ブラックスミス研究所 2007年9月12日
2007年最悪汚染場所トップ10
新たに中国、インド、中央アジアのサイト


情報源:Blacksmith Institute September 12, 2007
THE 2007 TOP TEN OF WORST POLLUTED PLACES
Updated List Includes New Sites in China, India and Central Asia
http://www.blacksmithinstitute.org/press.20070912.php

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年9月16日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_07/07_09/070912_BS_Top_10.html


【ニューヨーク】2007年9月12日−アメリカを拠点とする独立系環境団体、ブラックスミス研究所はグリーン・クロス・スイスと提携して、世界で最も激しく汚染されている場所のトップ10を発表した。トップ10の場所は7カ国にあり、1,200万以上の人々に影響を与えている。

 ”ブラックスミス研究所の2007年世界最悪汚染場所”は汚染が人の健康、特に子どもの健康に最も厳しく影響を与えている場所に関する報告書であり、トップ10のリストが示されている。2007年のリストは、4つの新たな場所−インド2ヶ所、中国1ヶ所、アゼルバイジャン1ヶ所−、及び2006年のリストから持ち越した6ヶ所からなる。

殺人コミュニティ2007年

 ブラックスミス研究所の2007年世界最悪汚染場所は、トップ10を国毎にアルファベット順にリストしているが、それはリスト内では汚染場所を順位付けることができないからである。同報告書は、”場所の広い範囲、汚染物質、汚染の動特性などのために、順位付けは現実的ではない・・・”と述べている。新たな場所はアスタリスク(*)が付されている。

ブラックスミス研究所の2007年世界最悪汚染場所 (地図
  • スムガイト(アゼルバイジャン)(Sumgayit, Azerbaijan*
    影響を受ける人数:275,000人
    汚染の種類:有機化学物質、石油、水銀等の重金属
    汚染源:石油化学及び複合産業施設

  • リンフェン(中国)(Linfen, China
    影響を受ける人数:3,000,000人
    汚染の種類:飛散灰、CO、NOx、SO2、M-2.5、PM-10、揮発性有機化合物、ヒ素、鉛
    汚染源:自動車及び産業施設からの排出

  • 天津(中国)(Tianjin, China*
    影響を受ける人数:140,000人
    汚染の種類:鉛とその他の重金属
    汚染源:鉱山と精錬

  • サキンダ(インド)(Sukinda, India*
    影響を受ける人数:2,600,000人
    汚染の種類:六価クロムとその他の金属
    汚染源:クロム鉱山と精錬

  • バピ(インド)(Vapi, India*
    影響を受ける人数:71,000人
    汚染の種類:化学物質と重金属
    汚染源:産業施設

  • ラオロヤ(ペルー)(La Oroya, Peru
    影響を受ける人数:35,000人
    汚染の種類:鉛、銅、亜鉛、SO2
    汚染源:重金属鉱山と精錬

  • ゼルジンスク(ロシア)(Dzerzhinsk, Russia
    影響を受ける人数:300,000人
    汚染の種類:化学物質と有害副生物、サリン、VXガスなどを含む、鉛、フェノール
    汚染源:冷戦時代の化学兵器製造

  • ノリスク(ロシア)(Norilsk, Russia
    影響を受ける人数:134,000人
    汚染の種類:大気汚染、微粒子、SO2、重金属(ニッケル、銅、コバルト、鉛、セレン)、フェノール、硫化水素
    汚染源:ニッケル及び関連金属鉱山、精錬

  • チェルノブイリ(ウクライナ)(Chernobyl, Ukraine
    影響を受ける人数:当初5,500,000人、現在議論ある数
    汚染の種類:ウラン、プルトニウム、セシウム137、ストロンチウム、及びその他の金属を含む放射性ダスト
    汚染源:1986年の原子炉の炉心溶融事故

  • カブウェ(ザンビア)(Kabwe, Zambia
    影響を受ける人数:255,000人
    汚染の種類:鉛、カドミウム
    汚染源:鉛鉱山と精錬
”最悪リスト”は進化する

 トップ10リストは、国際的な専門家らによって考案された得点基準に基づいている。専門家らには、ジョンズ・ホプキンズ大学、ハンター・カレッジ、ハーバード大学、IITデリー、アイダホ大学、マウント・サイナイ病院の研究者ら、及びブラックスミス研究所技術諮問委員会(TAB)を含む主要な国際的環境改善会社の指導者らを含む。スイスのグリーン・クロスの専門家も本年度の評価に参加した。

 同報告書によれば、2007年トップ10リストの方法論は、”汚染の規模と有毒性及びリスクにさらされる人々の数ににもっと重み置く”ように改善された。スムガイト(アゼルバイジャン)とバピ(インド)が含まれたのは得点基準が変更されたからである。天津(中国)とサキンダ(インド)は、今年度のリスト作成時に新たに追加された。

 ”我々は、2006年リストを発表した後に、世界中の人々から40以上の新たな候補地の連絡を受けた。我々のデータベースは現在、400以上の汚染場所を含んでいる”とブラックスミスのグローバル運営部門ディレクター、ハンラハンは述べた。”我々は、評価プロセスを改善し報告書を毎年更新するつもりである。”レーダーで途上国の極端な汚染の問題を把握することが第一歩である”。
汚染30ヶ所

 2007年報告書のもうひとつの企画は、トップ10を含むと包括的な汚染場所、”汚染30ヶ所("Dirty 30)”である。2007年リストからは消えたが2006年リストにあった4ヶ所、ハイナ(ドミニカ)、ラニペット(インド)、マイルースー(キルギスタン)、及びルドゥナヤプリスタン(ロシア)は全てこの拡大リストに含まれる。

 汚染30ヶ所のほとんどはアジアに存在するし、中国、インド、及びロシアが最大の数を占める。汚染30ヶ所に現れない地理上の地域は中近東とオセアニアだけである。これら汚染30ヶ所の有害物質汚染は、様々な産業施設、大規模な鉱山と精錬所、及び冷戦時代の化学兵器製造施設などを汚染源とする。

 ”汚染30ヶ所の全ての場所は人の健康に非常に有害で危険である”とハンラハンは述べている。

トップ10への新たな追加

 鉱山、冷戦時代の遺産である汚染、規制されない産業製造がブラックスミス研究所の報告書によって特定された汚染の背後にいる主要な犯人である。2007年トップ10リストに現れた新しい場所の中で、大量の鉛製造基地である中国の天津は、同国の鉛生産高の半分を占めている。鉛中毒は子どもの知的発達に重大な影響を与える。

 インドのバピは、多くの産業施設のある工業地帯の一例である。50以上の施設が地域の土壌と地下水を農薬、PCB類、クロム、水銀、鉛、カドミウムなどで汚染している。ブラックスミス研究所の報告書は、”バピの水銀は WHO の健康基準より96倍高い”と述べている。”インドのサキンダは、インドのクロム鉱床の97%以上を埋蔵している。環境規制なしに12の鉱山が操業しており、六価クロムが飲料水供給系を汚染している。

 アゼルバイジャンのスムガイトは、かつてのソ連邦の産業基地であり産業化学物質と重金属によって汚染されている地域である。報告書によれば、スムガイトのがん発症率は全国平均よりも22〜51%高く、遺伝子の突然変異や先天性障害はありふれたことである。



ブラックスミス研究所とグリーン・クロス・スイッツランドについて

 ブラックスミス研究所は、危険な汚染場所を特定しその浄化を行うために、最も生産性の高い工法を探るための”Polluted Places”手法を用いて、世界中で活動している。最大の汚染地域に対して、ブラックスミスは、国際機関による潜在的な資金調達のための大規模事業を特定するために、環境当局を含む地域のパートナーとともに活動している。1998年以来、ブラックスミスは9ヶ国で29プロジェクトを完工し、現在12ヶ国で42プロジェクトを遂行中である。

 グリーン・クロス・スイッツランドは産業災害及び軍事災害によって引き起こされた重大なダメージを復興するために活動している。同組織は、化学物質と放射性汚染によって影響を受けた人々の生活を改善することを主眼としつつ、冷戦時代から汚染された場所を浄化している。グリーン・クロスは対立ではなく協力の精神で持続可能な開発を推進している。

 ブラックスミス研究所とグリーン・クロスは2006年以来提携している。両組織は、ロシア極東のルドゥヤ・プリスタンにある鉱山と精錬所の遺産である汚染を浄化するプロジェクトをで共同で遂行している。同地は2006年トップ10にリストされた。



化学物質問題市民研究会
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