ドイツ便り(8) 2008年10月14日
「原子力発電所の近所に住む子どものガン発生率」 に関する KiKK報告書の検証結果が発表 情報源:ドイツ在住者からの投稿記事 掲載日:2008年10月14日 更新日:2008年12月16日 化学物質問題市民研究会 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_08/08_10/081014_Childhood_leukemias.html 2007年12月にドイツ放射線保護庁BfSが、23年間にわたる統計データを基にした、原発の近所における子どものガン発症に関する疫学的研究、略称KiKK報告書を発表したが、「原発の立地場所の周辺では5歳以下の子どもの白血病に罹るリスクが高くなる」というこの報告書の中心的な結論の重大さと結論を導く方法が純粋に統計的であったために、連邦環境省はBfSとは別の機関である放射線保護委員会SSKにこの報告書の内容を再検討するように依頼した。 予定どおり、9ヵ月間の検討を経て、2008年9月26日にSSKは再検討の報告書を決議した。これを受けて連邦環境省は2008年10月9日にプレスリリースを発表した。 連邦環境省プレスリリース(No. 219/08): @原発の立地場所から半径5km以内に住む、5歳以下の子どもは白血病 を発症する確率が有意に高いという、KiKK報告書の結論は正しい。 A原発のつくりだす放射線曝露によっては@の結論は説明できない。 したがって、@の結論の原因解明は今後の研究の課題である。 B原発のつくりだす放射線曝露が@の原因ではないことが確認されたので、放射線保護のためにドイツの原発の周辺で新たな対策を導入する必要はない。 原発周辺の子どもの白血病発症増加の原因に関しては世界中の研究努力も今までのところ、説明のモデルを見出していない。このことは、とくに世界保健機関(WHO)がBfSと共催した2008年5月の国際会議、ICNIRP/WHO/BfS: International Workshop on Risk Factors for Childhood Leukemia. Berlin, Germany, May 5-7, 2008でも確認された。 プログラムによると、2008年5月6日には次のテーマの講演と議論が行われた: ● Childhood leukemias near nuclear installations ● Childhood Leukemia near British nuclear installations: methodological issues and recent results ● The recent KIKK study: results put into perspective http://www.icnirp.org/WChildhoodLeukemiaProg.htm 今後の予定としては、 *11月中旬にはSSKが検討の理由書(約400頁)を発表、 *ボンで2008年12月16日に公開討論会(SSKが議論に応じる) これらを踏まえて最終的な政策判断が為される。
なお、原発の立地場所から半径5km以内に住む、5歳以下の子どもは白血病を発症する確率が有意に高いことが確認されたのであるから、そのメカニズムは未解明だといっても、《予防原則 (precautionary principle)》の観点から、該当する子どものいる家族にはリスクの可能性を通告し、...というような議論は今のところ話題になっていない。 そもそも、2007年12月8日のドイツの新聞とテレビは一斉にトップで本件を報道したが、今回は、筆者の知るかぎりでは、新聞もテレビも報道せず、唯一、Der Spiegel というインテリ向け週刊誌が報道しただけである。また、日本のメディアは2007年12月には東京新聞と時事通信だけが報道したが、今回は報道は皆無である。 関係リンク(すべてドイツ語) ○連邦環境省 http://www.bmu.de/pressemitteilungen/aktuelle_pressemitteilungen/pm/42345.php ○放射線保護庁BfS http://www.bfs.de/en/kerntechnik/kinderkrebs/Stellungnahme_SSK ○放射線保護委員会SSK http://www.ssk.de/werke/kurzinfo/2008/ssk0806.htm 以上 |