Pediatrics(小児科学) 2011年2月7日
ピペロニルブトキシド及びペルメトリンへの胎内曝露
36ヶ月神経系発達への影響

アブストラクト

情報源: Published online February 7, 2011 PEDIATRICS (doi:10.1542/peds.2010-0133)
Impact of Prenatal Exposure to Piperonyl Butoxide and Permethrin on 36-Month Neurodevelopment
http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/abstract/peds.2010-0133v1

Megan K. Horton, PhDa,e, Andrew Rundle, DrPHb, David E. Camann, MSc, Dana Boyd Barr, PhDd, Virginia A. Rauh, ScDe, Robin M. Whyatt, DrPHe
aSergievsky Center; eColumbia Center for Children's Environmental Health, Mailman School of Public Health; and bMailman School of Public Health, Columbia University, New York, New York;cSouthwest Research Institute, San Antonio, Texas; anddEmory University, Rollins School of Public Health, Atlanta, Georgia
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2011年2月9日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_11/110207_USA_Today_permethrin.html


 アブストラクト
目的:最近の農薬監視の結果は、住宅で使用される農薬に有機リン系殺虫剤からピレスロイド系殺虫剤へのシフトが起きていることを示唆している。ピレスノイド殺虫剤は潜在的な神経発達毒素であるが、その発達毒性は評価されていない。我々の目的は、ペルメトリン(一般的なピレスロイド)とピペロニルブトキシド(訳注1)(ピレスロイド相乗剤)への胎内曝露と36ヶ月神経発達との関係である。

方法:この研究の参加者は、ニュヨーク市の低所得層地域に住む黒人とドミニカ人の母親と新生児の前向きコホート研究の一部である。我々は、 出産時に採取した母親とへそ緒中の血漿中で測定したペルメトリン濃度及び、妊娠中に採取した個人の吸気中のペルメトリンとピペロニルブトキシド濃度の作用に関し、Bayley Scales of Infant Development, second edition による36ヶ月の認識力と運動能力の発達を検査した。全てのモデルは、性差、懐胎年齢、民族性、母親の教育レベル、母親の知性、家の環境的質、及び母親のタバコの煙及びクロルピリホス(訳注2)への曝露が管理された。

結果:個人吸気及び/又は血漿中のペルメトリンへの出生前曝露は、Bayley Mental Developmental Index 又は the Psychomotor Developmental Index の能力スコアと関係がなかった。データを調整した後、個人吸気サンプル中のピペロニルブトキシドに高いレベル(>4.34 ng/m3)で曝露した子どもたちは、低レベル曝露の子どもたちより、Mental Developmental Index で3.9ポイント低かった(95%信頼区間: -0.25 to -7.49)。

結論:ピペロニルブトキシドへの出生前曝露は36ヶ月神経発達にマイナス影響した。

訳注1
ピペロニルブトキシド
訳注2
EICネット:クロルピリホス
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2868
クロルピリホス(組成式:C9H11Cl3NO3PS)は有機リン系殺虫剤で、農薬としての用途のほか、シロアリによる建物への被害を防止する目的で木材に塗布、浸透させる防蟻剤としての用途もある。平成14年7月の建築基準法の改正によりクロルピリホスを使った建材の使用が禁止された。


関連記事

USA Today 2011年2月7日
胎内での農薬ペルメトリンへの曝露は
学習障害に関連する
情報源: USA Today Feb 7, 2011

Exposure to pesticides in womb linked to learning disabilities
By Liz Szabo, USA TODAY
http://yourlife.usatoday.com/parenting-family/babies/story/2011/02/
Exposure-to-pesticides-in-womb-linked-to-learning-disabilities/43401024/1


 胎内で高いレベルの農薬に曝露した赤ちゃんは、学習障害を引き起こすかもしれないと新たな研究が示唆している。

 この研究は、農業で一般的に使用されており、またシロアリ、ノミ、家屋内の虫を駆除するためにも使用されているピレスロイド系農薬の一種、ペルメトリンと呼ばれる化学物質に注目したものであると、主著者であるコロンビア子ども環境健康センターのメガン・ホルトンは述べた。ニューヨークで実施されたこの研究で対象とした妊婦の大部分はゴキブリ駆除のスプレーで曝露していた。

 家庭内で最も一般的に検出される農薬のひとつであるペルメトリンは、古い有機リン系農薬が脳の発達を阻害するという懸念のために廃止されているので、今日最もしばしば使用されていると、ホルトンは述べている。彼らの研究は本日、『Pediatrics 小児科学』で発表された。

 研究者らは、エアーモニターを背負ってもらった348人の妊婦を測定したとホルトンは述べている。研究者らは女性と彼らの子どもたちを3年間、追跡した。

 この研究によれば、出生前に最も高い農薬に曝露した子どもたちは、低レベル曝露の子どもたちに比べて3倍、精神的遅れになりやすい。出生前に最も高い曝露をした子どもたちはまた、知能テスト、Bayley Mental Developmental Index で約4ポイントスコアが低い。このテストは平均スコアが100点でほとんどの人のスコアが15ポイントの範囲内に入る。

 それは鉛によって引き起こされる知力低下とほぼ同じであるとニューヨークのマウントサイナイ医学校の小児科教授で環境健康の専門家であるフィリップ・ランドリガンは述べている。

 ピレスロイド農薬は、”脳の発達に有害である”ことによって虫を殺すと、ランドリンガンは述べている。今回の結果は、”非常に納得が行くことであり、深刻に受け止めるべきである”と、ランドリガンは述べている。

 この研究は、ペルメトリンと脳の損傷を初めて関連付けたものであり、研究者はこの農薬が本当に脳を害するということを結論付ける前に更なる研究を実施する必要があると、ジョン・ホプキンス ブルーミング公衆衛生校の準教授メアリー・フォックスは述べている。

 しかし、確定的なデータが例えなくても、妊婦が害虫駆除スプレーやその他の農薬への曝露を減らすことは理にかなっているとフォックスは述べている。

 例えば虫を駆除するためには、水漏れを直し、食物を密閉し、もし必要なら家の中ではなく、外をスプレ ーすることを彼女は示唆している。



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る