ES&T ポリシー・ニュース2005年11月16日
EPA 企業の有毒物質排出報告規則(TRI)の緩和を提案 州と会社は汚染防止の努力が損なわれると主張 情報源:Environmental Science & Technology / Policy News - November 16, 2005 EPA proposes to relax reporting rules for corporate toxic releases States and companies claim the move could harm pollution-prevention efforts 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2005年11月22日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_05/05_11/05_11_16_est.html 10月4日にアメリカ環境保護局(EPA)が発表した2つの新たな提案によれば、会社は有毒化学物質の排出の報告を毎年ではなく隔年に行うことになり、より多くの化学物質が従来より簡単なデータ報告でよくなる。EPAは、これは会社の報告のための手間を削減し、EPA職員によるデータ品質の向上に役立つと主張している。しかし、ダウケミカル社を含むいくつかの会社の広報官らは、この変更はラインの担当者にわずかな影響しか与えないと述べ、また、州の担当官らはこの変更は彼らの汚染防止プログラムを粉砕するようなものであると主張している。 EPAは、1〜2年で有毒物質排出目録(TRI)の報告を隔年に変更する法案を提出すると議会に通告した(連邦政府官報 2005, 70, 57,871?57,872)。 1987年以来、TRI は会社に化学物質の排出を劇的に削減させる動機を与えたとして信頼されている。TRI の実施以来、会社は彼らの排出を49%、15億9,000万ポンド(約72万トン)削減したと報告されている。 EPA 担当官は、この提案は24,000か所の施設と650化学物質に影響を与えると述べている。この変更により、200万ドル(約2億2,000万円)が報告のない年に節約できるので、EPA の TRI ソフトウェアの改善に充てることができ、データをもっと役立つようにすることができるとしている。 さらに、EPA は、もし特定の化学物質の年間排出量が 5,000ポンド(約2.3トン)以下なら (if they release less than 5000 lb of a specific chemical per year) 、TRI 報告者は 5ページのフォーム R から 2ページのフォーム A に変えることができると発表した(連邦政府官報 2005, 70, 57,822?57,847)。現状の閾値は500ポンド(約230キログラム)である。フォーム R は廃棄物がどれだけ取り扱われた(treated)か、 リサイクルされた(recycled)か、敷地外に出された(transferred)か、そして大気、水、及び土壌へ排出された(released)かの詳細報告が必要である。フォーム A は単に廃棄物が生成された(generated)ということを文書で証明するだけである。 提案された規則はまた、初めて、水銀のような残留性・生体蓄積性・有毒性物質も、排出が発生しておらず(no releases have occurred)、500ポンド(約230キログラム)以下の量で処理又はリサイクリングとして管理されている(managed for treatment or recycling)限り、この簡単なフォーム A で報告することを許している。 簡単なフォーでの報告は全米で排出重量 1%以下にしか影響を与えていないという EPA の主張は、地域共同体への影響を見逃しているとナショナル・エンバイロンメンタル・トラストの研究部門代表のトム・ナタンは述べている。アメリカには現在、詳細フォームで報告しなければならない施設が少なくとも 1か所以上存在する地域が 9000郵便番号(zip code)分あるが、そのうち 10%以上が詳細フォームでの報告が不要になると彼は分析した。 隔年報告は、個々の施設からの排出の山と谷を見逃すとナタンは付け加えた。彼は 2001年と 2003年のデータを平均したが、その結果は 2002年の排出予測と異なっていた。”2002年に提出された93,000フォームのうち、69,000は予想よりも20%高いか低い排出であり、56,000が予想より50%高いか低い排出であった”と彼は述べている。”隔年報告は、報告年ではない年の排出を増加させる動機を生み出す”とナタンは付け加えた。 ”我々の分析では、TRI 報告を行っている施設の半分以上は、当年から翌年までの排出量の変動は 10%以下である”と EPA の環境情報副長官キンバリー・ネルソンは反論した。”有害廃棄物のような他の規制プログラムは、データが不適切に操作されているという申し立てもなく、長年、2年毎の報告でやっている”と彼は付け加えた。 ダウケミカル社は、この変更は手間の削減には少しの影響しか与えないが、それは同社の報告システムが品質保証のような内部のプログラムに埋め込まれているからであるとダウの広報担当ジーニー・ソヘイダは述べている。 ”会社が有毒物質の排出を削減することを促進する汚染防止計画法を持つ23州は、報告のない年度はその状況を追跡することができない。この変更があれば、報酬を TRI に依存している人々は資金源を失い、会社に対する技術的支援を減らさざるを得なくなるので、会社の報告の連続性が途切れ、データ品質の低下を招くであろう”と国家汚染防止円卓会議の議長ケン・ザーカーは述べている。 ジャネット・ペレイ (JANET PELLEY) |