EcoWatch, 2020年3月13日
モンサントが秘密裏に
グリホサート研究に資金提供をしていたことを
環境団体が発見

ジョルダン・デービッドソン

情報源:EcoWatch, March 13, 2020
Monsanto Secretly Funded Glyphosate Studies, Watchdog Finds
By Jordan Davidson
https://www.ecowatch.com/monsanto-glyphosate-studies-2645479132.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2020年3月18日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_20/200313_EcoWatch_
Monsanto_Secretly_Funded_Glyphosate_Studies_Watchdog_Finds.html


 ガーディアン・ニュースが報道した(訳注1)様に、ドイツの環境監視団体ロビー/コントロール(LobbyControl)による調査によれば、もしモンサントの除草剤グリホサートがイギリスで禁止されれば、壊滅的な結果を農民にもたらすと警告する研究を秘密裏に資金提供するためにモンサントが金を送り込んだことを新たな調査が明らかにした。

 [イギリスの農業及び環境コンサルタント会社である ADAS により(訳注:ガーディアン・ニュースによる)] 2010年と 2014年に発表された問題の二つの研究は、ドイツの化学物質と医薬品の巨人バイエルが2018年にモンサントを買収する以前に行われた。ガーディアン・ニュースによれば、その秘密の資金提供を知った時にそれを公表しなかったことは同社の基本方針に反することであったとバイエルは述べた。

 ”これは、受け入れることができない不透明なロビー活動である”とロビー/コントロールのウールリッヒ・ミューラーは述べたと、ガーディアン・ニュースが報道している、。”市民、メディア、そして政策決定者は。公衆の利益に関わる研究に誰が金を払うのかを知るべきである。その研究はまたグリホサートの便益について及び禁止された場合の可能性ある損失について、非常に高い数値を使用した。これらの極端な数値は、後に長々と議論された時に利用された”。

 しかし、二つの研究の著者らは、その資金提供は彼らの結論に影響を与えなかったと述べた。グリホサートはイギリスの農業と環境にとっていかに価値があるか?(How Valuable is Glyphosate to UK Agriculture and the Environment?)と題する 2010年研究は、”使用者にとって広範な便益がある”と称賛した。それは、グリホサートは土壌に結合するので地下水中に漏れ出すことはほとんどないと述べている。またそれは、グリホサートは時には地表水中で見つかることがあるが、有毒であると登録するレベルよりはるかに低いと述べている。そして、グリホサートの禁止は、いかにイギリスの農業と園芸に混乱をもたらすかという議論を展開している。

  2014年研究は、同様な論拠に基づいている。欧州におけるコンバイン利用可能な作物へのグリホサート使用:農業と環境への影響(Glyphosate Use on Combinable Crops in Europe: Implications for Agriculture and the Environment)と題するその研究もまた、グリホサートは非常に水に溶けやすく、簡単には土壌中にも水中にも漏れ出すことはなく、検出されるのは水サンプルの1%以下であると述べている。そして、それに基づき、”ヨーロッパでの小麦、冬大麦、及びアブラナでのグリホサート使用の価値”の評価を行なっている。

 そして、主研究者の一人、[ADAS の]サラ・ウィンは、資金提供は彼女の研究に影響を及ぼさなかったと述べた。彼女はガーディアン・ニュースに、”我々の分野における他の会社と同様に、外部の組織が研究調査に資金提供することは全く正常である。しかし、我々の研究は我々への資金提供者により決して影響を及ぼされないということが常に我々の中心的な原則である”と、ガーディアン・ニュースに述べた。

 ウィンと彼女の同僚らは、驚くべきことではないが、グリホサートの継続使用を支持した。その研究はガーディアン・ニュースが報道しているように、”グリホサートの喪失は非常に深刻な影響をイギリスの農業と環境に及ぼすであろう”と、結論付けた。

 2014年研究で、もしグリホサートが禁止されれば小麦とアブラナの生産は 20%落ち込むであろうと結論づけた。

 他の研究者らは、農業実施方法が変わるであろうと言及しつつ、異なる結論を出した。オックスフォード・エコノミクスのアンダーソンズ・センターは、モンサントが資金を提供したその研究の結論に異議を唱えた。

 アンダーソンズ・センターは、イギリスにおけるグリホサート禁止に関する報告書の中で、”他の場所で議論された軽減努力と輪作の変更を考えると、この方がむしろは高いかもしれないとアンダーソンズ・センターは考える。産業側専門家の利用可能なデータと知識を用いてイギリスで栽培されている全ての主要作物に同様なプロセスがとられている”と述べた。

 2010年と2014年の研究は、全国農民組合(National Farmers Union)及びその他の団体のロビー活動の役に立ち、ガーディアン・ニュースが報じるように 2017年の欧州連合グリホサート禁止に反対するキャンペーンは成功した。しかし、[モンサントの資金提供という]この新たな発覚により、全国農民組合はそのグリホサート情報を修正して、その研究の資金供給源を宣言した。

 その研究を利用しているのは全国農民組合だけではなかった。ガーディアン・ニュースによれば、農薬工業会(Crop Protection Association)はもちろん、産業側ロビー団体であるグリホサート・タスク・フォース(グリホサート再生グループを改名)もまたその研究を利用した


訳注1:ガーディアン・ニュースの報道
Revealed: Monsanto's secret funding for weedkiller studies (The Guardian 12 Mar 2020 by Damian Carrington Environment editor)


化学物質問題市民研究会
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