EHN 2012年1月27日
大脱走
遺伝子組み換え作物が野生で生育

リンゼイ・コンケル (EHN スタッフライター)

情報源:Environmental Health News, Jan 27, 2011
The Great Escape: Gene-altered crops grow wild
By Lindsey Konkel, Environmental Health News
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/2012/gm-crops-escape-and-grow-wild

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年1月30日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_12/ehn_120127_great_escape.html



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野生の花:遺伝子組み換えナタネは除草剤耐性を持つ”スーパー雑草”をもたらすとして専門家らの一部は懸念している。
 ノースダコタ州全域で、小さな黄色い花が道路わきを数千マイル(何千キロ)点在している。主要な幹線道路に沿って見られるこれらのキャノーラ種のナタネは、無害であるように見える。しかし、それらには大いに論争がある。これらは、大量の遺伝子組み換え植物が農場からすでに拡散しており、現在、野生で生育していることを証明している。

 アーカンサス大学の研究者等によれば、ノースダコタ州の道路沿いで生育しているナタネの約80%は、共通の除草剤に耐性がある植物を作るために組み換えられた遺伝子を持っている。

 遺伝子組み換えされたナタネが見つかったということについて、ある専門家らは、農民が管理することが難しい除草剤耐性のある”スーパー雑草”をもたらす可能性があることを懸念している。また、この植物は有機農業経営者の畑にも移動することができる。オーストラリアでは、ひとりの農民が遺伝子組み換えナタネが彼の有機作物を汚染したとして隣人を訴えた。

 ”ナタネは、現在、導入遺伝子(transgenes)の拡散のシンボルである”とカリフォルニア大学リバーサイド校の植物遺伝子学者ノーマン・エルストランドは述べた。

 導入遺伝子は、遺伝子組み換えの過程で生物組織に導入された遺伝子コードの一片である。それらは、その生物が通常は持っていないような特性、今回の場合はよく使用される除草剤への耐性をもたらす。


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食料主要作物:ナタネは、動物の飼料と、多くの食品中の成分となるナタネ油を作るのに用いられる。アメリカでは、ほとんど全てのナタネが遺伝子組み換え種である。
 アメリカでは、動物の飼料とナタネ油を作るために使用されるほとんど全てのナタネは遺伝子組み換えがなされている。

 遺伝子組み換え食物は世界中で物議をかもしている。それはアメリカ、ブラジル、カナダのような国でよく生産されているが、バイオテク作物はヨーロッパの多くやアフリカの一部では人気がない。栄養価には差異は見られないが、ある科学者らは研究の独立性が欠如していることに異議を唱えている。バイオテク企業が、それらのリスク研究のほとんどを実施している。

 遺伝子組み換え製品が消費者向けに直接市場に出ることはほとんどなく、その多くは動物の飼料になる。昨年秋、モンサントは遺伝子組み換えスイートコーンの種子の販売を開始したが、その最初の製品は消費者市場のために開発された。

 拡散したナタネについて調査するために、アーカンサス大学のシンシア・セイジャズらはノースダコタに行ったが、そこではアメリカの全てのナタネの92%が栽培されている。

 彼等は同州の道路をほぼ3,500マイル(約5,600km)、踏破した。5マイル(約8km)毎に車を降り、目に見える全てのナタネを勘定した。化学的テスト片を用いて、道路沿いのナタネの除草剤耐性に関連するタンパク質を調べた。テストした288のナタネのうち、231がそのタンパク質を持っていたが、昨秋10月にジャーナル『Plos One』に発表された研究によれば、このことは遺伝子組み換えされていることを意味する。

 これは、アメリカにおいて、遺伝子組み換えされた農産物が野生に拡散したことを示す最初の証拠となったが、以前の研究で遺伝子組み換えされた牧草がオレゴン州に拡散していることはすでに示されている。

 カナダの科学者がマニトバ州ですでに見つけていたので、セイジャズは除草剤耐性ナタネが野生で育っていることに驚かなかったが、彼女は野生化したナタネがノースダコタ全体に拡散していることに驚いた。

 セイジャズはその大部分が輸送中のトラックから落ちこぼれた結果ではないかと疑っている。それは、同州のいたるところで農場の近く又は遠く離れた場所生育している。


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種子の変化:テストした少数の植物は複数の除草剤に耐性があった。あるものはラウンドアップ・レディとリバティ・リンク遺伝子の両方を持っていた。
 さらに、テストした少数の植物は複数の除草剤に耐性があった。それらのあるもの、1%以下のものは、ラウンドアップ・レディとリバティ・リンク遺伝子の両方を持っていた。モンサントが作っているラウンドアップ・レディは作物を除草剤グリフォセートに耐性を持たせ、一方、バイエル作物科学によって作られているリバティ・リンクはもうひとつの除草剤グルホシネートへの耐性を与える。道路沿いの植物にこの組み合わせを見つけたということは、それらが野生で遺伝子交換をしていることを示す兆候である。

 ”これは、種子がトラックからこぼれ落ちるということより問題である”とエルストランドは述べた。”商業用種子では起こらない導入遺伝子の組み合わせが野生で起きていたのだから、何らかの進化が起きている”。

 しかし、産業側は、それは問題ではないと言う。作物及び関連する雑草は数世紀にわたって遺伝的物質を交換しており、ナタネのようないくつかの作物は種子がこぼれた場所で野生化して育つことが知られている。

 ”それはバイオテク以前の生物学的な現象である”と農業関連産業を代表する団体であるBIOの情報部長カレン・バトラは述べている。


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スパー雑草の脅威:農家のあるものは除草剤耐性の雑草のために、もっと毒性の強い除草剤が大量に必要となることを懸念している。
 それでも除草剤耐性の導入について、科学者や農民の一部は懸念している。

 セイジャズによれば、複数の除草剤に耐性をもつ雑草のために、農民は畑の耕作、及びもっと毒性の強い除草剤の大量使用というようなもっと積極的な除草方法に頼らざるを得ず、それは彼等に経済的な問題をもたらす。

 ウイスコンシン州の酪農家ケビン・グリスウォルドは、2,000頭の牛のために2,350エーカーの畑で、毎年、遺伝子組み換えとうもろこしとアルファルファーを栽培している。作物にラウンドアップ・レディを使用することで彼は生産コストを削減することができ、環境にもよいと彼は言った。彼は、畑の耕作も、もっと毒性の高い除草剤であるアトラジンの使用も少なくて済む。

 グリスウォルドは、除草剤耐性の問題はまだ起きていないが、それは確かに懸念があると述べた。”私は生産量が減ることには耐えられない”と述べた。


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見逃し:トラックからのこぼれが野生のナタネの原因であろうと、ある科学者らは言う。
 ノースダコタでは、農民は迷い出た(拡散した)ナタネを他の作物から離すための措置をとっている。定期的に除草剤を変えるというような良い管理方法は拡散した遺伝子組み換えナタネの問題を最小にすると、ノースダコタ州立大学ガブレリエル拡張校の作物システム専門家ロン・ベネダは延べた。

 有機栽培農家にとっては、遺伝的物質の拡散は問題である。認定有機栽培農家は、米・農務省の国家有機栽培プログラムの下で、遺伝子組み換えされた種子を使用することは許されない。

 ”畑から畑への遺伝子のあるレベルの流れを付是具ことは非常に難しいということは非常に明白である”と、有機食品と有機農業の恩恵を推進する組織であるコロラド州ボルダー有機センターの主席科学者チャールス・ベンブルックは述べた。

 ベンブルックによれば、有機農業家にとって、汚染を回避することは難しく、遺伝子組み換え作物が近くで栽培されている地域では特に難しい。

 作物をこの汚染から防ぐためのコストは有機栽培農家に重くのしかかるとベンブルックは言った。有機栽培農家は、相互授粉を避けるために、遺伝子組み換え作物を栽培するかもしれない隣接農家よりも、しばしば、若干早め、又は若干遅めに作物を栽培しなくてはならず、このことが生産高を低くする結果となる。彼等はまた、収穫時期に特別の措置をとらなくてはならず、作物が汚染されていないことを確実にするためのテスト費用を負担しなくてはならない。

 米農務省(USDA)は、認定有機製品中の遺伝子組み換えDNAに厳格な制限をしていないので、低レベルの汚染作物は有機と表示することができる。

 しかし、海外向けに有機製品を輸出する農家はもっと厳しい検査に直面する。”欧州連合や日本を含むもっと多くの諸国では遺伝子組み換え(GE genetically engineered)汚染の瀬源は非常に厳格である”とベンブルックは述べた。

 ある農家は、彼等の畑から遺伝的物質が流れることを防ぐための試みとして干渉地帯を設けている。

 科学者らはまた、新たな技術を探している。

NDSU Ag Communications
強欲なナタネ:ナタネの拡散を管理するためのひとつのアプローチとしてバイオ隔離を検討している。
 バイオ隔離は見るべきひとつのアプローチであると、テネシー大学ノックス校の植物生物学者ニール・ステュアートは述べた。例えば、科学者らは遺伝子組み換え植物からの花粉により授粉することができない作物を作り出す方法を見ている。

 ”バイオテクノロジーは、食料生産に多くをの寄与をしている”とセイジャズは述べた。”しかし、我々は遺伝子組み換え製品が商業用に市場に出すことを承認される前に、十分なリスク評価が行なわれること確実にする必要がある”。

 それは、セイジャズが最も懸念する農薬の広範な使用と関連する問題である。問題は次差異には作物技術にあるのではなく、化学的農薬の全面的な使用にあるのではないかと、セイジャズは疑っている。

ジョージア大学の作物専門家ウイリアム・ベンシルは、ある除草剤に自然に耐性を持つ雑草は、一千万の雑草のうち、ひとつであろうと述べた。

 毎年、同じ場所で同じ農薬を使用していると、耐性のない雑草は除去できるが、農薬使用により耐性を獲得した雑草が生き残ることになると、ベンシルは述べた。


訳注:日本における遺伝子組み換えナタネの問題


化学物質問題市民研究会
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