米化学会 ES&T サイエンス ニュース 2008年1月2日
抗菌剤が内分泌かく乱物質として作用
広く使用されている抗菌剤成分トリクロカルバンが天然ホルモンの影響を増幅

情報源:ES&T Science News - January 2, 2008
Antibacterial acts as endocrine disrupter
Researchers find that a widely used antibacterial compound amplifies natural hormone effects.
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2008/jan/science/bw_triclocarban.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2008年1月4日

  Endocrinology 11月29日電子版に発表された研究(2007, DOI: 10.1210/en.2007-1057)によれば、石けん、ローション、衛生手拭きのような身体手入れ用品や消毒用品に約45年間、広く使用されている抗菌剤成分トリクロカルバンは天然のテストステロン(訳注:男性ホルモンの一種)の作用を増幅する。他の知られている内分泌かく乱物質には、エストロゲン作用、抗エストロゲン作用、アンドロゲン作用、抗アンドロゲン作用を持つものがある。

 この新たな研究で、カリフォルニア大学デービス校とエール大学の研究者らは、ヒトの細胞と生きたラットをトリクロカルバン又はいくつかのポリ塩化ジフェニール尿素化合物のうちのひとつに、単独で、又は人体内で生じるのと同様なレベルでテストステトロンと共に暴露させた。トリクロカルバンは、男性、女性、子どもの体内にあるテストステロンの影響を増幅する。ヒトの細胞を使った試験管テストでは、トリクロカルバンとテストステトロンの相互作用は相乗的であり、1回のテストで45%の信号増加等があることを示している。ラットでは、この組み合わせはいくつかの生殖関連器官で重量の相加的な影響を示した。

 アメリカの市場用に毎年約100万ポンド(約500トン)のトリクロカルバンが製造されている。抗菌剤はアメリカの下水系に広がっており、肥料に使用される都市下水汚泥中に残留する。抗菌剤成分とその構造的類似成分への長期的複合暴露の健康影響についてはほとんど分っていないとカリフォルニア大学デービス校健康環境センターの副ディレクターであるビル・ラスリーは述べている。しかし、彼と同僚らは、この新たな証拠は、トリクロカルバン及び他の構造的類似物質は広範な生殖及び発達障害に役割を果たしているかもしれないと述べている。

ロバート・ワインホールド(ROBERT WEINHOLD


訳注:関連情報



化学物質問題市民研究会
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