米・知る権利(US RTK) 2016年6月29日
飲料業界 米 CDC 内に友達を見つけ出す
キャリー・ギラム
この記事は、最初に Huffington Post に発表された

情報源:U.S. Right to Know, June 29, 2016
Beverage Industry Finds Friend Inside U.S. Health Agency
By Carey Gillam
http://usrtk.org/sweeteners/beverage-industry-finds-friend-inside-u-s-health-agency//

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2016年7月4日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_16/
160629_US_RTK_Beverage_Industry_Finds_Friend_Inside_CDC.html


 子どもが、(そして大人も)飲むのが大好きな甘いソフトドリンクの販売者からなる飲料業界(Big Soda)にとって厳しい一年であった。

 健康によくないように見える飲料の消費を抑制するための手段としてなされたフィラデルフィア市の指導者らによる6月16日の決定は、ソフトドリンク販売がどんどん低下しているコカ・コーラやペプシコのような会社にとって、一連の悪いニュースの中の直近のものである。神経質な投資家らは、消費者、法律策定者、及び健康専門家らが甘味飲料を肥満や2型糖尿病を含む広範な健康問題と結び付ける最新の証拠を認めるフィラデルフィア市の動きを見て、これらの会社の株を売ったので株価が下がった。

 昨年、サンフランシスコ市は甘味飲料がその製品と関連する可能性がある好ましくない影響についての警告を広告に含めることを求める法律を制定した。

 昨年6月、世界保健機関(WHO)事務局長マーガレット・チャンが砂糖たっぷりのソフトドリンクの販売は世界中で、特に開発途上国で、子どもの肥満の増加をもたらす重要な要因であると述べたことにより打撃を受けた。WHO は 2015年に3月に新たな砂糖摂取量ガイドラインを発表し、チャンは砂糖の多い飲料の摂取を制限するよう提案した。

 メキシコはすでに 2014年にソーダー税を実施し、アメリカ及び世界の多くの都市もすでにそのような制限又は課税による制限又は抑制を実施しているか、又は検討している。今年の初めに発表された研究によればメキシコのソーダー税はソーダ購入の低下と関連性があった。

 ソフトドリンクの販売で年間数十億ドル(数千億円)の利益を上げている飲料業界が脅威を感じ、この感情移入と戦っていることは驚くべきことではない。

 しかし驚くべきことは飲料業界が、肥満、糖尿病及びその他の健康問題を防止する立場にある米・疾病管理予防センターの高官に助けを求め、明らかにそれを得たということである。

 米・知る権利(US RTK)が情報公開要求を通じて入手したeメールは、飲料及び食品業界の主導的な代表者らが昨年、飲料業界を損ねている世界保健機関の行動にどのように対応すべきかについて、CDC の心臓病及び脳卒中予防部門のディレクターであるバーバラ・バウマン博士に依頼して指導を得ることができたか詳細に記述している。

 バウマンは、”公衆健康指導”を提供することを任務とする CDC の部門を率いており、肥満、糖尿病、心臓病及び脳卒中を含むリスク要因を防止し管理するための研究と補助金を促進するために州政府とともに働いている。

 しかしバウマンと元コカ・コーラ科学規制部門のリーダーであり産業側資金による国際生命科学研究所(ILSI)の創設者であるアレックス・マラスピーナとの間のeメールは、バウマンもまた飲料業界が世界保健機関に対して政治的影響力を持つことを喜んで支援するように見えたことを示していた。

 2015年からのeメールは、コカ・コーラと食品産業の利益を代表するマラスピーナが、 1978年に設立した化学産業及び食品産業の資金支援を受けている国際生命科学研究所(ILSI)を世界保健機関がいかにそっけなく扱ったかについて不平を言うために、どのようにバウマンに働きかけたかを詳細に示している。その一連のeメールは、ステビア甘味料で甘くしているが、それでも WHO によって勧告されている1日摂取制限量より多くの砂糖を含んでいると批判されているコカ・コーラの新製品コカ・コーラライフについての重要な報告書を含んでいる。

 それらのeメールは、甘味ソフトドリンク類は子どもたちの肥満率の上昇の要因であるとして甘味ソフトドリンク類に対する WHO の規制強化の要求への言及を含んでおり、チャンのコメントについて不平を述べている。

 ”我々がどのように WHO と会話を持つことができるかについて何かアイディアがありますか?”と、マラスピーナは 2015年6月26日のバウマン宛のeメールに書いている。彼はコカ・コーラと ILSI の重役からのものを含み、砂糖高含有製品の否定的な報告書及び、欧州における糖質ソーダー税計画についてについての懸念を述べる一連のeメールを彼女(バウマン)に転送している。一連のeメールの中で、マラスピーナは、 WHO の行動は”世界規模で著しく否定的な結果をもたらし得る”と述べている。

 ”我々のビジネスへの脅威は深刻である”とマラスピーナはバウマン宛の一連のeメールに書いている。その メールには、コカ・コーラ首席広報通信担当官クライド・タグル及びコカ・コーラの首席技術担当官エド・ヘイズの名がある。

 彼は WHO の担当官らは”産業側と働くことを望んでいない”ことをバウマンに直接告げている。そして”何かをしなくてはならない”と述べている。

 バウマンは Gates をもった誰か又は“ブルームバーグの人々”が WHO のドアを開くことができる密接な関係を持っているかもしれないと答えている。彼女(バウマン)はまた、彼(マラスピーナ)がサブサハラアフリカ十で入手可能な HIV/AIDS 剤を製造する米政府が後援するプログラムである PEPFAR プログラムで誰かに接触することを示唆している。彼女は、”WHO がそのネットワークの要である”と彼に告げている。彼女は、彼女もまた”会うことを連絡するであろう”と書いている。

 その後 2015年6月27日のeメールで、マラスピーナは”非常に良い助言”を彼女に感謝し、”我々は WHO が再び ILSI とともに活動を開始してもらえたら・・・、そしてWHO は糖質食品だけが肥満の唯一の理由であると考えるのではなく、世界中で起きている生活スタイルの変化もまた考慮してもらいたい”と述べている。そして彼は、彼とバウマンが晩餐ですぐに会うことを提案している。

 本”Soda Politics”の著者であり、ニューヨーク大学の栄養食品研究及び公衆健康の教授であるマリオン・ネッスルによれば、アメリカの健康当局高官が飲料業界指導者とこのように連絡しあうということは不適切であるように見える。

 ”これらのeメールは、ILSI 、コカ・コーラ、及びコカ・コーラの支援を受けている研究者らが、有名な CDC 高官によって引き立てられていることを示唆している”とネッスルは述べた。”その高官はこれらのグループが”より少ない砂糖を摂取すること”及び”産業が勧告に資金提供していることの暴露”への反対を計画することを支援することに関心があるように見える。晩餐への招待は親しみのある関係・・・を示唆している。この利益相反の様相は、なぜ産業との関わりが連邦機関担当者にとって必要かを適格に示している”。

 しかしCDC 報道官キャシー・ハーベンはそのeメールは必ずしも利益相反又は問題を示すものではないと述べた。

 ” CDC が論争の当事者の誰とでも連絡をとることは異常なことではない”と、ハーベンは述べた。

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の内分泌部門小児科学教授ロバート・ルスティヒは、ILSI は”食品産業を代弁するグループ”として知られていると述べた。ルスティヒは、WHO は砂糖摂取と疾病との関連について懸念しているのに、CDC は砂糖摂取を制限することについてまだその立場を示していないということが分かったのは”興味深い”ことであると述べた。ルスティヒは UCSF の WATCH プログラム(Weight Assessment for Teen and Child Health)を指導しており、非営利組織の”責任ある栄養のための研究所”の共同設立者である。

 バウマンもマラスピーナもコメント要求に対して反応がなかった。

 これらのeメール交換は、バウマンがマラスピーナからの疑問へ単純に対応するという以上のことをしたことを示している。彼女はまたeメールを発信し、他の組織から得た情報を転送していた。バウマンのマラスピーナとのeメールの多くは、彼女の個人的なeメールアカウントを通じて送受信されていた。少なくとも通信のひとつとしてバウマンは、マラスピーナと情報を共有する前に、彼女の CDC eメールアドレスから彼女の個人eメールアカウントに転送していた。

 2015年2月のバウマンからマラスピーナへのメールで、彼女は米農務省(USDA)の担当官から受けた“FOR YOUR REVIEW: Draft Principles from Dec 8 Public Private Partnerships Meeting”と題するeメールをマラスピーナに示した。米農務省の農業研究サービスにおける人の栄養についての国家プログラムのリーダーであるデービッド・クルーアフェルドからのそのメールは、官民パートナーシップの必要性を強調しているブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)からの記事を引用し、”英国の公衆健康における殊勝らしさの強い潮流”についての引用を含めた。バウマンはマラスピーナに、”これは興味深いかもしれない。特に BMJ の書簡をチェックしてはどうか”と、告げている。

 2015年3月18日のバウマンからマラスピーナへのメールで、彼女は世界がん研究基金インターナショナルから受けた世界の砂糖摂取を抑制するための新たな政策概要に関するeメールを転送した。マラスピーナはこの情報をコカ・コーラ担当者及びその他に転送した。

 2015年3月の別のメールで、バウマンはマラスピーナに CDC 報告書概要のいくつかを送り、彼の”考えとコメント”をいただけれは幸いであると述べている。

 人の栄養と栄養的生物学の博士号を持つバウマンは、1992年以来 CDC で働いており、そこでいくつかの上級管理職についた。彼女は 2013年に CDC に於ける国立慢性疾病防止及び健康推進センターの心臓病及び脳卒中防止部門のディレクターに任命された。

 マラスピーナもまた、彼の専門分野で長い経歴を持つ。このコカ・コーラの元重役は、コカ・コーラ、ペプシ、及びその他の食品産業の有力者の支援を得て 1978年に国際生命科学研究所(ILSI)を設立し、1991年までそれを運営した。ILSI は長い間、様々な関係を世界保健機関と持っており、ある時は国連食糧農業機関(FAO)及び WHO の国際がん研究機関、及び国際化学物質安全性計画(IPCS)と密接に活動した。

 しかしWHO のコンサルタントによる報告書は、ILSI は産業側の製品と戦略への好意を得るために、科学者、金、及び研究を使って WHO 及び FAO に潜入していたことを見つけた。ILSI はまた、タバコ産業のために、WHO のタバコ規制の取り組みを損なうための試みを行ったとして非難された。

 WHO は最終的には ILSI と距離をおいた。しかし ILSI と関連のある科学者らが議論のある除草剤グリホサートの評価に参加し、モンサント社及び農薬産業に有利な決定を出したことで、ILSI の影響力についての疑問が今春、再び噴出した。

 キャリー・ギラム(Carey Gillam)は、経験豊かなジャーナリストであり、非営利の消費者教育団体である米・知る権利(US RTK)の研究ディレクターである。彼女をツイッター @CareyGillam でフォローしてください。



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