ES&T 2006年2月22日
ワインバーグ社 デュポンに問題解決の指南を提案

情報源:Environmental Science & Technology: Business & Education News - February 22, 2006
The Weinberg proposal
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2006/feb/business/pt_weinberg.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年2月27日

 科学コンサルタント会社は問題が起きている会社を助けると言うが、批評家はそのようなことは不確実性を捏造し科学を蝕むものであると言う。


 ワシントンに拠点を置く世界的な科学コンサルタント会社ワインバーグ・グループによって2003年4月に書かれた5ページの手紙は、デュポン社によって製造されている化学物質PFOAに関するアメリカ環境保護庁(EPA)の訴訟書類の中に紛れ込んでいた。この手紙はデュポンの特別事業担当副社長ジェーン・ブルックスに宛てられており、ワインバーグ・グループが、PFOA(パーフルオロオクタン酸)に関し強化されつつある規制と法的危機に対処するために同社を如何に助けることができるかを述べたものである。PFOAは、過フッ素化合物類の構成要素の一種であり、防水防汚性で有名である。PFOAはテフロンを製造するために使われ、かつてはステインマスター(デュポン社防汚剤)やゴアテックス(ゴア社防水剤)のような他の製品にも使用された。

批評家らは、ワインバーグ提案に詳述されているような戦術は化学会社や医薬品会社によって彼らの製品に対する訴訟や規制に対処するためによく用いられると述べている。
ワインバーグ提案[354KB PDF]
、”デュポン社が直面している問題に関する我々勧告の中で一貫しているテーマはデュポン社は全てのレベルで論争を作り出していかなくてはならない(太字オリジナル)ということである”−とこの手紙は述べている。この手紙はさらに続けて、ワインバーグ・グループは23年間、”環境曝露に関連すると疑われた問題を処理するために多くの会社を助けてきた。1983年のエージェント・オレンジから始まり、我々は顧客が抱える規制上、法律上、及び公衆関連の多くの課題について、顧客のために規制を押さえ込み、和解を引き出すことに成功してきたが、さもなければ化学産業は損なわれていたであろう。”

 デュポン社の広報担当官はデュポンがワインバーグ・グループを雇ったが、ワインバーグ・グループが計画に述べられている全ての項目を実施したという証拠はないと言明した。それにもかかわらず、専門家らは、製品の安全性又は健康影響についての科学的疑義に産業側が対処することについて、これらのコンサルタント会社がどのようにして産業側を助けたかを示す明確な例の一つをその文書が示していると主張している。これらのコンサルタント会社は、公判中に裁判官に揺さぶりをかけ、潜在的な規制管理を妨げ、製品の健康影響についての公衆の見解に影響を与えるために、見かけの科学的根拠に基づいた法的防衛キャンペーンを展開する。ジョージ・ワシントン大学科学知識・公衆政策プロジェクト議長デービッド・ミカエルのような批評家らは、これらのグループはミカエルの言葉によれば規制や民事訴訟を遅らせるために”不確実性”を偽造した−と非難している。

 この2003年の手紙は、EPAがPFOAの可能性ある健康影響についてのリスク評価のドラフトを書き終えようとしている時に、ワインバーグ・グループからデュポン社に届いた。同社はまた、ウェストバージニア州で飲料水中のPFOAから心身に有害な健康影響を被ったとする原告による集団民事訴訟に直面していた。2004年及び2005年に、JP モルガン・ワールドワイド・セキュリティ・サービスはデュポン社の投資家らのために同社はEPAから3億ドル(約330億円)以上の罰金と合計1.5億〜8億ドル(約165億〜880億円)の債務に直面すると予測する報告書[1MB PDF] を発表した。デュポン社はまた、フルオロポリマーとテロマーの事業の危機に直面していたが、、報告書によれば2004年においては、12.3億ドル(約1,350億円)(総売り上げの4%)、税引き後利益1億ドル(約110億円)であった。実際にデュポン社は、2005年3月に製造工場周辺の住民達の集団訴訟に対し、1.07億ドル(約120億円)で和解した。また、2005年12月、デュポン社はPFOAはヒトの胎盤を通過することができることを示す1981年の研究結果をEPAに報告しなかった件で1650万ドル(約18億円)の罰金をEPAに支払って和解した。

インタビュー記録
 下記は、ワインバーグ・グループのCEOであるマシュー・ワインバーグ氏とのインタビュー記録である。ES&T はワインバーグ・グループの事務所を訪ね、マシュー・ワインバーグ氏にPFOAに関するEPAの訴訟書類の中で発見されたワインバーグ・グループからの手紙を見せてコメントを頂きたいとお願いした。その手紙はデュポン社宛てのものであり、ワインバーグ・グループの製品防衛担当副社長テレンス・ガフネイ氏の署名があった。
 ES&T は後でデュポン社と連絡を取り、同社は、ワインバーグ・グループは、”我々の会社が巻き込まれている問題に関する科学的第三者団体の専門家を特定することについて我々を支援した”−ということを確認した。デュポンの広報担当官は後で、この問題は"多分"PFOA”であろうと述べた。

A: この手紙は紛れもないワインバーグ・グループからのものだ。よろしい。何が書いてあるのか見てみよう。
Q: テレンス・ガフネイ氏はもうあなたのところでは働いていないのですか?
A: その通り。
Q: 分かりました。あなた方はもうこの業務は終了したのですか?
A: 私には我々の顧客について話をする自由はない。
Q: そうですか。分かりました。もし私がデュポンに電話したら、彼らはあなた方が彼らと仕事をした、又は、しなかったということを私に話してくれるでしょうか?
A: 私には、デュポンがあなたになんと言うかは分からない。
Q: 分かりました。
A: デュポンに聞くべきですよ。
Q: この様な手紙は一般的な契約ですか?
A: そうではない。これは契約ではない。
Q: それでは、これは一般的なセールスのやり方ですか?
A: 分からない。ワインバーグ・グループは科学的コンサルタント会社だ。
Q: 分かりました。
A: 我々は、我々の業務の一部として、彼らが彼らの製品について正しいデータを出すよう支援している。
Q: それではあなたはこの文書について知らないなら...これは実際の文書かどうかあなたは確かではないのですか?
A: 確かではないが、それは我々の事務所から出されたもののように見える。
Q: 分かりました。
Q: 私はあなた方がデュポンとの業務を完了したかどうかの証拠を見つけることができませんでした。他の人たちに聞き回っても何も見つけることができなかった・・・。もっと多くの書類があっただろうにEPAも証拠を見つけることができなかった。いつかまた、あなたと話をするためにもう一度出直した方がよいかもしれません。そうなるかどうか分かりませんが。
A: いつでも電話をください。
Q: フタル酸エステル類に関しては誰がやっているのですか?
A: 私には、顧客についてしゃべる自由はない。
Q: 分かりました。
Q: しかし、ラム氏はあなたの会社で働いてるのですね?
A: ラム博士は働いている・・・ラム博士はワインバーグ・グループの従業員だ。
Q: 分かりました。あのー、たばこ事件の文書、あれはワインバーグ氏に言及していますが、あれはあなたの父君ですか?父君のマイロンさんですか?
A: ええ。私はそれはワインバーグ博士に言及していると思う。そうならそれは私の父、マイロンだ。
Q: あなたの父君、マイロンさん?
A: その通りだ。
Q: あなたの父君はまだ従業員ですか?
A: えーと・・・
Q: もう退職されたのですか?
A: どっちの答えをあなたはほしいのか?
Q: えーと、彼は・・・?
A: 彼はもうワインバーグ・グループの従業員ではない。
Q: 分かりました。あなたはテレンス・ガフネイがどこにいるかご存知ですか?
A: 私はテレンス・ガフネイがどこにいるか知らない。
Q: 分かりました。
A: 正直に言うとワインバーグ博士はまだ働いている。
Q: え?そうですか。彼はまだ・・・。分かりました。
A: そしてまだワインバーグ・グループで働いている。
Q: そうですか?
A: これで私はあなたの質問に正確に答えた。
Q: それはよかった。
A: しかし、私はあなたが悪い印象を持って帰ると思う。
Q: 大丈夫です。
A: 彼はもうただの従業員ではない。
Q: 分かりました。何か他におっしゃりたいことは、これをお読みになってからにしますか? 何かコメントがありますか・・・?
A: 他に質問は?
Q: そうでね。私が関心を持っていることの一つは・・・。私はそれを読んでいただく機会を差し上げたかっただけです。
A: 私は精読した。
Q: 分かりました。ここにある、私は興味深いと思っているのですが、特別の一節が不思議です。”既存のデータを分析してPFOA曝露の既に知られた健康への利益のようなものを特定することによって論争を生成する、又は/及び、PFOAは血清濃度レベルの範囲では安全であるというだけでなく、実際に健康に利益をもたらすということを示す研究を構築する”。ちなみにそれは、”酸素搬送能力と心臓血管疾患の防止”と言っています。それは心臓血管・・・、失礼。えーと心臓血管疾患。しかし心臓血管疾患・・・。何か分かりますか? それを信じることができるようなピアレビューを受けた論文が何か発表されているとか・・・?
A: 私はPFOAの専門家ではないから、何が発表されていたのか、発表されていなかったのか言うことはできない。
Q: 分かりました。結構です。私はあなたに聞いててみたらどうかなと思っただけです。他に何かおっしゃることは?
A: ひとつ、あなたに質問がある。私は、我々が話し合って価値のあるような何かをその文書の中に見たのか理解できない。
Q: そうですか。それは非常に興味深い。私はこの一節を特にデービッド・オゾロフに見せました。あなたが彼をご存知かどうか知りませんが。
A: 名前は聞いたことがあるが、思い出せない。
Q: えーと。彼はPFOAの科学諮問委員会の委員でした。彼はこの一節を”幻想的な考え”と呼びました。
A: わかった。私はあなたが見ているこの手紙は営業用の文書であると強く示唆したい。
Q: 分かりました。
A: 私は、とにかくそれは主張を形成し、形作り、作り上げる文書であり、特定の見解を示すことを意図したものではない。それは、我々が考えていることや可能なことを伝えるための営業用文書である。しかし、今、あなたが私に読んで聞かせた一節に、”調査と分析が必要である”と明確に述べている。私はその文書が実際に実施されたということを意味するとは思わない。
Q: 分かりました。
A: それは実施されたかもしれない。他の人がやったかもしれない。我々がその仕事をやった、又はやろうとしたということをこの文書が主張しているとは思わない。
Q: 分かりました。
A: 私があなたに言うことは、あなたはこの文書が言っていることだけに執着し、それが言っていないことにまで拡大しようとしないことだ。
Q: いーえ。私は何も拡大しようとはしていませんよ。私はただ他の人にそれを渡し、それを読ませ、彼らの意見が何だったのかをあなたに伝えているだけです。
A: それなら、我々が書いたものに対する彼らの意見は、彼らの意見だ。
Q: そうです。
A: それは必ずしも事実ではないであろう。彼らが書いたわけではないのだから。
Q: 全くその通りです。それは彼らの意見ですから。
A: しかし、科学では事実もある。
Q: その通りです。
A: 意見ではない。
Q: そうです。
A: 人々は科学的データを様々な根拠に基づいて異なって解釈することができるということは認める。しかし、科学における真実は、私が信じるところでは、全ての信頼できる科学者らが求めることである。
Q: 分かりました。その通りだと思います。他になにかありますか?
A: 私の名刺をあげよう。
Q: どうも。
 ES&T は、手紙の信憑性については、ワインバーグ・グループのCEOであるマシュー・ワインバーグに確認し、デュポンの広報担当官は ES&T にワインバーグ・グループは数年前、デュポン社のために確かに仕事をしたと述べた。”彼らは我々の会社が巻き込まれている問題に関する科学的第三者団体の専門家を特定することについて我々を支援した。” しかし、仕事について質問すると、報担当官は "多分"PFOAである。この手紙は3年前に書かれたと思う”−と述べた。

 インタビューで、ワインバーグは、この提案を”営業用文書”であると述べた。後で彼は、”私があなたに言うことは、あなたはこの文書が言っていることだけに執着し、それが言っていないことにまで拡大しようとしないことだ”−と付け加えた。

営業トーク(売り込み)

 手紙の一節は、科学に基づいて、どのように防衛戦略を開発するかについて述べている。”我々は、ひとつの目標、すなわち顧客が望む結果を念頭に置き、我が社の科学的そして知的資本を活用し、注力し、取り込むであろう。” 手紙の中の他の一節では、”このこと(訳注:防衛戦略を開発)には、PFOAと疑われている催奇性やその他主張されている害との関連を撃破する論文や記事の出版を利用することが含まれる”−と述べている。

 ミカエルは、その手紙が営業用のものであるとするワインバーグに同意しているが、しかし、それは、”製品防衛会社”によって作られたものであり、科学についてのものではないと付け加えた。”ここで言っていないことは、我々は科学を正当なものにする”ということである−と彼は指摘した。”ここで言っていることは、望む通りの結論を科学が出すことを確実にする”ということである。ミカエルはこの手紙を、ビジネスがよくやることとして彼が今まで見てきたこと−訴訟や法的措置を食い止めるために科学的疑いを作り出すこと−の最もよいひとつの例であるとした。

 彼らは、規制当局がピアレビューされた論文を見ることを好むということを知っているので、専門家を雇い、科学的論文を書かせる−と彼は述べている。しかし、これらの研究は、最小のピアレビューしか受けない論文を載せるような”くだらないジャーナル”に発表されると付け加えた。

 ほとんどの科学者らは、会社がどのように科学を操作するかを理解するまでは完全にそのことに無知であるとボストン大学の環境健康学部長デービッド・オゾロフは述べている。彼は長年、アスベスト産業界を研究しており、”アスベスト産業界は科学的発見について自分に都合のよい解釈をしていると考えながら、アスベスト問題に入っていった”−ことを思い出している。”それは科学の社会学、知識の社会的構築であり、同じことを労働者が見ているのに、彼らは異なったことを強調する傾向がある。” しかし、裁判の間に明るみに出される手紙や文書を見ていて、オロゾフは会社の重役たちがアスベストが危険であることを数十年間もの間、知っていただけでなく、彼らの製品と会社の利益を守るために防衛戦略を策定し実施していたという証拠を見つけた。”それは文書の中で明確に計画されていた。彼らは誰もそれを見ないだろうと考えていた”−と彼は述べている。

 ”私はこの手紙には同じような印象を持った。我々が知っていることが、ここでも起こっている”−とワインバーグからデュポンへのメモについて彼は述べた。

 例えば、ワインバーグの手紙は、原告側の専門家に対抗させるために自分達の責任を制限するための一連の提案をリストしており、その中には奨励金付きの専門家委員会を作り上げるためにPFOAに関する科学的専門家を雇うことが含まれている。ワインバーグ・グループを通じてデュポンのために働いた専門家らは原告のために証言することはできない。
 ”彼らは専門家らが相手側の証人になれないようにしている”−とオゾロフは述べている。彼は、訴訟事件のコンサルタントを求める弁護士らから同様な要求を受けたことがあると付け加えた。”私は証言する必要はなくなるが、私は彼らがしようとしていることは訴訟で私自身を矛盾させようとしていることであると直ぐに理解した。”

 EPAのPFOAに関する科学諮問委員会(SAB)の委員であるオゾロフは、既存のデータを分析することによってPFOAの健康への利益のようなものを特定する、あるいは、その化学物質は安全で実際に健康に利益をもたらすということを示す研究を構築する方法について詳細に述べているメモの中の一節を指摘している。次の文章は血液の酸素搬送能力と冠状動脈病の防止について述べている。

 ”それを見てびっくりした”−とオゾロフは述べ、PFOAに関するデータは脂質代謝に影響を与えることを示しているように見えると付け加えた。それはその化学物質が実際に心臓血管疾患のリスクを増大するかもしれないという懸念をもたらすものである。”この提案は’疑惑生成’戦略である。もし、あなたが、’大変だ!これは心臓病を引き起こす’と言うなら、彼らは、それはあなたの心臓によいという他のストーリを持ってくるであろう。”この種の物語を作ることは、この領域に踏み込んだどのような独立系科学者も興味を持つに違いない研究課題となる−と彼は述べている。

 しかし、ワインバーグは、科学は自由に解釈することができると主張する。”私は、人々は科学的データを様々な根拠に基づいて異なって解釈することができるということは認める。しかし、科学における真実は、私が信じるところでは、全ての信頼できる科学者らが求めることである。”

ワインバーグ・グループからの働きかけ

 ワインバーグは、顧客について話す自由はないと述べているが、アメリカ食品医薬品局(FDA)がダイエット剤エフェドラ(ephedra)を禁止しようとした時、彼の会社は2004年に NVE 医薬品会社のために製品防衛業務を行ったということを ES&T は発見した。”我々の見解では、政府の決定は製品の誤用に関連する信頼できないデータに基づいており、指示された通りに使用すれば、エフェドラ(ephedra)は安全であるばかりでなく、延長された期間にわたって模範的な安全性を備えている”−とワインバーグ・グループの副社長テレンス・ガフネイは述べ、”我々は楽々と科学に勝利すると信じる”−と付け加えた。

 翌月、FDAは、ハーブ系サプリメントは血圧を上げ、血液循環系にストレスをかけるということを示した多くの研究を引用して、エフェドラ(ephedra)を禁止した。国立健康研究所(NIH)による支援を受けたレビューは、エフェドラ(ephedra)の使用は他のこともあるが特に心臓の動悸と胃腸への影響のリスク増大に関連すると結論付けた。

 ワインバーグ・グループはまた、2005年のアメリカ化学工業協会(ACC)の内分泌かく乱物質に関する立場表明[448KB PDF]を書いた(訳注:EDは問題ないとする論文。日本の SPEED 98 と ExTEND 2005 の事例も上げテいる)。アメリカ化学工業協会(ACC)は化学産業界のロビーイング団体である。二人の共著者のうちの一人はジェームス・ラムであり、彼はワインバーグ・グループの従業員であり、また過塩素酸エステルのような他の化学物質に関し産業界のために働いている。1月に、カリフォルニア州が6つのフタル酸エステル類とビスフェノールA−赤ちゃんのおもちゃに含まれる内分泌霍乱物質として疑われている−の健康影響と使用制限の可能性を議論するための公聴会を開いた時に、ラムはこれらの化学物質は安全であると証言した。

 ”これは、数年間、観察されてきたことで・・・フタル酸エステル類は安全であるという結論である”−と彼はその時、カリフォルニア州サクラメントのニュース・ステーションで述べた。2005年、欧州連合は6つのフタアル酸エステル類の赤ちゃんのおもちゃでの使用を永久に禁止し、カリフォルニア州の立法はこの禁止令を採用しようとの試みであった。

 ”私がいるところにはいつもラムがいる。彼は多分私の講演をあまりにも多く聴きすぎたのでそれが彼を病気にしたに違いない”−とミズーリ大学生物学教授で内分泌かく乱物質の専門家であるフレデリック・ボンサールは述べている。

 ボンサールは、ビスフェノールAがヒトの健康に内分泌かく乱作用の影響を及ぼすということを見出した彼の仕事で攻撃を受けている。2006年1月、ジャーナル『環境健康展望(EHP)』は、ボンサールのビスフェノールAに関する最近の研究を批判する手紙を掲載した(Environ. Health Perspect. 2006, 114 [1], A16?A17)(訳注)。この手紙は、ボストン大学産婦人科の研究者ジョセフ・ポリッチによるものである。同誌の conflict-of-interest policy で、ポリッチの手紙は、彼がワインバーグ・グループのコンサルタントであることを記している。

訳注
EHP2006年1月号 Correspondence/ビスフェノールAとリスク評価に関するポリッチとボンサール往復書簡(当研究会訳)

 ポリッチは ES&T に彼はビスフェノールAに関する研究もしていないし、他の化学物質に関する将来の研究計画もないと語ったが、彼はワインバーグ・グループのためにコンサルティングを行ったことを認めた。その手紙を書いたことを確認した以外は、彼はコンサルティングの仕事の正確な内容についての質問には答えなかった。”ワインバーグ・グループに聞いてくれ”−と彼は ES&T に語っただけで、会話は終わった。

 ボンサールは、科学誌に手紙を送るために科学者を雇うことは、産業界が科学的論争の錯覚を生成する戦術の一つであると述べている。これらの戦略の多くはタバコ会社によって開拓された。”新しい又は創造的な戦略は一つもない”−と彼は述べている。

決定的証拠(煙の立ち昇る銃)

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部教授でありタバコ喫煙に関する科学的論戦の報告者であるスタントン・グランツは、これは古いやり方であるとするボンサールの断定を支持している。グランツは『The Cigarette Papers』の共著者であり、Legacy Tobacco Documents Library 含まれる文献に基づいたタバコ産業に関する多くのピアレビューされた研究を行っている。このライブラリーは1990年代の巨大タバコ産業(Big Tobacco)と和解調停の裁判で得られたタバコ会社の内部文書のオンライン・データベースである。

 ”基本的にタバコ会社は、受動喫煙に関する証拠に異議を唱える講演をし、公聴会で発言し、ある場合には、タバコ弁護士らを通じて金を支払われて、ロビーイングし、記事を発表する世界中の科学者と専門家の巨大なsub rosaネットワークを構築した”−と彼は述べている。その仕事は、受動喫煙に健康リスクのラベルを貼る科学をゆがめることを意味しているが、その戦術はワインバーグ提案に見られるものと非常によく似ている−と彼は述べている。

 ”それは長年、タバコ会社のために効果的であり、ワインバーグ・グループはタバコ会社のために多くのリクルートを行った。彼らは全てを準備し派遣する人材募集代理店であった”−と彼は述べている。グランツのこのリクルートに関する最近の論文は、フィリップモリスが1989年から1992年の間、コンサルタントとして雇い入れた科学者らに何を期待したかを詳細に記述している同社の行動計画を引用している。”彼らは、論文を発表し、関連する分野の科学界に参加し、科学会議で積極的な役割を演じるよう適切に奨励されるべきである”−とその文書は述べている。”可能な場合には、科学者としての名声を落とすことがないようにしながら、彼らは、政府の委員会用に、あるいはメディアへの情報のために、意見を述べ、あるいは証言することを奨励されるべきである。”

 ”科学界の人々はこの話を聞きたがらない。堕落の話をすると科学者らは居心地が悪くなる”−とボンサールは述べている。

 しかし、グランツは10年以上の間、彼の職業に与えた巨大タバコ産業の影響を研究し、科学にとってもっと大きな問題をおぼろげながら見ている。連邦政府が研究費の削減をするので、科学者らは財政的援助をますます企業に頼るようになってきている。このことは、これらの研究の結果が公明正大で客観的なのか、又は彼らに金を支払った会社に都合のよいものなのかに関する厄介な問題を提起する。

 ”科学全体が企業利益によって破壊されつつある。したがって、健全な学界を支配されない発表機関とすることが非常に重要なのである”−とグランツは述べている。

ポール D. サッカー (PAUL D. THACKER



化学物質問題市民研究会
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