ES&T 2006年2月22日
アメリカ国民の過フッ素化合物類の血中濃度 人種により異なる

情報源:Environmental Science & Technology: Science News - February 22, 2006
Perfluorinated chemicals in U.S. population differ by race
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2006/feb/science/rr_race.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年2月24日

 米疾病管理予防センター(CDC)の新たな調査結果は、過フッ素化合物類の血中レベルは白人の男性が一番高いことを示した。アメリカ化学会のES&T Research ASAP ウェブサイトに本日発表された初のアメリカ国民の統計的調査(DOI: 10.1021/es0517973)によれば、アメリカ国民の過フッ素化合物類の血中レベルは全体的に低レベルではあるが人種によって異なる。白人は血中の過フッ素化合物類の濃度が黒人よりも2倍高く、メキシコ系アメリカ人よりも3倍高い。

 過フッ素化合類類は難分解性で生体蓄積性があり、環境中及びヒトの体内で低レベルで検出される。動物実験では、この化学物質のあるものは、ヒトの血中で見出されるものよりは高いレベルにおいてではあるが、がんや発達障害を含む有害影響と関連がある。これらの化学物質の製造会社は過フッ素化合類の代替物質の開発、又は製品からそれらの化学物質あるいはその前駆物質を除去する方法の開発に着手している。(訳注)

訳注:EPA、PFOA の排出削減をメーカーに求める/EPA プレスリリース 2006年1月25日

 米疾病管理予防センター(CDC)のアントニオ・カラファトらによって実施された新たな調査は、全米健康栄養調査(NHANES)の一環として2001年と2002年に収集された統合血液サンプル54体中の選定された過フッ素化合物を分析した。(サンプルは統合されたが、その理由は過フッ素化合物測定は当初のNHANES計画にはなく、研究者らは個々の分析をするためには十分なサンプルがなかったためである。)個々の統合サンプルは人種及び年令でグループ分けされた34人分の血清を含んでいた。

 ”カラファトらは、血中の過フッ素化合物を人種又は民族について初めて調査するという、すばらしい仕事をした”−と3M社の疫学者であり、この件でいくつかの論文を書いているゲアリー・オールセンは述べている。これら3つの全ての人種グループで、男性は女性よりも若干血中濃度が高かった。白人はPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)の血中濃度が最大で40.19ppbであった。全サンプルでPFOA(パーフルオロオクタン酸)は、2〜8 ppb と低かったが、これについてもやはり白人が最高であった。さらに、白人の青年は、カーペットの防汚剤に関連する2つの過フッ素化合物のレベルが最高であった。CDCチームはまた、体内でPFOSに分解すると考えられるPFOSの前駆物質、及び9炭素長のPFNA(パーフルオロノナン酸)を血液サンプルの75%以上で検出した。しかし、炭素原子9以上の鎖を持つ化学物質は比較的まれである。

 これらの結果は興味深い。しかし、人種間の相違については我々は説明することができない。そのことが、我々が曝露源及び曝露経路についてもっと多くの情報を必要とする理由である”とカラファトは述べた。

 以前の調査でもPFOSとPFOAを血中で検出していたが、今回のCDCの報告書はアメリカ国民の代表値を求めるよう設計された最初の調査である。CDCによって測定されたレベルは、以前に報告されたアメリカ、ヨーロッパ、及びアジアに住む人々の調査に類似しているとオールセンは述べている。

 アメリカにおける汚染レベルはペルーの汚染レベルよりはるかに高く、過フッ素化合物はアメリカの方がもっと高頻度で検出されると、未公開の研究に言及しつつカラファトは指摘している。PFOSを血中に持っているペルー人はわずか25%であり、そのレベルも0.5〜1.0ppb である。このことはペルーでは過フッ素化合物を含有する大量生産消費材への曝露が少ないことを反映しているのかもしれない。

 ”基本的に重要な疑問は、ヒトの体内にあるPFOSとPFOAは、直接、PFOSとPFOAを源とするのか、或いは間接的な源(訳注:他の物質が分解して)に由来するのかである”−とトロント大学の化学者スコット・マブリーは述べており、さらに、PFOS前駆物質が存在したという観察は間接的な源が重要であることを示唆していると彼は指摘している。

 カラファトは、3M社がPFOS関連化学物質から撤退した年より前の1999年と2000年に収集されたものを含む、他の年の個別サンプルを分析することを計画している。

レベッカ・レナー(REBECCA RENNER)


化学物質問題市民研究会
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