Independent 日曜版 2014年5月18日
特集:小さなプラスチック時限爆弾 私たちの化粧品中の汚染物 情報源:The Independent on Sunday, 18 May 2014 Exclusive: Tiny plastic timebomb - the pollutants in our cosmetics By Steve Connor http://www.independent.co.uk/news/science/exclusive- tiny-plastic-timebomb--the-pollutants-in-our-cosmetics-9391412.html 紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2014年5月21日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_14/140518_Independent_tiny_plastic_timebomb.html
スクラブ洗顔料、練り歯磨、シャワージェルのような多くの化粧品は、過去20年以上の間、100以上の消費者製品の製造者らにより、意図的に加えられた何千もの微小プラスチック・マイクロビーズを含んでいることをほとんどの消費者は知らない。 一般的には幅が1ミリメートル以下であり、下水処理施設でフィルターにかけるには小さ過ぎるプラスチック・マイクロビーズは、魚類、貝類、甲殻類のような人間の食物連鎖中にあるものを含んで、それらを飲み込んだ動物の体内に毒素を運び込むことがあり得る。 多くの人々がプラスチック廃棄物をリサイクルしようとせっせと試みてきた一方で、同時に化粧品会社は、排水系に洗い流すよう意図的に設計された製品に数百立方メートルのポリウレタンのようなプラスチックを目立たぬように添加しており、ある推定によれば、アメリカだけで毎年最大1,200立法メートルのプラスチック・マイクロビーズが排水系に洗い流されている。 科学者と環境活動家らは産業界に対して、エクスフォリアント(剥離)スキンクリームや洗顔製品でのプラスチック・マイクロビーズの使用を止めるよう働きかけを始めているが効果は少なく、比較的少数の会社がそれらの使用を廃止することを公的に合意はしたが、それでもそれを実施するのに数年かかっている。 イギリス及び EU の他の諸国は、パーソナル・ケア製品会社の大多数が直ちに自主的に禁止することに失敗したのを受けて、先週世界で初めて化粧品中でのプラスチック微小ペレットの使用を禁止したニューヨーク州の先例にならうよう強く求められている。 ニューヨーク州議会は、北アメリカの五大湖でプラスチック・マイクロビーズが不安を引き起こすようなレベルにあることを科学者らが発見したことを受けて、禁止法を制定することを決定した。研究者らは、これらのビーズはフェイシャル スクラブ(角質落とし)、石けん、シャンプー、練り歯磨を含む100以上の消費者製品中のマイクロプラスチック残渣で汚染された排水が流入したことによると述べた。 ”人々はプラスチック・マイクロビーズを含んだ製品を使い続けるだけのために水質を犠牲にすることを望んでいない。私は、顔の表面や魚の体内にプラスチックがあること望む人に会ったことがない”と、先週満場一致でパーソナルケア製品中でのマイクロビーズの使用禁止を可決した後、州議会保護委員会議長ロバート・スウィーニは述べた。 英下院の科学技術委員会は先週、マイクロビーズクの排水が英国の水生環境に及ぼすことがあり得る重大な影響についての証拠について聴取した。委員会の何人かのメンバーらは、もし化粧品業界がこのまま言い逃れ続けるなら、もっと強い法を制定するよう求めている。 ”これらのマイクロプラスチックが化粧品中になくてはならない理由はなく、私はそれらは廃止されるべきであると考える。もし彼らが自主的にそれをしないのなら、その時にはそれらの使用を禁止する法が制定されるべきである”と、下院委員会のメンバーであるグラハム・ストリンガー下院議員は述べた。 同委員会は、水質に関する業務を見直すために来月会合・マイクロビーズを廃止することについてどのように考えているのかと、化粧品業界にさらに圧力をかけることを望んでいるとストリンガー議員は述べた。 もともとは、化粧品産業界は、すりつぶした杏仁、砕いたクルミの殻、乾燥したヤシの実のような天然成分を細胞の汚れや古い角質をやさしく除去することができる皮膚のエクスフォリアントとして使用していた。 しかし、1990年後半のある時点で、いくつかの会社が密かにプラスチック・マイクロビーズに変更し、この方法は瞬く間に他の会社に広がり、現在では皮膚の角質落とし(skin exfoliants)として売られていなくても、ほとんどの皮膚スクラブ、皮膚ポリッシュ、石けんに含まれている。 しばしば、製品成分として単に”PE”、”PP”又は”PMMA”とだけ表示されているマイクロビーズが現在、100以上のトイレタリと化粧品中に見つかっている。それらは、Johnson & Johnson, Procter & Gamble 及び Unilever のような巨大化学会社、 Sainsbury's, Tesco and Marks 及び Spencer のようなスーパーマーケット、そして Clarins や L'Oreal のような高級化粧品会社等により製造されている。 プリマウス大学の海洋生物学教授リチャード・トンプソンは、排水系に洗い流されるプラスチック微小ビーズは、皮膚の角質落としという点で同じ働きを十分にする実行可能な代替が既に用いられているならのなら、不必要な汚染源ということになると述べた。
”微小プラスチックはまた、そのプラスチックを食べる動物に化学的汚染をもたらすかもしれない。これはプラスチック自身により引き起こされる物理的ダメージに追加されるものである”と彼は述べた。 ”例えば、我々の研究は、ムラサキイガイ(食用海産二枚貝)は摂取したプラスチック粒子を48日間以上、体内に保持する。したがって、プラスチックの物理的存在と、プラスチックによりもたらされるかもしれない汚染物質の両方からの危害の可能性がある”と彼は述べた。 ヨーク大学のカルム・ロバーツ教授は、Independent on Sunday (IoS)に昨晩、次のように伝えてきた。”プラスチックの断片がより小さな断片になると、それらは有毒物質を濃縮する。微小ビーズは強力な濃縮器であり、食物連鎖の最下位にあるプランクトンに有毒物質を供給する。” ”その後、これらの化学物質は食物連鎖中で生物濃縮し、このことは最上位の捕食動物が最も高い濃度でこの物質を体内に持つことを意味する。最上位の捕食動物は、まさにマグロやメカジキのような我々の好物である。それはまさしく因果応報である”。 ”我々が取り除いたと思っていた廃棄化学物質が戻ってきて我々を悩まし、我々が好んで食べる魚が、PCBs(ポリ塩化ビフェニル)や農薬、そして水銀ではすでにそうなっている健康への警告対象となるまでに、そう長くはかからないであろう。それは単に無害な不消化食物というだけでなく、毒素の累積がある”。 残留性有機汚染物質、特に DDT や PCBs のような脂溶性の化学物質はポリエチレン・マイクロビーズに付着しやすく、超濃度(super-concentrated)になり得る。ポリエチレンは研磨用マイクロプラスチックとして化粧品業界では広く使用されていると、トンプソン教授は述べた。 水生環境におけるマイクロプラスチックについての研究を実施しているブルネル大学のイアン・ボイド教授は、プラスチック・マイクロビーズが水系に入り込み、水生野生動物に摂取されても、その長期的影響についてはほとんど知られていないと述べた。 ”マイクロプラスチックと特にそれらのビーズについての懸念が高まっている。これらのビーズが小さくなればなるほど、単位容積当たりの表面積は大きくなり、そのことは他の物質がそれらに付着しやすくなるということは、よく知られていることである”とボイド教授は述べた。 ”それらは下水処理施設でろ過するには小さすぎるので、水会社のあるものはそのことについて明らかに懸念している”と彼は付け加えた。 ”市場に投入されるどのような新たな物質も、徹底的に調査されるべきであるが、時には何事かが起きるまで、それらの影響を予測することは難しい”。 関連情報: ■npr May 21, 2014 Why Those Tiny Microbeads In Soap May Pose Problem For Great Lakes by Cheryl Corley ■The Independent on Sunday, 25 May 2014 Beauty brands pledge to end use of microbeads in their products Independent 日曜版 2014年5月18日 特集記事の後、国際的大手化粧品メーカーを含む13社が、プラスチック・ビーズの使用を止めると表明した。 |