルモンかく乱、肝臓障害、及び不妊に関連している。

 国防総省(DOD)によるスケジュールは、 DOD がPFAS の浄化を開始するまでに、どこでも 6〜13年が必要であることを示している。ペンタゴンは汚染のスピードと最良の浄化方法を評価する必要がある。

 浄化のプロセスが開始したら、どこでも 1〜30年、かかる可能性がある。
 ”我々はまだ、軍の施設でどのくらいの PFAS が地下水と飲料水を汚染しているのか?という、基本的な疑問に答えることができないということが問題である。また、いつ DOD が基地の施設で PFAS の遺産を浄化するのか?という、同じく気がかりな疑問に答えることができないことも問題である”と PFAS の拡散問題を追っているエンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)のスコット・フェーバーは述べた。

 ”彼らは、適切な切迫感を持って PFAS 汚染の遺産の浄化問題を処理していない”。

  DOD のスケジュールは、有害廃棄物処分場の浄化を命令しているスーパーファンド法の下に要求される段階を踏んでいる。

 オバマ政権時の EPA 水担当局科学技術室のディレクターであったベスティ・サウサーランドは、 DOD のスケジュールはある段階を完成するために必要な時間を過大に見積もっていると述べた。

 汚染がすでに知られている場合には、 DOD はもっと迅速に着手できるはずであると彼女は述べた。そして DOD がそれでも初期分析をする必要がある場合にも、活動指針を決定するために EPA によって規定されているように 4年を超えるべきではないとサウサーランドは述べた。

 最大の汚染は地下水であり、 DOD は地下水をくみ上げ、処理し、その後、帯水層にそれを戻さなくてはならず、そのプロセスは汚染場所毎に模写される必要がある。

 ”彼らが地下水をくみ上げ、処理しなければならないであろうことは、全くわかり切った結論である”と彼女は述べた。そしてそれぞれの汚染場所は微調整が必要となるであろうことから、”それは、彼らがここで提案しているものよりもっと標準化された改善措置である”。

 報告書とその推定スケジュールは、迅速な行動を求めてペンタゴンに圧力をかけていた何人かの議員を狼狽させた。

 ”もっと多くのテストをすれば、我々はもっと多くの汚染を見つけるであろう。これ以上の国防総省の不作為は容認できない”と、 PFAS 問題に関して議会で最も強硬派の一人、下院議員デビー・ディンゲル(民主党・ミシガン州)は述べた。

 ”軍は、これらの永久化学物質を特定するためだけでなく、これらの有害な化学物質を浄化し、より安全な代替物質の使用への移行を前進させるために、対応を強化して積極的な措置をとる必要がある。さもないともっと汚染が広がり、我々の長期的な国家安全保障に対するリスクが増大する”と、彼女は付け加えた。

 前出の国防省副次官補サリバンは、 DOD は、水が EPA によって設定された 70 ppt (訳注1)以上でテストされていれば、もっと迅速に行動することができると述べた。

 ”我々が基地の飲料水に影響を及ぼしていたことを知れば、我々が汚染源であることを知り、我々はその飲料水をテストし、それが 70 ppt 以上であれば、我々はその飲料水を処理するために、我々の除去措置の権限を使用するであろう”と彼女は言った。

 彼女は、トレーラーパーク(移動住宅の設営場所)の地下水が近くの基地により影響を受けたので、市の給水系に接続するためのコストを基地側が支払ったという事例を引用した。その他の事例として、 DOD は影響を受けたトレーラーハウスの所有者にボトル飲料水又はフィルターを提供した。

 しかし批評家らは、いくつかの地域社会で迅速な行動がとられても、 70 ppt 以下のレベルの飲料水のリスクはやはり高すぎるという。

 連邦政府の PFAS 標準がない中で、多くの州が自身の規制を実施しており、そのレベルは 10 ppt にずっと近い。

 ”アメリカにいる全ての人々は今週、健康な免疫系の重要性を学んでいる。だから一体全体、なぜ我々は免疫系を弱めることを知っている物質で飲料水が汚染されている DOD の施設の近くにいなければならないのか?”と EWG のフェーバーは問うた。

 さらに、ある飲料水は 70 ppt レベルで処理されないという懸念もある。

 最近のそのペンタゴンの報告書の文言は、軍は、既に飲料用の水源ではない地下水を処理する場合には、 EPA の 70 ppt というガイダンスには従わず、その代わりに軍自身の処理ガイドラインを考え出すであろうということを示している。

 ”その水は、将来飲料水のために必要になるかもしれないのだから、それは問題である”と、元 EPA のサウサーランドは述べた。

 ”彼らは自己裁量を行なっている”と彼女は述べた。”けれども我々はどのようなレベルになるのかわからない”。


訳注1:飲料水中の PFOA 及び PFOS の許容濃度
訳注:沖縄米軍基地周辺の PFOS/PFOA 汚染 関連情報


化学物質問題市民研究会
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