Epidemiology 2008年5月7日
胎児期及び出生後の 携帯電話への暴露と子どもの行動障害 アブストラクト紹介 情報源 Epidemiology. 2008 May 7. Prenatal and Postnatal Exposure to Cell Phone Use and Behavioral Problems in Children Divan HA, Kheifets L, Obel C, Olsen J. From the aDepartment of Epidemiology, UCLA School of Public Health, University of California, Los Angeles, CA; and bInstitute of Public Health, Department of General Practice, University of Aarhus, Aarhus, Denmark. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18467962 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2008年6月5日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_08/08_05/080507_Epidemiology_cell_phones.html 背景: 世界保健機関は以前、無線周波数電磁界の子どもへの可能性ある影響を調査する必要性を強調した。我々は胎児期及び出生後の携帯電話への暴露と子どもの行動障害との関係を検証した。 方法: 母親らは妊娠初期にデンマーク全国出生コホートに募集された。これらの妊婦の子どもたちが2005年と2006年に7才に達した時に、母親は、過去の携帯電話使用に対する暴露と共に、子どもの現在の健康状態と行動の状況に関する質問票に答えるよう求められた。母親は子どもの行動を「行動チェックリスト(Strengths and Difficulties Questionnaire)」を使用して評価した。(訳注) 結果: 13,159人の子どもの母親は、妊娠中の携帯電話の使用及び現在の子ども達の携帯電話の使用について報告する質問票に回答した。大きなオッズ比が、可能性ある胎児期又は出生後の携帯電話使用により暴露した子どもたちに観察された。潜在的な外乱を調整した後、胎児期及び出生後の両方で携帯電話に暴露した子ども達について、総合的な行動障害スコアのオッズ比は1.80(95%信頼区間= 1.45-2.23)であった。 結論: 胎児期の携帯電話への暴露と、低度ではあるが出生後の暴露は、入学時期頃の年令で情緒障害及び多動障害と関連があった。これらの関連は、因果関係がなく、測定されていない外乱によるものかもしれない。もし因果関係があるなら、携帯電話は広く使用されているので公衆健康の懸念となるであろう。 訳注 参考:厚生労働省のStrengths and Difficulties Questionnaire http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken07/h7_04d.html
パワーウォッチ 2008年5月14日の解説
妊婦の携帯電話の使用は子どもに行動障害をもたらすか? 情報源 Powewatch - 14/05/2008 Using phones in pregnancy and child behavioural problems? http://www.powerwatch.org.uk/news/20080514_phones_behaviour.asp 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2008年6月5日 背景: 世界保健機関は以前、無線周波数電磁界の子どもへの可能性ある影響を調査する必要性を強調した。アメリカとデンマークの研究者らが胎児期及び出生後の携帯電話への暴露と小さな子どもの行動障害との関係を検証した。 結果: 結果は非常に驚くべきもので、母親が妊娠中に携帯電話を使用した子どもには行動障害が80%増大するというものであった(CI: 1.45-2.23)。この調査はこの問題に関するの初めてのものであり、その結果は注意して判断されるなくてはならない。 Prenatal and Postnatal Exposure to Cell Phone Use and Behavioral Problems in Children. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18467962 (携帯電話と行動障害)の関連性について、結果に影響する多くの要素があり、それらのあるもの(性差、社会経済的階層、精神的疾病の家族歴、喫煙)が考慮された。これらの要素を考慮したことで、結果は実際に少しばかり強固で有意なものとなった。しかし考慮しなかったが有意な影響を与える外乱要素もあるかもしれない。 これは統計的に有意な所見であり、このことの関連性について明白なメカニズムはまだわかっていないが、懸念するに値する理由を与えるものである。 どのような暴露か? この論文は出生前の胎児への無線周波数の暴露に目を向けているが、実際にはこれらは母親が使用する携帯電話からの非常に微弱な無線周波数である。もし、母親が携帯電話をウェスト・ポーチに入れているなら著しい暴露を引き起こすが、ズボンのベルトに通した皮ケースに入れているのは主に男性である。母親の85%は通常、携帯電話をハンドバッグかケースに入れて運んでおり、82%が個人用ハンドフリーキット又はイヤーピースを使用しておらず、したがって使用中には携帯電話は胎児からは十分に離れていた。 パルスマイクロ波と同様に、GSM方式携帯電話はバッテリーからのサージ電流で強い217Hzのパルス低周波数電磁界をつくり出す。これらは携帯電話から1cmの距離(使用者の顔近く)で8マイクロテスラの強さであるが、離れると急速に低下する(30cmでは非常に低レベルとなる)。そこで携帯電話が胎児に影響を与えそうなのは待機中(on standby)又は腰につけた場合だけである。(携帯電話は待機中にこれらの強いパルスを定期的に発する)。これらのレベルを考慮すると、わずか0.4マイクロステラ50Hz磁界で子どもの白血病の発生率が2倍になる。体内の誘導電流は周波数とともに増大し、したがって上述の217Hzで8マイクロテスラの磁界は50Hzで35マイクロテスラに相当する。たとえそうでも、携帯電話は胎児に近づけて(すなわち腰に着けてあるいは腰に近づけて)持ち運ばなくてはならないだろう。また、電車からの電磁界やその他の発生源も大きな外乱となりうる。 ひとつの可能性は、直接的な生物化学的な変化を通じてあるいは後天的変化を通じて、母親のEMF暴露は胎児の発達に影響を与えているということである。母親の後天的変化は、特にストレスに起因して、胎児に伝えられることは明らかである。携帯電話の使用が(EMFを通じて)直接的に、又は(もっと多忙でストレスのある母親のライフスタイルを通じて)間接的に子どもに伝えられ、異常なホルモン・レベルが、報告される行動障害を引き起こしている可能性がある。 母親の出産前の暴露が胎児期の子どもの発達に影響を与えることがあり得るとすることには科学的なサポートがあり(Yehuda 2005, Brand 2006)、また動物実験でもあり(Waterland 2003, Carere 2005)、もしその関連が因果関係なら、これらの関係は最もよく説明できるように見える。 この調査の著者の1人からのコメントを含んで、この論文の更なる洞察はルイス・スレジンのマイクロウェーブのウェブサイトで見つけることができる。 |