水銀と感受性の高い自閉症児たちに関する
新たな科学と新たな洞察 −EWGレポートの紹介− 情報源:Overloaded: New science, new insights about mercury and autism in susceptible children Environmental Working Group, 13 December 2004 http://www.ewg.org/reports/autism/execsumm.php 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2005年1月18日 概要 科学者たちは、自閉症児は水銀やその他の有毒化学物質への曝露に影響を受けやすいということを強く示唆する自閉症児の代謝障害、又は”バイオマーカー”を確認していた(James 2004a)。 この障害は、体の最も重要な機能である解毒と金属の排出をつかさどるグルタチオンの活性/不活性の比の重大な不均衡として現われれる。グルタチオンは酸化防止剤として働き、通常の代謝及び環境的汚染物質によって引き起こされる潜在的に破壊的な酸化ストレス作用を抑える。自閉症児は、健康なグルタチオン防御機能を維持する体の能力の5つの測定値のどの1つにも顕著な欠陥があった。 これらの所見は、子どもの環境汚染物質への全体的な曝露についての深刻な懸念を引き起こす。水銀は特に懸念があるが、それは水銀が脳の発達や神経系へ与える有毒性について、及び様々な汚染源からの高い曝露について、既に十分報告されているからである。妊婦の6人に1人は、汚染された魚を食することでEPAの安全レベルを超えてメチル水銀に曝露している(CDC 2002, Mahaffey 2004)。ワクチン中の防腐剤、チメロサールは49%がエチル水銀であるが、公衆衛生サービスとアメリカ小児学会の強い説得により小児用予防注射から取り除かれるまで、1988年から2002年における主要な水銀曝露源であった(約注:ピコ通信67号参照)。歯科用アマルガムからの水銀はもうひとつの潜在的に重要な汚染源であるが、水銀全体の曝露の中で占める役割については十分研究がなされていない。 自閉症の発症は1980年代の10,000人に6人(Blaxill 2004)から今日の10,000人に60人((Autism Alarm, PDF file)と10倍に増加している。これらの新たな所見は、水銀を含む多くの神経毒成分から子どもたちを防御する機能を損ねる、ほとんど全ての自閉症児に共通な代謝障害を明らかにしたことにより、水銀が自閉症や他の神経系発達障害の原因かあるいはそれに寄与しているという可能性を著しく強めるものである。 これらの所見は、環境中の有毒化学物質から公衆の健康を保護するための重要な示唆を含む。それらは有害なリスクの増大に曝されている人々の集団を特定し、さらに平均的な人々あるいは平均的な子どもたちを化学物質の曝露から保護することを考えて作られた政策が公衆の健康を保護するためには不十分であるという重要な証拠を示す。環境と健康に関わる当局は、化学物質への曝露に過敏な人々を保護するために現状の法律と政策の適切性を検証しなくてはならない。 最後に、これらの所見はワクチン中の水銀の安全性をすでに証明した研究について深刻な懸念を引き起こすものである。自閉症とチメロサールの因果関係を否定するために用いられた疫学的研究は、全ての子どもたちが化学物質への曝露に対して同じ抵抗力を持つという仮定に基づいていた。水銀汚染された注射の潜在的有害性を調査するために、研究者は、同じタイプの脆弱性を持った子どもたちの中での自閉症発症率を比較しなくてはならない。 わかったこと エンバイロンメンタル・ワーキング・グループの18ヶ月にわたる調査により、科学者たちは、感受性の高いことを特徴とする子どもたちの小集団である自閉症児たちの中に代謝障害、又は”バイオマーカー”を確認していた。これらの発見は、水銀を含むしかしそれだけではない有毒物質への個人の脆弱性に関する我々の理解にとって一里塚であった。この科学的発見は我々の目を、チメロサールと自閉症の因果関係を否定したIOM(米国科学アカデミー医学研究所)の判断に目を向けさせる。我々は下記のことがわかった。
|