IPS ニュース 2010年11月11日
有害物質のホットスポット 世界的な汚染浄化基金が必要 情報源: IPS News Nov 11, 2010 Toxic Hotspots Require Global Superfund By Stephen Leahy http://ipsnews.net/news.asp?idnews=53532 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2010年11月13日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_10/10-11/101111_IPS_Toxic_Hotspots.html
それと対照的に、同じような数の人々が影響を受けているエイズ、結核、マラリアには、世界の関心と数十億ドル(数千億円)の金が注がれている。 ”有害な汚染は長い間ほとんどの政府の目に入らない”と『世界最悪の汚染問題報告書2010』の共著者一人であり、環境健康について活動しているグループであるグリーン・クロス・スイスのステファン・ロビンソンは述べた。 ”これらの汚染問題は、それほど高くなく効果的に処理することができるはずである”とロビンソンはIPSに語った。 過去に様々なグループによって設計された浄化プロジェクトは、非常にローテクで低コストのものから、遊び場の土壌撤去や地下水の浄化など、もっと技術的なプロジェクトまであると彼は述べた。
彼らの発見は、過去2年間ブラックスミス研究所の調査員によって実施された汚染サイトの1,000件を超える評価によるデータに基づいている。 ”これらの汚染サイトが、大きな多国籍企業によって引き起こされることはほとんどない。通常、それは、地域のビジネス、元政府系産業、又は金採鉱や鉛電池リサイクルのような非公式業者、又は手工業である”とフラーは述べた。 もっと衝撃的な有害物質汚染の事例のひとつに、今年の初めにナイジェリアの北西部の州ザンファラを訪れたメディシンズ・サンズ・フロンティア(MSF)の医師らが、子どもたちがほとんどいない村を発見したことである。400人以上の子どもたちが急性鉛中毒で死んだということを彼らは後で知った。その地域の残りの2,500人の子どもたちは、血液中の鉛濃度が高く、これらの濃度を低くするためにキレーションと呼ばれる緊急治療が必要であった。 ”これらの子どもたちのあるものは、かつて記録されたことのない世界で最も高い鉛濃度を有していた”と、汚染サイト評価を実施したブラックスミスの”世界インベントリー・プロジェクト”を指揮したブレット・エリクソンは述べた。 鉛は、潜在的な神経毒素であり、子どもたちの発達中の神経系と脳に影響を及ぼすので、子どもたちは特に影響を受けやすい。影響を受けた子どもたちの多くは、脳や神経系に永久的なダメージを受けるであろう。血液中の鉛濃度が5ポイント上がるごとにそれに対応してIQが4ポイント低下するとエリクソンはIPSに述べた。ある子どもたちは、IQを40あるいはそれ以上低下させるであろう鉛濃度であり、重大な精神的障害をもたらしている。 ナイジェリアの村の多くの村民は小規模金採鉱者であり、村の施設の中で金を含有する鉱石を破砕していた。彼らは鉱石はまた非常に高いレベルの鉛を含んでいることを知らない。子どもたちは、村中に広がっている鉛を含んだホコイを吸い込んでいる。 ブラックスミスはまた、いくつかの村と土壌の汚染除去を行なうために、地域のの当局者及び米国に拠点を置く会社とともに活動した。これは、世界保健機構(WHO)、米疾病管理予防センタ(CDC)、メディシンズ・サンズ・フロンティア(MSF)及びその他のパートナーが関与する主要な取り組みであるが、全体のコストは300万ドル(3億円)以下であると彼は述べた。 ”この種のことを扱う国際的な基金機関はないので、修復をするための基金は、例え比較的小額であっても、そのような金を集めるのは難しい”と彼は述べた。 エリクソンは、この2年間世界中の汚染サイトを探し、評価することに関わった160人以上の調査員を指揮した。例えば、人々が生き残るために、古い汚い産業の有害な廃墟の中で利用できるものを回収することを強制されている見捨てられた単一産業の町が旧ソビエト連邦中にある。 ”我々は、いつでもこのような報告を受けている。これらのサイトは、悲劇的であり、ウクライナのような国でもそれに対応するための能力が非常にわずかしかない”と彼は述べた。 中央アジアでは、ウラン鉱山廃棄物サイトの近くに住む人々は、放射性廃棄物で汚染された食物を食べ、空気を吸い、水を飲んでいる。”これは、子どもたちにとって非常に悪いことであり、多くの健康影響が出ている”とグリーン・クロス・スイスのステファン・ロビンソンは述べた。ソ連体制下では、これらのサイトは封じ込められ監視されていたが、最早現在はそうではない。”住民は、選ぶ道がないか、単に知らないのか、大量のウラン鉱山の廃石を建築材料として使っている”とロビンソンはIPSに語った。 多くの国は、比較的小額の10万〜30万ドル(1千万から3千万円)位の金で少しは浄化することできても、有害汚染サイトを浄化するための知識、技術的専門性及び能力が十分ではない。ブラックスミスとそのパートナーは、3千万ドル(30億円)の予算で約20サイトの浄化を行なった。 これらの問題への取り組みには国際的な基金が必要であり、数十億ドル(数千億円)という金額が、数百万の人々の命に大きな影響を及ぼす。 ブラックスミスは、最悪の汚染サイトを浄化するために、各国や寄付機関から寄付金を集めて分配するための健康・汚染基金を創設したいと望んでいる。 ”我々が活動する20カ国では、有害汚染サイトを評価し浄化に取り組む彼らの主なリソースは我々である”とフラーは述べた。”それは我々だ”。 |