ES&T 2006年1月18日
カナダ最高裁 農薬禁止を支持

情報源:Environmental Science & Technology: Policy News - January 18, 2006
Canada's Supreme Court supports pesticide ban
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2006/jan/policy/jp_canada.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年1月28日

 カナダの市町村は、芝生や庭での農薬を禁止する法律に対する産業側の法的異議申し立てを成功裏に退けた。過去数十年間、いくつかのカナダの都市は、農薬の安全性についての懸念の高まりに目を向け、個人及び政府所有の全ての芝生及び庭園での美的目的での(訳注:農業用でない)使用を禁止していた。今回、カナダ最高裁はこれらの禁止に異議を申し立てる産業側の訴訟の恐れを事実的に取り除いたので、農薬市条例がカナダ中で急速に広がることが予測される。

 アメリカでは、産業側が支援する法律が機先を制して立法化されてしまっているが、今後、禁止に頼らずに農薬の使用を排除する方法を見つける都市が増大するであろうと専門家は述べている。

 昨年11月18日、カナダ最高裁は産業界によるトロント市農薬条例への異議申し立てを却下しが、その異議とはトロント市条例が既存の連邦法及び州法に反して農薬使用を規制しているというものであった。トロント市の禁止は2003年に成立し、農薬のいわゆる美的使用(cosmetic use)を禁じ、違反者に罰金を科すというものである。

 最高裁の判断は、地方政府が農薬をどのように使うかを規定する権限を持つという考えを強化するものである−とカナダの環境団体である”カナダ環境法協会”の法律顧問テレサ・マッククレガンは述べている。この決定は、産業界はこの国の市条例を訴えることができないことを意味すると彼女は述べている。

 70以上の自治体(ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー、ケベック州モントリオール、ノバスコーシア州ハリファックスを含む)が既に農薬の美的使用を禁ずる市条例を通過させており、最高裁が道を開いたので、もっと多くの都市で禁止法を成立させる態勢ができている−と”カナダ環境医師協会(CAPE)”の代表ギデオン・フォアマンは述べている。農薬はがんや内分泌かく乱作用のような許容できないリスクをもたらすので、CAPEは最高裁の判断に喝采を送ると彼は加えた。

 カナダに先立って、アメリカの都市は1980年代にさかのぼって農薬使用を制限する地方条例を持つ権利を勝ち取っていた−と環境団体であるビヨンド・ベスティサイド(Beyond Pesticides)の代表ジェイ・フェルドマンは述べている。しかし、その農薬禁止の広範な採用は、やがて産業側に支援され40州に採択された、地方条例を州法より厳しくすることを禁じた”封じ込め”立法によって妨害された−と彼は述べている。

 その結果、アメリカの活動家らは、学校や病院、地方政府など公共施設によって管理されている土地での農薬使用を禁止することに力を注いでいる−とフェルドマンは述べている。同時に、カリフォルニア州とニューヨーク州の地方政府は”封じ込め法”の効力を試し始めており、いずれカナダ式の都市毎の農薬禁止が出現するかもしれない−と彼は付け加えた。

 ”封じ込め法”に対する挑戦への高りに対応して、農薬産業界は消費者が農薬使用に賛成する意見を自由に述べることを支援するために、地方での組織的活動を一段と強化している−と業界団体である”健全な環境のための責任ある企業”の代表アレン・ジェームスは述べている。

ジャネット・ペレイ(JANET PELLEY)


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