エコロジーセンター /プレスリリース 2005年12月7日
アメリカで主要企業が ”有毒プラスチック” 塩ビを廃止

情報源:Ecology Center / Press Release - December 7, 2005
Major Corporations Phase Out PVC,“the Poison Plastic”
http://www.ecocenter.org/releases/20051207_pvc_phaseout.shtml

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年1月31日

 マイクロソフト、ヒューレット・パッカード、カイザー・パーマネンテ、トヨタ、ホンダ、その他の企業が消費者製品と容器包装での塩ビの使用を廃止すると公約した。

【アナーバー、ミシガン州 2005年12月7日】マイクロソフトはヒューレット・パッカードやカイザー・パーマネンテ、その他の企業とともに、ポリ塩化ビニル(PVC)を廃止することにより、製品や包装容器の環境健康への影響に懸念を表明している主要企業の仲間入りをすると発表した。このことは、塩ビ廃棄物の埋め立て量で全米第6位のミシガン州の住民にとって非常に有意義なことである。世界で販売高第2位のこのプラスチックには有害な化学物質が使われており、排出されている。多くの研究が塩ビのライフサイクル中に生成され使用される化学物質と、がん、生殖系及び免疫系障害、及びぜんそくとの関連性を示している。

訳注:エコロジーセンター報告書『持続可能なプラスチックへの動き−先進的自動車メカーに関する報告書』による自動車会社の持続可能なプラスチック使用ランキング
 いくつかの自動車メーカーもまた、世界中で塩ビとプラスチックの主要な用途である乗用車で、塩ビを廃止することを公約した。2005年の初めにエコロジーセンターが発表した報告書 『持続可能なプラスチックへの動き−先進的自動車メーカーに関する報告書 (Moving Toward Sustainable Plastics -- A Report Card on the Leading Automakers)』によれば、トヨタとホンダは製品から塩ビを廃止し、その他のミシガン州に拠点を置く自動車メーカーも後を追っている。

 ヘルスケアー産業では、アメリカで最大規模の非営利ヘルス・ケア団体であるカイザー・パーマネンテ(Kaiser Permamente)が建築資材で塩ビを廃止することを公約した。一方、アナーバー市のセント・ジョセフ病院を含むいくつかの地方の病院もまた塩ビの使用削減を推進した。ミシガン州では塩ビ廃棄処分によって健康と環境が脅かされているので、このことは同州にとって特に重要なことである。

 ”ミシガン州は塩ビ廃棄物により三重苦を被っている。第一に、我々は裏庭でのプラスチック廃棄物焼却に対する規制がないので有害な汚染を引き起こしている。第二に我々は、有毒塩ビを含んで自治体によるごみ焼却をいまだに行っている。それらの焼却炉は”ダイオキシンのような汚染物質を我々が呼吸する大気中に出し、畑や水に吐き出して、その結果食物連鎖に蓄積されていく。そして三番目にミシガン州には他の州の廃棄物が送り込まれ、我々は他の州の人々の有毒プラスチックを埋め立てている。これらの全てが我々に厄介な有毒化学物質問題をもたらす”−とエコロジーセンター組織部長ブラッド・バン・ギルダーは述べた。

塩ビの廃止に関わる全米の進捗状況
  • マイクロソフトは2005年末までに塩ビ製包装容器の廃止を完了し、既に2005年6月以来、361,000ポンド(約164トン)の塩ビを削減した。
  • パーソナル・ケア用品、トイレタリー、家庭用芳香剤などの国際的な製造販売業者クラブツリー&イヴリンは、包装容器から塩ビを廃止すると発表した。クラブツリー&イヴリンは既に既存及び全ての新製品製造ラインからの塩ビの廃止に着手しており、完全な塩ビ廃止スケジュールを開発中である。
  • カイザー・パーマネンテは、今後10年間に建設される新たな建設工事で可能な限り、数百万平方フィートの塩ビを廃止すると発表した。カイザーへの納入業者は塩ビを使用しない壁材及びカーペットを開発している。
塩ビ廃止に関するその他の発表
  • ヒューレット・パッカード(HP)は2005年11月1日に、より安全な代替物質が入手できるので、今後の塩ビ使用を廃止する計画を立てていると発表した。同社は外箱の全ての部分から塩ビを除去した。同社は2ヶ月で全ての塩ビの包装容器をやめるであろうと述べた。コンピュータ・テイクバック・キャンペーンは、HP及び他の電子機器会社がPVC及びその他の有害な懸念のある物質をより安全な代替物質に替えることを促進させた。
  • ホンダは、近い将来、ほとんど全ての用途でPVCの代替品に替える計画を立て、可能な限り塩ビの使用を削減すると公約した。
  • トヨタは車に使用されている大量の塩ビ樹脂を削減するよう積極的に取り組んでおり、電線や計器パネルのカバーなど既にいくつかの自動車主要部品から塩ビを排除している。
  • 40の病院を持つヘルスケア団体であるカソリック・ヘルスケア・ウェストは2005年11月21日、ビー・ブラウン社(訳注:医療機器メーカーB.Braun)と塩ビ及びDEHPを使用しないIVシステムのCHWを供給する5年契約を締結した。
  • ウォルマートは2005年10月に今後2年間で、個人ラベル包装でのPVC使用を廃止すると発表した。環境健康団体はウォルマートの塩ビ廃止を歓迎したが、環境と労働者の懸念に目を向けるウォルマートがの小さな第一歩であると強調した。
  • 世界最大の屋根材会社であるファイヤーストーン・ビルディング社は2005年後半に塩ビラインを閉鎖し、より安全な材質に替えた。その量は年間のPVC生産6,000トンに相当する。
  • ショウ・インダストリー社は2005年の初めに塩ビ製カーペットの製造をやめ、持続可能なリサイクルをすることができ、塩ビ製カーペットよりも省エネを実現し、同等以上の機能を持つ、”揺りかごから揺りかごまでの(cradle-to-cradle)製品”であるEcoWorxに置き換えた。
  • ジョンソン&ジョンソンは、主要包装容器から塩ビを排除する目標を設定したと発表し、既存の包装容器を替え、将来の製品での塩ビ使用を回避するための代替品を特定するために、納入業者と積極的に契約を結んでいる。
新たな複合産業の動向

 既に塩ビの廃止に踏み切った会社には、Adidas、Aveda, Bath and Body Works、the Body Shop、Gerber、Ikea, Lego Systems、 Nike, Samsung、SC Johnson、Shaw Carpet、Victoria's Secret、等がある。これらの会社は、アメリカのビジネス界が、より安全で持続可能な材料を自社のビジネス展開にますます取り込んでいる広範な経済動向の一端を表してる。

 ”我々は新たな動向を目にしている。主要な企業は塩ビの使用を廃止し、より安全で健康な消費者製品に切り替えている”−とエコロジーセンター組織部長ブラッド・バン・ギルダーは述べた。”我々は、我々の健康を守ることを認識しているだけでなく、よいビジネス・センスを持ち合わせているマイクロソフトやその他の革新的な会社に拍手喝さいを送る。消費者らは、より安全な製品に対する公約を発表した会社を支援する必要がある。両親は、「悪いニュースが3のマークとともにやってくる」ということわざを思い出し、このクリスマス・シーズンには”3”又は”v”のマークのついた塩ビ製品は購入しないようにすべきである。”



 エコロジーセンターは、”健康・環境・正義センター(Center for Health, Environment & Justice (CHEJ)”によって調整・組織されている60団体の連合組織に参加している。この連合組織はこれらの会社に対し塩ビ製の包装容器や製品を自主的に廃止し、より安全な代替品の市場が構築できるよう働きかけている。

 ”危害のないヘルスケア(Health Care Without Harm)”は、ヘルスケア施設とともにヘルスケアにおける塩ビ・プラスチックのような製品をより安全な代替品にすることを推進している。”ヘルシー・ビルディング・ネットワーク(Healthy Building Network)”は塩ビの建材をより安全で健康的な代替品に替えるキャンペーンを推進している。クリーンカー・キャンペーンン(Clean Car Campaign)は、乗用車とトラックでの塩ビ使用の廃止を推進するために自動車産業と密接に連携している。

 包括的な報告書:塩ビ:悪いニュースが3のスタンプに(PVC: Bad News Come in Threes)は、塩ビを廃止するよう企業に働きかけるキャンペーン展開の開始として2004年に、”健康・環境・正義センター(CHEJ”)、”環境健康戦略センター(Environmental Health Strategy Center)”、及び、全米の”BE SAFE 連合”によって発表された。 訳注:塩ビ:悪いニュースが3のスタンプに (エグゼクティブサマリー当研究会訳)

 エコロジーセンターはミシガン州を拠点とする非営利環境団体であり、健康な地域社会、クリーンな製品、及びクリーンな製造のために働いている。詳細はウェブサイト http://www.ecocenter.orgを参照いただきたい。

 報告書『持続可能なプラスチックへの動き−先進的自動車メカーに関する報告書』は Moving Toward Sustainable Plastics -- A Report Card on the Leading Automakers からダウンロードできる。

 マイクロソフトや他の会社からの塩ビ廃止の手紙、又は塩ビに関するファクトシート及び塩ビ報告書は、http://www.besafenet.com/phaseout.htm からダウンロードできる。



化学物質問題市民研究会
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