子どもの健康への環境の脅威に関する
バンコク国際会議2002年3月の紹介 情報源:Environmental Health Perspectives Volume 110, Number 6, June 2002 World's Children Threatened http://ehpnet1.niehs.nih.gov/docs/2002/110-6/forum.html#chil 掲載日:2002年6月30日 子ども達の環境健康についての初めての世界会議が2002年3月3日〜7日にタイのバンコクで開催された。 世界保健機関(WHO)の後援を得て開催されたこの”子どもの健康に対する環境の脅威についての国際会議”はアジア、太平洋地域の子ども達への脅威に焦点を当てているが、その脅威の多くは世界中のどこにおいても重要なことである。 会議は300人以上の参加者を得て盛会であり、子ども達の環境健康をまもることを宣言した”バンコク声明”が発表された。 バンコク声明抜粋 バンコク声明本文(英文) 会議の参加者は、子ども達への環境の脅威は国々によって異なるという理解で一致した。 先進諸国では食物や水、動物などによって伝搬される感染症は、大気汚染や農薬、重金属などに関連する慢性疾病に比べて重要性が小さいが、多くの発展途上国では、特に貧困な地域では、子ども達はこれら感染症と産業による環境被害の両方に脅かされている。 会議開催中に出されたプレスリリースでは、毎年、5歳以下の子ども達300万人が、不衛生な水や不適切な衛生設備による疾病、室内空気汚染、中毒を含む事故等によって死亡していると述べている。 会議の大きなな成果の一つは、アジアにおいては子どもが鉛に曝露する主な原因であるガソリン中の鉛を早急に除くことを要求したことであった。 タイの新しいデータによれば、子ども達の血中の鉛濃度は加鉛ガソリンが廃止されるに従って減少している。 シアトルのワシントン大学子どもの環境健康リスク研究センター理事であり、バンコク会議に参加したイレイン・ファウストマンは「私は科学に関する会議ならどこにでも行くが、バンコク会議で重要なことは、大いに発言することであった。世界中の人々が直面している問題を皆と共有するということは大変すばらしいことであった」と述べた。 ファウストマンは、有害廃棄物に関するセッションで、子ども達が労働力として、あるいは単に食物を探すために、ごみの山を掘り起こしおり、それが非常に危険であるということを発表者が説明していたことを忘れられない。そのような子ども達はしばしば電池から漏れ出た液や医療廃棄物、その他の有毒物質に曝される。 他のセッションでは、木質燃料の燃焼やタバコの煙、加鉛ガソリンなどによる室内及び室外の空気汚染の問題や残留性有機汚染物質、鉛、水銀、内分泌攪乱物質などへの曝露に関連する発達障害や先天性異常の問題などを討議していた。 バンコク声明は活動のための詳細計画というよりもむしろ意図を表明したものであるが、参加者と主催者はともに、ネットワーキングの拡大や会議で出された意見の交換を押し進めることを強調した。 世界保健機関(WHO)化学物質安全国際計画のテリー・ダムストラは、期待する成果の一つは、胎児から思春期後までの子どもの長期的なコホート研究を行う”アメリカ国家児童研究”に発展途上諸国が参加することであると述べた。 フィリピン国家有毒物質管理情報サービスのイルマ・マカリナオは、アジア太平洋医療毒物学協会のような研究機関と子どもの環境健康問題を掲げる地域の団体が協調し始めていると述べた。 バンコク会議には産業界は公式には参加しなかったが、アメリカ化学協会(ACC)は、2001年には同協会の31会員がアメリカEPA環境保護局(EPA)の子ども化学物質評価プログラムに参加したことを明らかにした。 近年、子どもの環境健康に関する研究と実践が急速に増加している。「5年前には、アメリカでも海外でも、人々がこれらのことについて語ることはほとんどなかった。異なる国々から来た全ての人々が満場一致でバンコク声明を支持したことはすばらしいことである」とニューヨークのマウント・シナイ医学校子どもの健康と環境センター理事フィリップ・ランドリガンは述べた。
(訳: 安間 武) |