ワシントンポスト 2009年4月16日
EPA 農薬中の化学物質のテストを義務付け
ヒトと動物へのリスク判断が目標


情報源 Washington Post April 16, 2009
EPA Will Mandate Tests On Pesticide Chemicals
Goal Is to Gauge Risk to Humans, Animals
By Juliet Eilperin
Washington Post Staff Writer
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/04/15/AR2009041501960.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2009年4月16日


 米環境保護庁(EPA)は初めて、農薬製造者に彼らの製品中に含まれる67種の化学物質について、それらが動物やヒトの成長、代謝、生殖をつかさどる内分泌系をかく乱するかどうか調べるためにテストすることを求めるであろうと昨日(4月15日)報じた(訳注1)。

 研究者らは、ポトマック川の卵を持ったオスの魚の問題を引用しながら、環境中に放出される化学物質が動物のホルモン系をかく乱するという懸念を提起していた。内分泌かく乱物質として知られる化学物質はヒトと動物が生成する又は分泌するホルモンに影響を与えるかもしれない。

 ”内分泌かく乱物質は、特に子どもたちに対し、生涯にわたる健康問題を引き起こす可能性がある”とEPA長官リサ P.ジャクソンはその声明の中で述べた。”この情報収集は、我々がアメリカ人を有害な暴露から守るために、コミュニティと産業とともに働くことに役に立つ”。

 テストは今年の夏に始まり、これらの化学物質がエストロゲン(訳注:女性ホルモンの一種)、アンドロゲン(訳注:男性ホルモンの一種)、及び甲状腺システムに影響を与えるかどうかに焦点を当てるであろう。

 農薬産業界の役員らはこの動きを予期しており、それは食品品質保護法の可決によって1996年に動き始めたと述べた。

 ”やっとその時期が来た”と主要な業界団体である米穀物協会(CropLife America)の会長で執行役員のジェイ・ブルームは述べた。”農薬については、我々は懸念が表面に出る可能性は非常に低いと思う”。

 つい今月、EPAは、新たなテスト方法に関連しコストと時間を削減するためにEPAの”内分泌かく乱物質スクリーニング・プログラム(Endocrine Disruptor Screening Program”)を変えたいとする米穀物協会からの請願を拒否したばかりである。しかしブルームは、EPAは4月3日付けの書簡の中で、実験動物のテストだけに頼るよりむしろ、時にはコンピュータ・モデルの使用の可能性の余地を残すことを含んで、いくつかの産業側の懸念を考慮すると記したと述べた。

 EPAはテストに求められる実験動物の数を少なくすることをいとわないように見えたと付け加えつつ、”それは勇気付けられるサインである”と述べた。

 国立環境健康化学研究所(NIEHS)と国家毒性計画(NTP)の長官であるリンダ・バーンバウムは、このプログラムは農薬化学物質へのヒトの暴露が骨の成長や脳の発達にどのように影響を及ぼすことがあるのかを”もっと組織的に見る方法”を示していると述べた。

 バーンバウムは、科学者らは異なるホルモンかく乱物質がヒトの体内でどのように相互作用し蓄積するのかを検証することが必要であると加えつつ、”これはよい出発である”と述べた。”ある化学物質、特に人々がそこで暴露している化学物質が我々のホルモン系に影響を与えることがあるか?ということを知ることは非常に重要である”。

 研究者らはこれらの化学物質の動物における最も目に見える影響を観察したが、ある人々は、特定の感受性にもよるが、同様の問題を経験する可能性があるとバーンバウムは述べた。

 ヒトが影響を受ける心配はないということは現実的ではないと思う”と、研究により用量を決定する必要があると付け加えつつ、”因果関係を示すためにこれらの化学物質はどのくらいの量が必要なのか?”と彼女は述べた。

 内分泌かく乱物質スクリーニング・プログラムを統括するリンダ・フィリプスは、第2段階のプログラムからデータを得るのに約2年かかり、その後EPAがホルモンかく乱に関する化学物質の影響について最終的な確定をするためにさらに1年かかるであろうと述べた。

 米穀物協会のブルームは、農薬製造者らは、”我々の製品が大丈夫であるということについて非常に自信がある”と述べた。彼は、”もし我々の製品が懸念を引き起こすというようなことについて何かを知ることがあれば、我々はテーブルにつき、リスクを軽減するために喜んで次の段階に進み、必要な行動をとる用意がある”と付け加えた。


訳注:EPAウェブページ
EPA 2009年4月15日 内分泌かく乱物質スクリーニング・プログラム 変更された方針・手順と最終リスト

訳注1
EPA 内分泌かく乱物質スクリーニング・プログラム
EPA Endocrine Disruptor Screening Program (EDSP)
http://www.epa.gov/scipoly/oscpendo/index.htm


2009年4月15日、EPAは下記3つの官報を発表した。


化学物質問題市民研究会
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